《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》99 S級への歓待

さて、この僕。

あっという間にギルド建の奧へと引き込まれて、何やら豪華そうな部屋の豪華そうなソファに座らせてもらうと、溫かい紅茶を出された。

スェルも隣に座っている。

向こう様の心づくしの歓待と言ったじ。

「遅ればせながら本當によくお越しくださいました! 我がギルドへ! S級冒険者が來ていただけるなど當ギルド始まって以來のことです!!」

ホクホク顔で言うのはさっき土下座していたギルドマスターさん。

ギルマスといえば僕個人にとってはギズドーンの脂ぎった顔が思い浮かぶんだが、ここの方はイメージをぶち破る細面で、むしろ人當たりのよい印象がある。

それでも、遙かに立場が上のS級冒険者に対して何とかご機嫌を損ねまいとする必死さが伝わってくるが……。

「本當に気にしないでください。最初から名乗りも上げなかった僕も悪いので……」

さらに言えば最上等級を冠しながらまったく威厳が伴わないところも。

普通にS級らしい佇まいが出せていればいちいち宣言するまでもなく、向こうにも伝わったんだろうし。

だからそんなに気負わなくていいんですよ?

……といまだに土下座する付嬢さんに言いたかった。

「すみません、すみません、すみません、すみません、すみません……!?」

ちょっとオーバーなぐらいに謝罪ムーブを繰り返す。

「先ほどは大変ご無禮しました。心から謝罪します。何でもしますのでどうかクビだけは……!!」

「申し訳ありません。彼には私からキツく叱っておいたのですが。その時に言ったことが思ったより堪えたようで……!」

何を言ったのですか?

「なんでも風の噂では、王都ギルドで無禮を働いた付嬢が即日職を解かれたとか……。そのことを引き合いに出して『お前もクビにされるぞ』と脅したら想像以上に効果があって」

いやいや。

誰ですかそんな不穏なも葉もない噂流したのは?

僕に盾突いたがいきなり職を奪われたって?

かつては一方的にギルドから追放された僕だといのに。

そんなことをするはずがないではありませんか!

……いや、したわ。

「もしかして……初めて王都に來た時のこと?」

冒険者等級昇格の認可を得るために、初めて上京し、王都へやってきた。

その時、王都の冒険者ギルドで初めて対応してきた付嬢は、僕らのことをお上りさん扱いして登録を拒否してきた。

付にそんな権限はないというのに。

それが明るみになって上の方々にもバレて、無事失職。

クビになったのはあくまで職務規定に反することを行ったからで、僕個人への無禮が原因ではない。

「誤解ですよ、あの當時僕はS級でもなかったですし……」

「クビになったのは本當なんだぁあああああッッ! アタシもおしまいだぁあああああッッ!」

変なところだけ彼の耳に吸い込まれていく。

沈靜化させるのに隨分苦労したが、やはりこれがS級という肩書が持つ威力ってことなんだろう。

使いようによっては渉事などで強力な武となるが、しっかり手綱を取っていないと今のように何の意識もしてないのに周囲をメッタ斬りにしていく。

恐ろしい威力だった。

まだ新米S級である俺に、立場の重さを実させた。

「何にしろ無禮な振る舞いをされたぐらいで職を奪ったりはしません。噂でクビになった付嬢は明らかにギルド職員としてやってはいけないことをして、その罰をけたからです」

あの當時のことをもうちょい厳に振り返ると、ギルド理事がぶっ倒れて生死の境を彷徨ってたっていう特殊な狀況もある。

その解決の糸口になりうる僕を門前払いにしたってことで、余計事態がこじれたんだった。

それから……そうそう。

あの當時のことを思い出してもう一つ。

「僕と一緒にギルドを訪れた友人のことを酷く悪くいってね。あれは許せなかった。だからひとしきり強く抗議したのも彼が失職した原因の一つかも」

「やっぱり気にらない職員をクビにするんだぁあああああッッ!!」

これではいつまで経っても話が進まない!

「大、外に出ている冒険者たちが悪いのよぉおおおおッッ!! アイツらが街の外に出張ってS級冒険者をお出迎えする算段だったんでしょおおおおおッッ!! アイツらが一緒に來ていればアタシだってすぐさまわかったわよぉおおおおおッ!!」

「そッ、そういえばS級冒険者様、ここへ來る途中に我がギルドの冒険者にお會いしませんでしたか? 相があってはいけないと出迎えに行かせたのですが?」

ギルドマスターさんから言われて『うーん』と唸る。

會いました。

『會った』か『會ってない』かで言えば、普通に會った。

しかしながら、その出迎えの人は普通にスルーして行きましたよ。

僕のことをS級冒険者だと気づかずに。

「街へたどり著く道もいくつかありますから、行き違いがないように全部の道に多くの冒険者を行かせたというのに誰も見つけられなかったというのか? もしかして見逃した? 冒険者にあるまじき不注意だな……!?」

