《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》103 他人の目の威力

ダンジョンから上がってきた僕たちを再び熱烈に迎えたのは、やはり現地のギルド一同だった。

「よくぞお戻りいただけました! 掠り傷一つないとは、さすがS級冒険者様ですなあ! ハハハハハハハ!」

もっともらしいお世辭の濁流で押し流されんばかり。

この様子なら僕たちがダンジョンに潛った真意は悟られていないだろう多分。

「ウチからつけたヌメロは役に立ちましたか? 何年経ってもE級から上がれない役立たずですが、道案ぐらい勤められれば上出來かと……! おいヌメロ、しっかりとS級冒険者様をご案できたんだろうな!? ん!?」

現地ギルドマスターさんに聞かれるが、ヌメロさんは呆然としてまったく反応できない。

「オレの今までの冒険者人生は何だったんだ……? エピクのことを見下してたのは間違いだったのか? もしかしてオレの方が見下される側……?」

「何を言ってるんだコイツは?」

呆然自失狀態のヌメロさんに、現地ギルドマスターさんも首を傾げる。

……まあ、僕からのコメントは差し控えさせていただきます。

「ううむ、こんな狀態ではS級冒険者様のお役に立つことはできなかったようだなあ……。申し訳ありませんな私の人選ミスだったようです。やはり役立たずは、どこまでいっても役立たずなようです」

「……」

なんだろう。

この、僕のにまでギリギリ軋んでくるようなじは?

「明日もまたダンジョンに潛られるのでしょう? その際には別の案人をつけさせていただきましょう。連日こんな役立たずを共にして當ギルドの信用が落ちてはいけませんからなあ!」

彼らは、この一日で僕らが最下層まで到達したとは思いもよらないのだろう。

大抵の場合數日に分けて段階攻略するのがダンジョンのセオリーだ。

「當ギルドには、まだまだ名うての冒険者が揃っておりますのでご安心ください!! もちろんヌメロのような役立たずではなく冒険者等級も一等のベテランたちです! 馴染みの気安さを基準にしてヌメロを抜擢したのですが、間違いだったようですなあ!!」

