《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》96 新たなる行く先へ

「死人が甦り、墓から這い出て毒を作っているというのか? うーむ?」

「何かの間違い……いやいやスェル様の出した結果に誤りのあるはずがない!」

「大聖教會のヤツらめ、神とやらに手を借りて蘇生でも使いおったか? ……いやいや、それなら神の力で國王を呪殺する方が手っ取り早いか?」

薬師結社の長老さんたちも戸いと共に喧々諤々していた。

どうも新たに解き明かされた謎は、さらなる謎を呼んだようだ。

死んだはずの人間が作り出す毒……ますますおどろおどろしい。

しかしながらここで考えたり議論しているだけじゃ真相にはたどり著けまい。実際にこの目でたしかめることが唯一の解決法だ。

「……で、そのロドリンゲデスという人にはどこへ行ったら會えるんでしょう?」

容疑者の名前が判明したのはいいけれど、できれば居場所も一緒に判明してほしいところよな。

製造という犯罪を犯している恐れがあるからには、捕まえないことには話にならない。

「ううむ、これがリストにある名前ならのう……!」

「所在地もリストに記載されているから訪ねればいいだけなのだが……!」

死人はリストから抹消されている以上住所も不定。

あえて言うなら墓場。

こうなったらロドリンゲデスさんの埋葬地でも調べてみるか。

「もっといい手掛かりがあります」

スェルが言う。

「私の『分解析・極』がさらなる報を引き出しました。この毒の原材料の産出地です」

「さんしゅつち!?」

この毒の原料になったものが、どこで採れたかわかるってこと。

凄いじゃんスェルのスキル! もう何でもござれだ!

「しかも原料はすべて同一の土地から産出されています」

「ますます怪しい」

原料って、さっき羅列していたたくさんのヤツでしょう?

それだけたくさんの毒素材を一つの土地で賄えるなんて……。

「信じられんのう。ザッと見でも最低三ヶ所から取り寄せねばと思っていたんじゃが……!?」

「しかしそれだけ多岐に亙って毒を移させれば足がつきやすくなる。おかしいなと思っておったんじゃが、そんな答えとは……」

「植毒だけでなく、毒や鉱毒までじっておるでのう……!」

長老さんたちも困気味。

さらにスェルは続ける。

「その場所は、アルデン山渓にあるダンジョンです」

「ダンジョンか……、それならば多彩な素材が産出するのも不自然ではないが……!!」

ついに確定的は有力手掛かりが顔を出した。

大聖教會が使ってきた毒は、すべて一ヶ所のダンジョンから採れる素材でできていた。

さすればその土地に、問題の毒師がいると考えて間違いない。

ここに來ればロドリンゲデスの名も有力な手掛かりになるだろう。

いまだ謎は殘っているが、スェルの分析に則ればこれが犯人の名なんだ。

とりあえず現地にいって、當てもなく彷徨わずに済む。

「僕が行きます」

薬師結社の人たちはよくぞここまで詳細にわたって調べてくれた。

ほとんどスェル一人でやってたような気もするが。

調査がここまで突き詰まったからにはあとは行あるのみ、そして実働こそ冒険者である僕の役目だ。

幸いダンジョンといえば貓がまっしぐらするのと同等に冒険者もまっしぐらしていく対象。

表向きの機にはまったく困らない。

僕が何故ダンジョンにるのか? そこにダンジョンがあるからだ!

などと堂々言いながら裏で毒師について調べることができる!

「私も連れて行ってくださいエピクさん!!」

願い出るスェル。

やっぱりそうなる?

