《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》94 聞き込みの結果

僕ことエピクが王宮でのイザコザにかかりきっているうちに、スェルたちはどこまで調査を進めてくれたのだろうか?

「バッチリですよ! 何しろ強力な手掛かりがありますもんね!!」

自信たっぷりなスェル。

そこまで請け合うほどに強力などんな手掛かりがあるのかと思ったが、その答えはこれ。

ヒサリーヌ。

あのデメテールの民との抗爭事件で失腳した彼。一度は協會側に隠匿されていたが冒険者ギルドの協力で発見し、何とか奪取に功した。

そのあとの柄は、薬師結社が預かっていた。

無論デメテールの地で使用された毒の出所を聞き出すためだ。

「あの聖さんは面白いぐらいに歌ってくれましたよ!」

「元・聖ね」

「何しろ教會さん側から見たらヤバいを山ほど抱えている中樞メンバーですから、それがやらかして失腳寸前となればいらないことを喋る前に口封じ……というきもあったみたいです。実際、王都の冒険者さんたちがもうちょっと遅かったら危なかったかもしれません」

真相は闇の中……か……。

冒険者ギルド理事のアンパョーネンさんに頼み込んで捜索してもらっていたが、本當にいい仕事をしてくれたようだ。

やっぱり王都の冒険者さんたちは有能だな。

「自分でもの危険をじていたのか『柄を教會に戻す』って脅しただけで何でも喋ると約束してくれましたよ。『だから教會から私を守って』ですって!!」

元聖ヒサリーヌは、現役聖だった時代それはもう好き放題ムチャばかりしてきた。

そのツケが回ってきたというか、どんなムチャも最終的に教會の利益になっていたからこそお目こぼししてもらえてきたが、一端でも躓いてすべての不利益が押し返してきた今、教會だってこんな不良債権一刻も早く切り捨てたいところだろう。

勇者王子タングセンクスとの対峙中は、転びようによっては教會を守るための証人もしくは生贄としての使い道もあったし、萬が一にも勇者王子とのよりを戻して、ゆくゆくは王妃……そして教會への便宜を図る窓口となるみもまだあった。

しかしタングセンクス失腳によりすべてのみが潰えたことで、彼はもうガチのマジでネガティブ要因でしかない。

教會にとっては生かしておく理由はないというか殺す理由しかない存在。

ヒサリーヌ自も謀略キャラで生きてきただけあって、その現実には察しがついているのだろう。

昨日の敵に縋りついてでも生き殘りを図ろうとしていた。

必死。

「そんなヒサリーヌさんの言うことには……、彼の使った毒は自分で手したものじゃなく、大聖のイリエリオリヒルトさんが用意してくれたんだそうです」

「イリエリアリオリヒルトさんだよ」

……ん?

違うか?

イリエリオリアリオリハベリイマソカリ……何だっけ?

「とにかくヒサリーヌさんが使った毒はすべて、大聖さんから渡されたものなんだそうです。毒の使用、管理はすべて大聖さんが行っていたとか」

黒幕は大聖ってことか……。

大聖教會には聖が何人もいるというが、その大元締めがたった一人の大聖

その大聖が子分たちに毒を持たせて邪魔者を始末してきたというのか。

……組織的犯行?

「しかし、ということは……!?」

「そうなんです。ヒサリーヌさん本人は、毒が誰によって作られているか、どこで作られているかまったく知らない。すべては大聖さんだけが知っているってことです」

大聖イリエリヒルト。

すべてを裏で束ねているのがあの、聖ヒサリーヌはヤツのる一端末に過ぎなかったということか。

苦労の末に折角抑えた証人も、結局はトカゲの尾でしかなかったと。

「結局あのは大した報を持っていなかったが、それでわかったこともある。最悪なことではあるがの」

薬師結社の長老さんが口を挾む。

「すべての毒の出所は大聖が押さえている。つまり大聖を何とかしない限りまだまだ毒は使われ続けるということですね?」

「左様。ブランセイウス様の決意は市井の我らの耳にまで屆いてきた。大聖教會にとってはさぞかし不快なことであろう。ヤツらにとっては、あの大名君も邪魔者でしかあるまい」

そして彼らはいまだ、邪魔者を退けるのに打ってつけのツールを隠し持っている。

一刻も早く対策を打たないとブランセイウス様がいつ毒の脅威にさらされるかわからない。

傍にティターニア様がいるからと言って油斷は

なんとか別の方面から教會を切り崩す手段はないのか?

「大丈夫ですよエピクさん! 手掛かりはまだ途切れたわけじゃありません!」

しかしスェルの聲は明るい。

まだまだ希を捨てていない口ぶりだ。

「ヒサリーヌさんは有益な報を持っていませんでしたけど、その代わり別のものを持っていました。ある意味報よりもたしかなものです!」

報よりもたしか……とは?

