《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》108 巨獣のはらわた

「勝った……!」

いや、本當に勝てるなんて夢にも思っていなかった。

蟻が一匹だけで、どうやって巨象を殺すことができようか。

『大男も蜂の一刺しで殺すことができる』なんて自慢気に言う人もいるが、それはあくまで針という必殺最強の武を蜂が備えているからだ。

大抵の小さな蟲はそんな兇悪武の持ちあわせなんかなく、純粋な格差で押し潰されるしかないんだから。

今回僕がたまたま勝てたのは、僕にも『消滅』スキルという蜂の一刺しに匹敵する最強武があったおかげだろう。

またこのスキルに救われた……。

本當に最強能力なんだなと改めて自覚するんだった。

「……倒したんですか……? こんな大きなモンスターを……?」

「恐らく」

この常識外れのデカブツが、頭を消し去れば死ぬという常識に収まってくれるならば。

首から上が綺麗サッパリとなくなった巨獣は大地に倒れ込み、それこそ丘と見紛う様相だ。

ピクリともかない。

この闇夜であれば、ますます地形の一部と信じて疑うものはいまい。

「この巨大モンスターが、アルデン山渓のダンジョンの正だった……ってことですよね」

「そうかな……」

こんな種類のダンジョンは他にもあるんだろうか?

いやないだろう。これが極めて特殊なケースだと思いたい。

普通にダンジョン攻略だと思ったら怪の腹の中にいたとかゾッとしすぎる。

「ダンジョンに擬態する超大型モンスター……。なくともそんなものはギルドから聞いたことがない」

「これも、この土地に潛んでいる毒師と関係があるんでしょうか?」

そこよ。

衝撃的すぎて頭から飛んでいたが、大元の問題はこの衝撃展開と何の関わりがあるかいまだ判然としていない。

薬によって作された人々。

毒を含めた薬のエキスパートでなければ仕掛けられないこの手が使われたことからも、この地この街で毒師が暗躍していることは間違いない。

しかしこの超巨大獣は、一人か二人の毒師でプロデュースされるにはあまりにも大がかりだ。

「……幻された街の人たちは、追ってこないな」

「幻のせいで思考能力も落ちていますから。一旦まいてしまえば再発見できるだけの考えが及ばないんでしょう。……それに時間的にも、そろそろ効き目が切れてくるころです」

「そうか……」

よかった。

人の思考能力を奪っていう通りにさせるなんて言うメチャクチャな薬だが、その分実用を損なう何かがあるものだよな。

何事も上手くはいかないのが世の常で、だからこそ安心できることもある。

「じゃあ、今は目の前の謎に集中できるな」

「この巨大モンスターですか? まだ調べることでも?」

隨分怖い思いをしたんだろう『もう近づきたくもない』という気分をバチバチ出すスェルに僕は、非の決斷を伝える。

「この巨獣のる」

「ええええええええええええええええッッ!?」

やっぱり拒否反応を示された。

しかしなあ、すべての謎はまだコイツの中で息づいているとしか思えないんだよ、これが。

僕たちはそもそもダンジョンを目指していた。

晝間、存在を確認したダンジョン最奧部のさらに先にある謎空間。

そこにこそすべての謎を明らかにする答えがあると何度も確認してきた。

そしてこのダンジョンの正は超巨大モンスターだと新事実が発覚したことで認識が変わったが、すべての答えがコイツの腹の中にあるって事実は変わらない。

「だからコイツのってたしかめる。晝間ダンジョンとして一回ったんだ。二回目も同じさ」

「そうかもしれませんけれど!! でも、わかってみれば怖い話ってあるじゃないですか!!」

そうだよなあ。

地中のと怪の腹の中じゃ怖さも段違いだ。

おどろおどろしいじもするし僕だってできるなら立ちりたくない。

しかし真実はコイツの腹の中にしかないんだ。

こういうのなんて言うんだっけ、虎らずんば虎子を得ず?

しかし本當に怪の口の中にろうとするヤツは僕の他にいただろうか?

「ごめん、本當はスェルには外で待っててもらいたいんだけどこの狀況だ。別行にするのは怪の腹の中以上に怖いんだ。僕が必ず守ると約束するから一緒に來てくれないか?」

「…………!!」

スェルは、なんとも言えないい表を引き結ぶと、一旦僕に抱き著いてきた。

「エピクさんの行くところならどこでも安心できます! 一緒に行きましょう!」

ありがとう。

では侵のためにり口を探すべきところだが、ここは堂々と玄関からろう。

ダンジョン擬態時、このモンスターは口から侵者を迎えれていた。

ならば口からるのが正式な経路なんだろう。

既に息の止めるため、頭丸ごと『消滅』させたから當然口だってない。

しかし『消滅』させた斷面から食道の出しているため、そこから侵は容易と思われた。

「不思議だな……の一滴もこぼれていない」

『消滅』スキルによる斷面は、どんな名刀で斬り落としたよりも綺麗なものだがそれでも管破れば出するもの。

こんな超巨大獣が出でもすれば地面に真紅の川ができてもおかしくないというのに。

『消滅』された怪の首の斷面は、切り株か何かのようだった。

「よし……ここからるぞ……!」

「エピクさん絶対離れないでくださいね!!」

スェルは僕の背中に手をり付けて、死んでも離さぬ心構え。

しかししてみたらすぐに張も解けた。

はやっぱり、巖ゴツゴツした窟そのものだったから。

生命なんて何もない。

試しに壁(腸壁?)を毆りつけてみたが、普通にかった。拳が痛い。

を知った今でも、ここが怪の腹の中なんて思えない。

「ダンジョンの道順も晝間ったのとそっくり同じだし……。何が何だかわからない……!」

「私、頭おかしくなりそうです……!」

ここは無機側なのか? それとも有機側なのか?

たしかに考えれば考えるほど脳みそが発してしまいそうだった。

とにかく考えたらダメだと思って足早に先へ進む。

そして辿りついた最下層。

前回の探索時問題を殘した部分に今、再度到著。

「やっぱりありますねえ……!」

「うん、ある……!」

僕は空間認識能力で、スェルは薬草の生命力をじることで。行き止まりのはずのこの壁の向こうにある広大な空間を察知できる。

「あの巨大生の外観から目算するに……、ここはまだ胃を出てすぐってところだろう。まだまだ続いててしかるべきだし、実際にあるのも間違いない」

「終點は……考えたくないです」

相変わらずスェルの顔が悪かった。

の気分のためにも、一刻も早く用事を済ませてここから去ろう。

そのためにも……長く問題になっていたこの謎の領域へ……。

踏み込む!

「『消滅』ッ!!」

閉ざしていたカムフラージュの壁が消え去った。

そして見えたものは……!!

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