《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》98 哀愁の街
そうして辿りつきました。
アルデン山渓。
その奧底に小さなダンジョンがあるという。
ダンジョンはいかなるモノでも資源の源となり、富の産出が約束される。だからこそ近辺にはダンジョンを管理するための街もできる。
ここもまた例外ではなく、ダンジョンり口付近に小さな街が形されていた。
しかし実際足を踏みれてみれば何とも寂しい街並みだった。
規模としても小さく、行きう人もまたない。
一言『活気がない』で形容することもできるが……。
さらに言うなら鉱山枯れかけの炭鉱町……って風?
「なんだか重苦しい雰囲気の街ですね……」
その気配をスェルも察しとってく。
空気がドロリと濁っていて、呼吸するのに苦労しそうな印象だった。
あまり好き好んで訪れたいと思えない街だった。
「どうします? まずは薬屋にでも行ってみますか?」
忘れてはならない。僕らの目的は、大聖教會とつるんでいる毒の製作者を捕まえること。
それゆえ潛伏する可能が非常に高いこの街を訪ねた。
毒師の行方を追うには、もっとも関係の深い薬屋を訪ねてみるのは定石。
たしかに説得力はある。
しかし……。
「相手だって警戒しているかもしれない。あからさまにくのはよくないだろう」
というわけでまずは冒険者ギルドへ向かう。
僕らはあくまで見學気分でダンジョンを訪ねた冒険者……というていだ。
「それに冒険者は報に敏だ。もしこの街に不穏な噂が流れていたら必ず冒険者ギルドで聞くことができる」
「なるほどです! さすがエピクさんS級冒険者ですね!!」
いや、それほどでも……。
とにかくはテンプレ通りに冒険者ギルドへ向かおう。
ダンジョン探索の許可を得るために。
街中を見回して、ギルドらしい建を見つけてはいるのに、そう手間はかからなかった。
元々建はないんだ。
室は閑散としており、人もない。
「本當にここが冒険者ギルドか……?」
と疑うほどだった。
王都のギルドとは比べるまでもなく、田舎と揶揄されるばかりのエフィリト街ギルドすら、ここと比べたら大賑わいだ。
ますます寂し印象が強くなる。
それでも辛うじて付に人はいたので、戸いつつも手続きを申し出る。
「あのー、すみません……」
「……」
「すみませーん!」
付に座っている若い……それでもどこか虛ろとした表の人は、僕が真ん前に立っているというのに大聲出さないとまったく気づかなかった。
「……はい? なんです? 野菜がしいなら隣のお店ですよ?」
「違います違います! ダンジョン探索の許可がしいんですがー!!」
思わず依然として大聲を上げてしまう。
でないと普通に無視されそうで。
なんなの!?
そんなに僕たち、夕飯の材料を買い求めに來た夫婦にでも見えます!?
「ダンジョンにる? また酔狂ですねー。こんな狩り盡くされた淺ダンジョン、ったところで何の面白みもありませんよ?」
「それは……!?」
凄い地元のネガティブキャンペーンしてくるじゃん。
ある意味スゴイ。
利用する冒険者がなくなればギルド職員だって困るはずなんだけど、関係ないのかな?
「まあそれでも登録手數料とか払ってくれるんなら儲けものですけど……。本當にいいんですか? それならこの申請書に必要事項書き込んでくださいね」
「ハイ……!」
何とも投げやり案に促されるままペンを取る。
「ところで……人全然いませんね、このギルド。いつもこんななんです?」
「まさかぁ、さすがに毎日こんなガラガラじゃ、ウチのギルドだって潰れちゃいますよ。それぐらい見てわかりません?」
……。
それは……!
