《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》107 すべての悪の母
「『消滅』ッッ!!」
放たれる最強の力。
コイツで目の前を閉ざす壁を消し去り、隠されたダンジョンへの道を切り拓く!
……はずが。
『消滅』でえぐり取られた巖からは、ただ地層が出しただけだった。
ダンジョンへと続くなど見當たらない。
「どういうことですッ!?」
一緒にいるスェルも困する。
「よけられた……!」
「えッ?」
そもそも、本來ずっとポッカリ空いているはずのダンジョンり口に蓋でもするかのように塞がってしまうこと自おかしな話だ。
どうやってそんな現象が起こるのかもまったく解明されてない。
しかしその解明に繋がるかもしれない出來事が、この巖の向こうで起きている。
『消滅』スキルの延長で得た空間把握能力でわかる。この巖一枚先で、何もない空間が蠢いている。
「空間が、いてる……!?」
「まるで生きのように。しかしわかった以上はなおさら逃さない……!!」
そうやっていて避けるなら、よけても逃れきれないほど大きな『消滅空間』をぶつけてやるだけだ!
「この辺の地形を丸ごと消し去るつもりで極大『消滅空間』を作り出す!」
これにどう対処する?
答えはすぐさま地鳴りと共に現れた。
地面が揺れ、小石が転げ落ち、ついには亀裂が巖のそこかしこに走る。
ところで遅ればせながら、このダンジョンがある地形のことを解説しよう。
この辺りはアルデン山渓などと呼ばれているだけに山と谷がり組んだ構になっている。
地中へと降りていくダンジョンのり口は谷底にあって、地震でも起きようものなら土砂崩れも連鎖し、容易にり口が埋まってしまいそうだった。
まさに今のような狀況だ。
地響きはもはや地震となり、俺たちのいる谷底へと土埃や砂利や、落石や土砂を落とし始めている。
これでは隠れてしまったダンジョンのり口をさらに隠してしまうのではと危懼されたが、そんな心配は杞憂だった。
むしろ逆だった。
ダンジョンの口の方が土中から突出し、せり出してきたのだから。
「どういうこと!?」
姿をわにする『ダンジョンだったモノ』。
まずは顔、そして巨大な鉤爪のついた両手……いや両前足? というべきものがせり出し、次いで全が現れる。
その無茶苦茶な作のせいで谷は完全に崩壊、深い地面のくぼみを埋め盡くす勢いで崩れた巖盤が流れ込む。
「きゃああああああッッ!?」
「スェル僕に摑まれ! 出する!」
『消滅』スキルとリザベータさん仕込みの力で、スェルをお米様抱っこしながら快速で谷を駆け上がることができた。
「エピクさん一何が起こってるんですか!? 私にはまったくわかりません!!」
「ああ、僕もいまだに信じがたい……!」
結論から言って……僕たちがダンジョンだと思っていたのはダンジョンじゃなかった。
ダンジョンと誤解させるほどに巨大な生が、土中に埋もれていたんだ。
僕たちは、その生の口の中からってを探索していた。
さながらクジラの腹の中にった木人形のように……!
「そんなことありえるんですか!? 晝間にった分はダンジョン部って、ただの何の変哲もない窟だったじゃないですか!?」
「僕もそうじた……! 世の中には人知を超えることもあるんだなって思うしかない。自分のを、まるで巖の窟みたいに擬態できる巨大生もいるって……!」
そうでもなきゃ、目の前に聳え立つアイツの説明がつかない。
そう、たしかに僕たちの目の前にはいるんだ。山と見紛うほどに巨大な生きが。
何をベースとした生きなんだろう? ドラゴン? 牛? 猿?
とりあえず四足獣ベースではあるがとにかく獣とも爬蟲類ともつかない謎の形狀の生きだが、一つだけハッキリしているのは巨大であること。
山のように巨大。
これほど巨大であれば、を探索してダンジョンの中にいるつもりになってもまったくおかしくない。
「モンスター? 超巨大なモンスターってことですか!?」
「アイツが地中に埋もれていたってことだよな。そして地上に口だけ出して……それをダンジョンのり口に擬態していた……。僕たちもまんまと騙された……!!」
しかしそんなことを可能にするにはどれだけの巨大な軀が必要なんだ?
……目の前に聳え立っているレベルの巨か。
たしかに大きい。
過去に出會ってきたアンダーグラウンドドラゴンやオーバースカイドラゴン……二のエンシェントドラゴンたちより斷然大きい。
あのドラゴンたちも大概大きかったというのにソイツらすら子犬に見えるようなサイズってどれだけ大きい。
そしたらもう僕ら人間はありみたいなものじゃないか。
あまりにもサイズ差が絶すぎる。
異種族との戦いでもっともモノを言うのは格差、つまり戦っても絶的ということだ。
あの超巨獣は、渓谷をグズグズに崩しながら周囲を練り歩く。
あのサイズだからちょっとした散歩気分でも大慘事。
「エピクさん! あの大怪獣、私たちのこと見てません!?」
「しっかりターゲット認定されてるなあ……!」
それもそうか。
きっと気分よく地中で眠っていたところを無理矢理起こしたのは僕らだろうからなあ。
捻り潰したいランキングの最新一位を獲ってもおかしくないか。
あの格差じゃ逃げるなんて選択肢も不可能だろうなあ。
僕らが全力で駆け抜けた百歩……いや二百歩分がアイツの一歩だおそらく。
速度云々以前に歩幅でもうどうしようもない。
ならばあえて小ささを活かしてどこかに隠れるという手もあろう。
人に対して小さな蟲がよくやることだ。
しかし蟲が人に対して有効な手段でも、僕らにとっても見習えるとは限らない。
あの大巨獣にとってこの辺りの山渓は砂場みたいなもの。
踏めば簡単に潰れる。
そんな場所に隠れたって、山ごと踏み潰されたら生き埋めになってデッドエンドだ。
逃げようと立ち向かっても絶。
だったら立ち向かうしかない。
「行くぞ! おりゃあああああああッッ!!」
半ば破れかぶれで大巨獣へと立ち向かう。
その巨に対して、たった一つの切り札『消滅』スキルを全力解放!
「『消滅空間』最大拡大!」
いつもはできるだけ小さく絞ることに全力を挙げるのに、まったく逆のことに全力を盡くす日が來るなんて皮な話だ。
でもおかげで、大巨獣の足元を『消滅』させることに功したぞ!!
超巨大獣だが、それでも接地する足部の半分近くを消し去ることができた。
おで巨獣はバランスを崩し、前に向かって倒れ込む。
チャンスだ!
この巨が倒れたってことは、どうしても屆かなかった起死回生の攻撃ポイントが攻撃可能な間合いにってきたということ!
頭部だ!
どんなに巨大だろうと極小だろうと、頭部を破壊されて生きていられる生はいない!
今までは山の頂上みたいな位置にあってどんなに飛び跳ねても屆かなかった頭部。それが転倒した今、地面と同じ高さにある。
ヤツが勢を立て直して立ち上がる前に……!
足部から頭頂部へ……全力で走って……!
……間に合った!!
「『消滅』ッッ!!」
巨獣の頭部を丸々飲み込んでしまえるほどの『消滅空間』を展開。おで巨獣の首から上がスッパリなくなった。
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