《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》104 帰ります

しかし現地ギルドマスターは必死だ。

自分の進退に関わることだからなおさら必死で、僕に縋りつくように近づき語り掛け、最高を促す。

「おま、お待ちくださいS級冒険者様! お気を損ねたことは謝ります! 明日以降の探索で、評価を修正できますよう全力を盡くさせていただきますので、どうか! どうか!」

「明日はありませんよ。探索は今日で終わりです」

「ふひッ!?」

「もう最下層まで探索し終わりましたからね」

いや、それよ。

ご當地ギルドの人々は決めてかかっているが、どうも僕が今日のところは下見程度で終えてダンジョンから帰ってきたものと思っているらしい。

最下層まで進んでダンジョン制覇……など夢にも思っていないじだ。

「そんなバカな……!? いかに淺層小規模とはいえ、たった一日で制覇できるほどウチのダンジョンは甘いところでは……!?」

「本當です、シストレさん……!」

おずおずと言い出すのはヌメロさん。

彼は僕に同行していたんだから他でもない生き証人。

「エピクは……本當に驚異的なスピードでダンジョンを進んでいって……! モンスターも襲い掛かってきましたが、皆一瞬で消されました。タイムロスなんてないようなもんです。移速度もまるで走ってるようなもんでホントに最下層まであっという間でした……」

「なん……だと……!?」

報告を聞いた現地ギルドマスター、あっけに取られて口を開ける。

まあ本當のことなので。

僕自はこれくらいのこと公開されても痛くもかゆくもない。

「そんなバカなことがあるのか? それがS級冒険者の実力……!?」

「多分そうです。オレたちなんかS級冒険者が凄いってことがわかってただけで、本當にどれだけ凄いのかなんて想像もできてなかったんですよ……!」

いや、別に個人の冒険者であることは変わりませんがね。

S級と言ってもそれだけの存在ですよとみずからを戒めておく。

「それでもだいぶ遅くなってしまいましたがね、今日のうちにはお暇できなさそうです。もう一晩泊まって、明日の早いうちに発たせてもらいます!!」

「そんなッ! S級冒険者様からの評価を低くしたままお帰しはできません!……ならばッ、ならばせめて今夜お食事でも、最大級のおもてなしをさせていただきますので……!!」

「明日も早いので遠慮します」

「どしぇえええええッッ!!」

必殺の接待攻勢も僕はシャットアウトした。

ダーマスさんの件で手痛い目に遭った僕は警戒心も人一倍。

「じゃあ僕は宿に戻ります。ヌメロさん、さっき言ったこと前向きに考えてくださいよね」

「お前、本気なのかよ……?」

疲れ果てたようなヌメロさんは吐息をらすように言う。

「本気だったのかよ? オレ、散々お前のことバカにしてきたんだぜ。恨みだってあるんだろう? それにエフィリトの街のギルドからしてもオレは後ろ足で砂かけた裏切り者だぜ。ノコノコ帰ってもれてくれるわけが……!」

「それは昔のギルドでしょう。今のエフィリト街にはありません。生まれ変わったんですよ何もかも」

だから一からやり直そうとする人には打ってつけの環境だと思う。

「どっちにしろアナタは、ここのギルドじゃ一花咲かせるのは無理だと思いますよ。花咲くにしても、わざわざ日の枯れた土壌に種を撒く必要はないでしょう。芽吹くのが無理だと思ったら一旦種を掘り返して、別の土壌を探すのもいいんじゃ?」

「でも……!?」

そこへ割り込むようにってくるのが現地ギルドマスター。

「ままま待ってくださいS級冒険者様! 不當な引き抜き行為はおやめいただきたい!」

「引き抜きってのは期待大な有能人材に対して行われるものでは? アナタたちはそんな大きな期待をヌメロさんに寄せてるんですか?」

「ぐぎッ?」

言葉に詰まる。

「だとしたら期待する新人冒険者の扱いがあまりにも雑すぎますし、そんな雑に冒険者を管理するギルドには低い評価をつけざるを得ない。違うというなら別にいいでしょう? 特に期待もしない冒険者がどこに移籍しようと?」

「ぐぎ、ぐぎぎぎぎぎぎぎ……!?」

「とにかく僕らは、明朝早くにはここを出立します。お見送りはけっこうです。だからこれでお別れになりますけれど、お元気で」

そのまま僕らは一瞥もせずにギルド建から去った。

現地ギルドマスターさんがどんな表をしているかも確認しなかったが、きっと憤懣に満ちてるんだろうなと思った。

「……挑発しまくりましたねえエピクさん」

同行のスェルが、誰もついてこないことを確認してから言う。

「これでどうくかを見たかったしな。……でもヌメロさんのこともちゃんと思って発言したんだよ?」

「それはわかっていますエピクさんは優しいですから……」

この街……この街に住む人が何かを隠してるってことは、ダンジョン最奧の隠された空間から確実となった。

ならばその隠匿はどれだけの規模で行われているのか?

とりわけこの街に付いた冒険者ギルドは、隠匿に関わっているのか?

そのことを詳らかにするためにも、相手に直接の揺さぶりは必要だと考えたのが僕だった。

「最深部まで辿りつかれたことを知れば、その奧にある謎空間について気づいたかもと思うだろうな」

を作った人たちにとって、一番れられたくないことでしょうからね……!」

そう、スェルの言う通り。

さすればこの街のどこかにいるはずの、を悟られたくない者は必ず今夜のうちにくことだろう。

明朝に発つってことはギルドで宣言したからな。

その報が伝わったらチャンスは今夜しかないと思うはずだ。

「黒幕に冒険者ギルドが関わっているならなおさら……。當事者に言うのと同じだからな」

「むしろ行の迅速さで、この街の冒険者ギルドがシロかクロかわかりますね!」

そういうこと。

冒険者ギルドがとグルであれば、この事態は迅速に伝わることだろう。

誰が敵で誰が味方か、しっかり見定めることも大事だ。

「じゃあ今夜のダンジョン再探索はどうするんです? 相手の出方を見るために控えます?」

「いや、しっかりやるよ」

時間は貴重だからね。

相手の出方をたしかめつつ、相手が何を隠しているのかもしっかり暴かせてもらう。

どちらにしろ、あのダンジョン最奧にある謎空間に侵したら相手だって異常に気づく、そこからさらなる隠ぺい工作に出られたらせっかく摑みかけた真実がまた霞に消えかねない。

この街のどこかに住むという毒師。

大聖教會に毒を流し、世界の災いとなっているヤツを絶対に逃がさない。

そのためにも最初の一作ですべてを決める必要があった。

相手にターンを回さない、最初の一手で息のを止めれば相手のターンなど回ってこない。

そのためにも、すべての決著をつけるのが、他ならぬ今夜だった。

そして今夜がやってきた。

僕たちは何事もないかのように夕食とシャワーを済ませて、明かりをけしてベッドにもぐりこむ。

もちろんそのまま寢ったりしない。

すべては相手がどうくかを見定めるためだ。

寢たふりをしつつ、いつ何がきてもいいように耳をそばだてて……。

……。

…………。

……………………ぐう。

「エピクさん!!」

「はいッ!?」

いいや待って?

寢てないよ?

いくらベッドにっても、警戒態勢にっていたら寢るわけなんて……!

「いいえ寢てました! それこそが敵の攻撃なんです! もう敵はしかけてきています!!」

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