「す、すみません……!」
「今日は何でも、王都の方からS級冒険者が來るってことでただでさえない所屬冒険者が駆り出されてるんですよ。街に通じるすべての道にスタンバイさせてS級様が現れ次第、歓迎と案を全力でするように通達してるんですよ」
「はあ……」
「ギルドマスターなんかもう張り切りまくっちゃって……、そんなに偉いんですかねえS級って? でもアタシら下っ端にとっちゃあ余計な仕事を増やしてくれるだけのハタ迷な存在ですよ。ハエと一緒ですね」
職務に前向きでない付嬢にとっては最上級冒険者の訪問も余計な責務に過ぎなかった。
まあ気持ちはわからんでもないけれど。
「それを言ったら、そんなクソ忙しいタイミングで來たアナタも同じですけど。本當奇遇ですねS級冒険者と同時期に訪問なんて。まさかS級様の追っかけとか?」
「それは違いますね……!」
「じゃあ本當にただの偶然ですか。まあ手間が増えるのは一緒ですけどね。このあともS級冒険者様のために手続きをしてあげないといけないんですから。……ホント面倒くさいわ、やっぱり最上級様には特別な手続きでも必要なのかしら? 平凡冒険者たちの手続きしか知らないから困るわ……」
大丈夫です。
階級が違うからって手続き自に差はないはずですよ、多分。
この出してくれた申請書で充分手続きできるはずですし……。
この申請書の記欄……氏名と、本所屬のギルド名と、……現在の等級。
やっぱり書かなきゃダメか?
隨分と公表の機會を逸したように思えるが、今さら?
しかしギルドに提出するからには公式な書類。ウソを書くわけにもいかないからなあ。
……仕方ない。等級、Sと。
最後まで書き終えて、改めて確認。……記れなし、と。
そして満を持して提出。
「はいはい書けたらちゃっちゃと提出してくださいね。ホント面倒なことは手早く済ませたいんですから……」
と言って付嬢、僕の提出した書類を確認して……。
「……ええと? エフィリト冒険者ギルド所屬のエピクさんに、特別同伴者のスェルさんの間柄が婚約者? 薬師協會所屬の薬師ですか。……まあ問題ないですね。等級がC以上なら隨伴も許されますからD以下なら……。んでんで等級は、S……?」
申請書の項目を流し見ているんだろう付嬢さんの目が、止まった。
大丈夫ですよね?
C級以上に同伴者をれる権利があるなら、S級にも當然ありますよね?
S級はC級より上なんだし。
「S……? エス? えすきゅう? アナタ本當に? いや待って、ギルド申請書類にウソを書くのは重罪よ? なくともギルド側から厳正な処分が下るわよ? 場合によっては拘束もあり得るわよ? わかってるのその辺り?」
「問題ないと思いますが?」
何せ僕は本當のことしか書いていないんですから。
大丈夫だよ、なあ?
「あ、あくまでシラをきるっていうのね。い、いいわ今、上に確認に行ってくるから……! それで虛偽申請だとわかったら牢屋にるくらいは覚悟しておいた方がいいわね!」
と言って付嬢さん、建の奧へと引っ込んでいった。
それを見送り……。
「なんだか引っ込みのつかないようなじになってましたね」
と冷靜な意見を述べるスェル。
果たして僕の申請書類は理されるのか?
數分待っても何もないから退屈で、スェルと指相撲して遊んでいた。
すると建の奧からドタドタと足音がして……なんだこの足音?
一人分じゃないな?
「失禮いたしましたぁああああああッッ!!」
付へ出てくるなりダイビング気味に土下座する。
初めて見る白髪じりの中年男だった。
「當ギルドのマスターを務めております! このたびはS級冒険者に対してなんという無禮をお許しくださぁあああああッッ!!」
「お許しくださいぃいいいいいッッ!!」
隣で同じく土下座するのは、先ほどの付嬢さん。
ダウナーな態度が打って変わって、非常に気ぜわしい。
「まさか本當にS級冒険者様だったなんてぇええええええッッ!! ご無禮な態度まことに申し訳ありませんんんんッッ!! 謝ります! 全力で謝りますのでどうかクビだけはぁあああああッッ!!」
と床にゴリゴリ額をりつけながら泣きんでくる。
……困ったな。
目的からしてできる限り靜かに現地りしたかったんだが、いきなり滅茶苦茶な騒ぎになっているじゃないか。
下手に注目されなければいいんだけど。
とにかく、この土下座組をなだめすかすことに全力を盡くさなければならなかった。
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