「相手になるのが毒使いなら、薬師である私もきっとお役に立てます! 毒と薬はそもそも同じ! 薬を持って毒を制す、です!!」

スェルの獻が非常にに染みる。

デメテールの土地でも、毒に侵された人々を救ったのはスェルの製薬技だった。

僕一人だけならの毒を『消滅』スキルで消し去れるのでどうとでもなるが、推測通りならこれから向かうのは毒使いの本拠地。

どんなことになっているかわからない。

スェルの協力はこの上ない頼もしさだろう。

「それに薬師の一人としてもを犯した同業は放置しておけません! 薬師協會及び結社を代表し、私が違反者にペナルティを加えます!!」

「さすがスェル様! その意気じゃぁああああッッ!!」

既に完全に取り巻きと化した結社の長老ジイさんたち。

では俺とスェルと、いつも通り二人のメンツで向かうことになった。

新たなる戦いの地へ。

……故郷エフィリトの街に帰れるのはいつごろになるんだろうか?

アルデン山渓という地は、調べてみれば王都から案外近いところにあった。

それもそうかとは思う。

もしも本當に大聖教會に加擔する毒使いがいるなら、できる限り近くに居をかまえていなければ連攜だって取れない。

その點、このアルデン山渓はギリギリの距離と言える。

伝書バトでも飛ばせば一日中には屆くぐらいで、毒薬を作ったとして何かの荷に紛れ込ませれば比較的容易に送り屆けられる。

冒険者ギルドに問い合わせて調べてもらったところ、たしかにその奧地にはダンジョンが存在するらしい。

しかしながら規模としては小さく、産出ない上に有りれたものばかりであるため冒険者のステージとしては良好ではない。

メジャーではないとのことだ。

それでも王都から近場にあるということで気分を変えたい冒険者、もしくは駆け出しが経験を積むために遠征してくるという。

花形にはなれないが、それでも最低限は客が訪れているという何とも微妙なスポットとなっていた。

最大の有利さは首都圏からの通いやすさ。

そんなところへ僕らは目指していきます。

手配などは王都の冒険者ギルドが整えてくれたため萬事つつがなく進んでいる。

さすがにギルド理事からのお墨付きがあれば怪しまれはすまい。

S級冒険者になりたての人が見聞を広めるために近場から訪ねてみた……とでも言っておけば大丈夫だろう。

「エピクさん! なんだか久々に二人だけでの行ですね!!」

「うむ……そうか? いや、そうか……!」

スェルと二人オンリーでの行といったら冒険者等級を上げに王都へ訪れて以來か。

あれからまあ々あったからなあ。

しかし能力の相的にも関係的にも、これからも一緒に行くことが一番多いのがスェルなんじゃと思う。

「まあ、これからもよろしく頼んます」

「不束者ですが」

いいね。

さて、山野を分けって進んでるわけですが、いつになったらそのアルデン山渓とやらに著くんでしょう?

報によればダンジョン付近には小さいながらも街があり、主にダンジョン目當てで來る冒険者のための宿、小規模ながらもダンジョンから持ち出される素材の買取処理などを行う施設があるそうだ。

もちろん冒険者ギルドの支部もあって、『これからS級冒険者が來るぞー!』ということは王都から既に通達済みなんだとか。

「だから向こうから出迎えが來るんだってさ。もうしばらく進んだらぶつかり合うんじゃないかな?」

「わあ、エピクさん何だかVIPみたいですね!!」

『VIPみたい』というかVIPそのものなんだよなあ。

何ヶ月か前には考えられない。誰からも軽んじられる存在だった僕が今では出迎えをけるようになるなんて。

これもスェルと出會ってから堅実に進んできた果。

しかしここでいい気になってはいけない。いつぞやのダーマスさんのようにすり寄ってくる人たちもいることだろうからな。

會う人には常に細心の注意を払わねば。

「……あッ、なんか人影が見えますよ! お出迎えってあの人じゃないでしょうか!?」

スェルが指差す先、たしかに人っぽい影が。

オークかゴブリンかもしれないって注意が必要だけれども。

しかし大丈夫だ。

あの人影は確実に人の影のようだ。

しかも僕らの進行方向にいるので、多分だがアルデンの街から派遣された出迎えの人で間違いない、多分。

S級冒険者を出迎えるんだから向こうも冒険者だろう。

しかし……。

……はて?

近づくほどに目鼻立ちがハッキリしてわかってきたが……、出迎えの人の顔に、僕は何だか見覚えがあった。

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