《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》106 幻の薬
「うおおおおおッ!? くそッ!?」
宿屋の窓から飛び出して、著地した瞬間にひやりとおののく。
なんとその著地地點目掛けてんなものが飛んできたからだ。
剣だったり矢だったり、それ以外にも鎌や金槌、包丁、ハサミとかおよそぶん投げて危ないもののオンパレードが雨あられと降り注ぐ。
殺意高い。
「やっばい! 『消滅』!!」
これには使用可能と判斷して、降り注ぐ危険の雨をスキルで『消滅』させる。
投擲に日用品も混じっていることから、やっぱり大量の襲撃者はプロの冒険者だけじゃない?
「ぐおぉおおおおおッッ!」
「またヤバい!?」
一歩外に出たらもう修羅場だった。
今度はごとぶつかってくるかのように襲い掛かってきた何者かを、上手く手首摑んで放り投げる。
一本背負いのあと確認したら、顔もしわくちゃのおじいさんだった。
「うわわぁあああああッッ!? ごめんなさぁいいいいいいいッッ!」
おじいさんを腰から叩き落してしまった!
なんてことをと思っている間にも、次の暴漢が襲ってくる!
今度はいかにもな冒険者風だったので、容赦なく顔面にパンチを見舞った。
「はッ! スェルは……!?」
「こっちですエピクさん! 大丈夫ですよー!」
見れば、僕と背中を合わせるようにスェル、襲い來る群衆になんか煙のようなものを浴びせる。
煙を浴びた人々は、顔を抑えながらヒーヒーともがき苦しんでいた。
「唐辛子のエキスを末狀にしたんです! 顔に浴びたら目や鼻の粘に付著して凄まじい痛みを伴います!」
……そっか。
凄まじいものをヒトに投げつけるなスェルさん。
しかし直接的に外傷を與えるものではないっぽいし、この狀況ではむしろいいものか。
「エピクさん、この人たち……!」
「わかっている、普通の人たちもじっているな……!」
「られています!」
僕の推察のさらに先を行くスェルだった。
られている?
られてるってどういうこと!?
「薬草の中には、摂取した者の意識を朦朧とさせて、簡単な指示に従うようにするものがあります! 毒草に近い分類です! ここの人たちはそれを飲まされるか嗅がされるかしたのかと!」
「何ぃ!?」
そんなことまで可能なのか薬って!?
しかし、ここに來てまたまた毒薬を攻撃手段として使われたってことは……!?
どんどん疑が確信に近づいていく……!!
「スェル、解毒剤でも作って皆を元に戻すことはできないか?」
「難しいです……!」
この手の狀況なら萬能薬となりえるスェルだが、そんな彼でも不可能はある。
「この手の幻に対する中和剤も用意はしてるんですが、薬材が貴重なもので數用意できなかったんですよ。薬投與対象者に対して用意分がまったく足りません。しかも飲み薬なんですよね。これだけの數の人に無理矢理飲み込ませるぐらいなら時間経過で自然分解されるのを待つ方が現実的です」
「そうか……!」
スェルの簡潔にてわかりやすい説明のおですぐに理解できた。
「本當に信じられません……! 中和剤も貴重ですが、その対象となる幻剤の材料も希であるはずなんです。なのに數百人分を一気に混させるなんて……!」
「考えるよりも今は行だスェル……!」
僕はスェルを抱え上げると、いわゆるお米様抱っこの勢で駆け抜けていく。
意識を作された無辜の一般市民。
僕の使う『消滅』スキルに対してもっとも相の悪い相手だ。
基本手加減ができない……一旦放ったら作用対象を消し去るか否かしかない『消滅』スキルは『手加減』という言葉から一番縁遠い能力だ。
薬に正気を奪われた罪なき人には使えない、絶対に。
もし、この混を想起した人がそこまでわかった上だったとしたら、悪魔のようなヤツと言わざるを得ない。
現狀は純粋な力と、リザベータさん仕込みので切り抜けている狀態だった。
リザベータさんの訓練に本當に謝だな。この経験がなければ、この局面、とっくに押し潰されていたか犠牲を承知で『消滅』スキルを使わなければならなかった。
「うりゃあああああーーッ! 近づいてこないでくださぁーーいッ!!」
スェルも率先して追手に対抗する。
僕に擔がれながら例の唐辛子弾を投げつけ、追いすがる人々を怯ませる。
「辛みの刺激で幻剤の効き目も紛れるはずですから、一石二鳥の効果です!」
「られた人のきそのものはゾンビみたいに緩慢だから、助かるな……!」
だからこそ何とかなってるってじだが……。
しかしこの騒……本當に裏で誰がっているんだ?
これだけの大事なんだから偶発的に起こるわけがない、僕とスェルを作為的に狙っていることに関しても……。
やはり怪しいのは現地ギルドマスターか。
明日にも僕らが返ることを直接伝えた人でもあるし、ギルドマスターという権力を伴う立場柄、裏で何かを行うことは容易い。
僕たちの追う毒師と繋がりがあるのが彼だった?
もしくは彼こそが毒師自……!
「うぐおおおおッ!!」
「うひゃいッ!?」
などと考えている最中、いきなり側面から何かがぶち當たってきた。
……油斷!
なんとかスェルを落とさないように踏ん張りつつ、當たりしてきた相手を確認すると。
「ここのギルドマスター!?」
まさに今、最大の容疑者として浮かんでいた人が速攻で沈んだ。
この人も幻剤でられている。まさか黒幕がそんな間抜けな狀態になるわけがない。
「じゃあどうやって僕らの予定を知ったんだ!?」
現地ギルドマスターの顎を蹴り上げつつ、ひたすら逃げを継続。
彼から報を渡されたと思っていたのに……本當に一どういうことなんだ!?
考えてもしょうがない!
ここで結論を出すには報がなすぎる、そういう時は考えるのをやめて行あるのみだ!!
ではどんな行をするのか!
かねてからの予定通り、ダンジョンに再突する!
◆
そうして追手たちを何とか振り切って、ダンジョンの口へとやってきた。
晝間からもう一度ることを決めていたんだ。位置もしっかり覚えていた……。
はずなのに……。
「り口がない!?」
何なんだもう次から次へと!?
不可解なことが起こりすぎている!
「ええッ!? ここがり口でしたよねえ!? なんでないんです!?」
スェルも記憶に間違いがないのか、しかし記憶と照合しない現実に戸い通しだ。
「私たちの記憶違いなんでしょうか!? 他にり口がないか探してみます!?」
「いや……!」
僕一人だったら不安に迷いそうだったが、スェルがいてくれるおかげでドッシリできる。
ダンジョンのり口はここにあった。
僕だけでなくスェルもそう結論付けたんなら間違いない。
その証拠に、落ち著いてまた空間を認識したらすぐわかった。
巖盤の薄皮一枚の先に、いまだ空間が続いているということが。
スェルが一緒にいてくれなかったら、慌ててしまって見過ごしてしまっていたかもな。
僕って気が小さいから。
しかし気づいたからにはもう見逃さない。
最下層の先にじた謎空間、アレをダンジョンから隔てた理由も目の前と同じものなんじゃないか?
だったらもう考える段階は終了だ。
こんな薄っぺらい巖盤こじ開ける手段が當方にはある。
むしろ問答無用でこじ開けるのことこそ僕向きの方法なんだから!
さあ行くぞ!
「『消滅』ッ!!」
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