ヤバい。

このままではさっきを付嬢を苛んだ責任問題が、別の人にも向く。

的には賓客スルーを実行した張本人であるヌメロさんに。

それはマズいなあと思う僕は、め事を避けたい小市民だった。

「ええとですね……! よく考えてみてください、僕はS級冒険者ですよ。下位冒険者の目を盜むぐらい何ともないですね!」

「なるほど! S級冒険者の凄さを早速教示してくださったのですね! これは素晴らしい!!」

よかった。

上手いこと取り繕えた。

これ以上僕を中心にしてイザコザが起きるのは金際にしたいんです。

僕の心の平穏のために。

「しかし、誰も気づくことなくS級冒険者様の素通りを許したということは、まんまと出し抜かれたということ。ヤツらがいかに弛んでいたかということを実地で示してくださったのですな? これは腑抜けどもを一から徹底的に鍛え直すという……!」

「いやいやいやいやいやいやいやいやッッ!?」

あんまり取り繕えていなかった。

新しい面倒が起きようとしている。

かつてダーマスさんの一件で、S級冒険者であることの煩わしさ……世間のしがらみを思い知ったつもりであったが、まだまだ理解が足りていなかったのかもしれない。

S級冒険者という存在が與える影響力の大きさを。

どれだけ最高位だろうと所詮は冒険者……社會の爪はじき者なんだから大したことはないと思っていたのに。

いやなくとも今回當たっているのは冒険者の業界そのものなんだから、そこでS級の稱號がモノを言いまくるのは當然なのかもしれないが……。

あれから一時経って、出迎えに走らされた冒険者たちが戻ってくると全部で三十人はいた。

全員が同じ役割で駆り出されて、ここアルデン山渓の街から延びるすべての道にスタンバイしていたんだろう。

その中に當然ヌメロさんの顔もあった。

現地ギルドマスターから僕のことをS級冒険者として紹介された時の、彼のこわばった表が忘れられぬ。

ただその場では、出迎えが誰も賓客を見つけることなくすり抜けられたのはS級冒険者側の指導の一種だということになり『テメエら気合をれ直せ!』という形で話はまとまった。

その日は一旦それで解散。

冒険者たちも三々五々帰っていったが、ヌメロさんだけは最後までギロリとした視線を僕から離そうとしなかった。

正直怖かった。

現地ギルドマスターさんからは『このあと一杯』などと接待的なものにわれたが、丁重にお斷りした。

これでもダーマスさんの一件がまだトラウマとして殘っている。

『明日から本格的にダンジョンに潛るから調管理したい』ともっともらしい理由を並べたら『さすがS級冒険者様はストイックなお方だ!!』と見えいたおべっかを使われた。

先方から用意してもらった宿にスェルと一緒に泊まり、これからの方針を話し合う。

ところで彼と婚約してよかったと思うのことの一つは、こうした出先の宿で堂々と一つの部屋に泊まれることだ。

まあ冒険者の中には外聞とかも気にせず男混合で一つの部屋をとるパーティもいる。

その程度を気にする繊細さでは人跡未踏の地を走破する冒険者は務まらない。

そんな中で結局何とかなっちゃったカップルもいれば、なんともならなかった人たちもいるとか々な噂が流れてくる。

ただそれでもスェルは冒険者ではなく一般の人で、しかもお父さんから大事に育てられた一人娘なので滅多な扱いはできない。

常識で考えたら男と相部屋なんてとんでもないんだが、夫婦ならば例外として通せる。

ここはもう敵地かもしれないんだ。単獨行になる時間はできる限りなくなければならない。

「薬屋に行きます?」

スェルは相変わらずの薬屋推し。

しかしもうしだけ待ってもらいたい。

「冒険者が來たからには何はなくともまずダンジョンにらないと。まあその準備として薬屋を覗くのはいいかもしれないけれど……」

「あくまで真の目的は隠し通すってことですね!」

そう、探しモノは『』ではなく『者』。

しかも自分に後ろ暗いことがあるのがわかっている人間だから、追跡されていることをすれば対策を打ってくることは充分ある。

S級冒険者として大層な肩書きを擔いでいるのだから存在を隠すのは不可能にしても、せめてその意図だけは最後の瞬間……相手の首に縄をかけるまで悟られないようにしないと。

「なので怪しまれないためにも明日はダンジョンに潛る。ついでに中で手にるものも調べたいからスェルに協力してほしい」

「結社で調べた毒の材料があるかどうかですね!?」

スェルによる『分解析・極』による調査結果、毒の原料はすべてここにあるダンジョンから手にったものだという。

そう簡単な話ではないだろうが、明日実際にダンジョンにり、実際に毒原料が手できるかどうか裏取りしてみるのも無益な話じゃあるまい。

スェルの助けを借りて、明日から本格的に毒師へと向かう調査を始める。

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