現地ギルドマスターさんの合図で、ギルドの奧からゾロゾロ出てくる。

いずれも厳つい顔つきで、踏んだ場數だけは相當なものだと推測される。

「我がギルドが誇るB級冒険者たちです。次の探索ではこの猛者たちが必ずやS級冒険者様の助けとなって最下層まで導いてくれることでしょう!」

「こんな役立たずと一緒にしねえでくだせえや! 必ずお役に立ちますぜ大將!!」

ベテランらしい冒険者が、馴れ馴れしい笑みを浮かべる。

人數は五~六といったところか、彼らが取り囲むのは何故か僕ではなく、ヌメロさんの方だった。

「まあ、こんな役立たずと一緒にされること自心外ですがね! なんせ何年経ってもD級にすらなれない才能ナシですから!」

「D級つったらギリギリ一人前のラインですぜ! それにもなれねえってのは永遠の半人前! 転職考えた方がいいって、なあ!」

「これでもオレたちが毎日指導してやってるってのにさあ! 荷持ち以外にとんと役立たねえ!」

「そりゃあ荷持ち以外のことやらさねえからなあ、ギャハハハハハハハ!!」

多くの先輩冒険者から小突かれなじられ、それでも無言を強いられるヌメロさん。

下へ俯いて押し黙っているだけだった。

それだけで彼がここで過ごした日々のことが想像できる。

「だから言ったんすよシストレさん! やっぱり選考基準は馴染みより実力だって!」

「S級冒険者様と同郷か知らねえが、ダンジョンでモノを言うのは実力だ! そっちでこそ人を選んでほしかったよなあ!!」

「こんなボンクラつけられてS級冒険者様もお冠だぜ! ご機嫌を取り直すためにもオレたちアルデン山渓ギルドの最強冒険者が巻き返さねえとなあ!!」

「わかってんのかいヌメロちゃんよぉ! お前の無能の拭いをオレたちがしてやるんだぜ! 謝してもらわないとよぉ!!」

そう言ってますますグリグリと頭をでる。

その様相は可がりというより完全なイジりであった。

……かつて僕が、ギズドーン支配下の冒険者ギルドでけたような。

「まあ見ててくださいよS級冒険者様! 明日はオレたちが立派にご案してみせま……ぐびゃはッ!?」

ベテラン冒険者(自稱)の一人が鉄拳をけて吹っ飛ぶ。

そのままギルド建の端まで吹っ飛ばされ、壁に激突して以降は沈黙した。

壁には亀裂がる。

それほどの衝撃をけたからには意識も吹っ飛ぶのは道理だった。

……もっとも本當に実力のあるB級冒険者ならそんな醜態は見せないだろうがな。

「なな……ッ!? 何のマネですかいS級冒険者様!?」

毆ったのは僕だ。

『消滅』スキルしか取り柄のなかった僕だが、そんな薄っぺらい陣容でS級冒険者は務まらない。

エフィリト冒険者ギルドに留まってくれているリザベータさんから毎日のように鍛えられたし、実際にS級の稱號を得てからは『その名に恥じぬように』とさらに過酷に鍛えられた。

そのおで今では素手でも、木っ端冒険者ぐらい一掃できる実力になってしまった。

曰く、なかなか筋がいいらしい。

「ちょッ!? 何ぶぎえッッ!?」

「ぐほぉッ!?」

「あんばらッ!?」

「ひええええッ、ぶぎふッ!」

次々ブチのめされていくベテラン冒険者(笑)たち。

この程度の実力で僕のお供なんて片腹痛いな。

S級冒険者の前では、多の実力の差は関係なく皆ザコになってしまう。

そのことをもっとよく考えるべきだったな。

「ひぃいいい……!? S級冒険者様、一何を!?」

床にノビて死累々とする自ギルド主力冒険者たちに、現地ギルドマスターさんはビビる。

ソイツらにいびられていたヌメロさんも呆然と……。

「人の言葉には力がある。……意外にも、実際に毆り飛ばしたりするより、ずっと強い力が……」

僕にも覚えのある話だ。

僕は出地のギルドでずっとカスだ、最弱だ、役立たずのゴミだと言われ続けてきた。

僕はその言葉をずっと信じて、自分自を何の取り柄もない役立たずだと思っていた。

今から考えたら不思議な話だ。

ふとしたきっかけでもっと広い世間の目にれた途端、すぐさま持てはやされて頼られて、いつの間にかS級冒険者にまで祭り上げられてしまった。

今だと自分もいっぱしの実力なんだと疑いもなく信じることができる。

エフィリト冒険者ギルドでは絶対に信じられなかったのに。

「だから人の言葉ってのはそれだけ力があるんだろう。事実すら捻じ曲げて、ウソを信じ込ませてしまうくらい他人から投げかけられる言葉というのは鋭く重い」

お前はダメだ、才能がない、役立たず。

そんな言葉を日夜かけられ続けたら、どんな天才でも本當にダメになってしまう。

それは厳然たる事実だった。

僕自の経験からして真理だと確言できる。

「ヌメロさん……こんなギルド辭めましょう」

「へッ?」

「エフィリト街の冒険者ギルドに戻りましょう」

あそこも変わりました。ギズドーンさんはギルドマスターを辭めて、新しい制に作り直されてる。

「A級冒険者が直接指導に當たってくれましてね。厳しい上に的確なアドバイスだから新しくD級に昇格する人が続々増えてるんですよ。ヌメロさんみたいに才能のある人なら、すぐD級どころかC級にも上がれるでしょう」

「で、でもオレは……、才能がない役立たずで……!?」

「そんなのダメギルドの的外れなテキトー評価でしょう。そんなのを鵜呑みにするなんてヌメロさんらしくないですよ」

僕のその言葉に、捨て置けぬとばかりに外野からのけたたましい聲が鳴る。

「お待ちくださいS級冒険者様! その仰りようはあまりにも!!」

と言うのは現地ギルドマスターさん。

まだのされてぶっ倒れている地元冒険者たちにかまいもせず僕に詰め寄る。

「僕は事実を述べたまでです。ここは冒険者の將來を一方的に潰す害悪ギルド、僕の評価は揺るぎません」

「そんな評判が広まったら我がギルドはおしまいです!!」

「おしまいになったらまた始めたらいい。僕の出ギルドもそうしましたよ。長らくギルドを腐らせてきたギルドマスターは職を追われ、新しいギルドマスターの下で大改革が行われています。おかげで所屬する冒険者も粒ぞろいになってきましたよ」

僕の告げる言葉に現地ギルドマスターは息を飲む。

自分の部下をなじっていたつもりがいつの間にか自分の進退に関わってきたんだから。

しかし僕は知ったことではない。

自分の見たことじたことを思うままに想とするだけだ。過去に僕をなじってきた人たちがそうしたように。

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