証です! これですよ!」

とスェルが差し出したのは……。

「……瓶?」

明なガラス瓶だった。

しかも表面にはやたらと細かい裝飾が施されていて見るからに高そう。

売ったらいくらぐらいになるんだろう?

「売ろうとしないでくださいよ」

「考えを読まれた!?」

「エピクさんの考えることなんてお見通しです! この瓶は絶対売れません大事な証拠なんですから!」

というと?

「これは毒をれてあった瓶です!!」

毒?

よく見れば、瓶の中は空っぽだった。

中にれておくのが役割の瓶。その中に何もないということは、それはまだ瓶としての役割を果たしていないのか、あるいはすでに果たし終わったのか。

「ヒサリーヌさんは、この瓶の中に毒をれてデメテールさんの土地までもっていったんです。そして水源でバラまいた」

「だからもう中はないってことか……」

「ヒサリーヌさんがこれを捨てずにいてくれて助かりました。捨てられない理由もあったらしいですけれど」

どういうこと?

「あらかじめ『使い終わった瓶は絶対捨てるな』と指示されていたそうです。そして必ず大聖さんに返卻するようにと……」

「なるほどわかった!」

リサイクルだ!

こんな手の込んだ造りの瓶捨てたらもったいないものな!

回収してまた新しい毒をれようってことだな!

……違う?

そうだね。

底辺暮らしが長かったせいでS級冒険者になった今でもなかなか貧乏が抜けきらないんですよ。

「この瓶はなかなか強力な証拠になります。中の毒薬はすべて吐き出されていますが、だからと言って一滴殘らずなくなるなんてことはありません。それが薬の特徴ですね。錠剤とかならそんなこともないんでしょうが、あっちはあっちで解けるまでに時間がかかって効き目にバラつきができますから……」

ふむう。

専門的な話。

「大聖さんもそれがわかっているから取り扱いに気を付けたんでしょう。預けた聖さんにも絶対に捨てることはせず、必ず自分に返しにくるようにして。下手にどこかに捨てて誰かに拾われたら、致命的な切り札にされかねません。確実に自分の手元で処分するようにしていた……と思います」

スェルからの説明で腑に落ちた。

そして『毒が危険』だという事実を改めて実する。使われる側にとっても、使う側にとっても。

だから扱いには細心の注意をもってしなければならないんだ。

「ヒサリーヌさんも最初は、その言いつけを守って大事に保管していたそうなんです。毒を使い終わったあとも。でもエピクさんにやり込められて風向きが変わって、違う使い方を考えたみたいですね。教會に戻ったあと口封じの始末をされないように人質として使ったそうなんです」

元聖ヒサリーヌさんの供述によれば……。

教會に戻されて、いの一番に瓶の行方を聞かれたものの『信頼のおける者に預けた』と言って、それ以上は頑として口を割らなかった。

毒の殘った瓶は、使いようによっては教會側を責め立てる証にもなりえるので、できるならば確実に我が手で始末しておきたいところだろう。

だったら瓶を取り戻すまではヒサリーヌさんを亡き者にはできない。

生き殘りを懸けたヒサリーヌさんのサバイバル闘爭だった。

「もちろん教會側は尋問してきたそうです。『瓶を誰に預けたのか?』『ソイツはどこにいるのか?』。しかしけっして口を割りませんでした。実はドッコイ自分で持っていたらしいんです、ずっと」

「ええぇ?」

そんなことありえる?

教會側だって検査ぐらいしただろうに。

「一どこに隠していたんだろう?」

「さあ……?」

「「……」」

一瞬思い浮かんだけど、言うのをやめた。

ちなみに瓶は案外大きく、赤ちゃんの二の腕ぐらいはあった。

柄が私たちの方に移ってからヒサリーヌさんは取引を持ちかけました。『証拠品を渡す代わりに私の安全を保証してほしい』って」

強かな……。

恐らくその取引は立したんだろう。

僕の與り知らぬところだが、恐らくアンパョーネン理事辺りを通じて、だから失腳したタングセンクスともども都落ちなどという沙汰が下ったんだろう。

失腳したとはいえ元王族と一緒に暮らす彼を暗殺でもしようものなら、その意味は王族に弓引くことと紙一重になってしまう。

そんなリスクを冒してまで消さなければならないほどヒサリーヌは、教會にとってそこまで目障りだろうか。

何とも考え抜かれた処置だった。

そんなこんなで証拠品たる空の毒瓶は、スェルの手に渡った。

「瓶の側には、僅かながら毒が殘っています。これを採取して調べればんなことがわかるでしょう」

「そんなことができるの?」

「と言うかもう調べました」

仕事が早い。

やるべき仕事をちゃっちゃと済ませたスェルから、一どんな報告が聞けるのだろうか?

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