《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》111 毒師の供述2

「私を捕まえると? そして裁きにかけて処刑臺へ送ると?」

「それくらい言わなくてもわかるだろう。わかっているからこんなところに引きこもってるんだろ?」

わざわざ大聖教會に取りって、自分の死まで偽裝するぐらいだしな。

「お前の話はまだまだ腑に落ちないところが多い。この巨大な怪は大聖教會から與えられたって言っていたよな?」

「いかにもそうだが、何か納得がいかないかな?」

そりゃあいかんだろう。

大聖教會といえどもただの人間の集団だ。そんな連中が大怪獣などどこから提供する。

エキドナと呼ばれた、この萬能製造能力付き大怪獣は明らかに人知を超えた存在だ。

「別におかしくもないだろう。大聖教會は、全能なる大聖神を崇め奉る集団。祈りを捧げし信徒のために、神が助けを遣わしたってしもおかしくはない」

「おかしーだろ」

こんな方向が明後日を向いた神の助けとか。

正直これをもって教會への非難を鳴らしてもまともに取り合ってもらえるかどうか自信がなくなるぐらいだ。

「だからお前からより詳しい聴取をしておきたい。特に、お前がどうやって教會側から依頼をけて毒を作り、渡したのか? ってところを」

どういう経路で、作った毒が教會関係者の手に渡り、標的の口の中にっていったのか。

お前ならば詳しいを知っているので聞かせてもらいたい。

「教會からの依頼は、このエキドナを通じて屆けられる。彼らの神が遣わした生きだからね、距離があろうと神の聖なる意志を屆けてくれるんだそうだ」

便利だな。

「教會はそりゃもう、毒の効果を細かく注文してくるんだよ。アイツらがむのはあくまで天罰と見せかけて飲ませた相手を殺すことだからね。一般的な薬師にとっては困った客だろうが、しかし私としては腕が鳴る。この私の天才的技と、エキドナの腹の中という最高環境が最大限に活かされる機會なんだから!」

教會は、天罰に見せかけるために毒を使っているというのは僕にも大いに心當たりがあった。

デメテールの民に対してもそうだったし、大聖教會によって謀殺されたことが明らかになった前の王様……。

彼の死に方はあからさまに異常で、だからこそ最初は『メドゥーサ様からの神罰』が噂された。

しかしその実態は、このロドリンゲデスが調合した毒によるものだった。

毒による効能であるならば……、あの異様な死にざまもそこまで不可思議ではない……かな?

「あのアホ國王を殺した毒かい? アレはよかったろう私にとっても自信作なんだよ! 王都に住む薬師たちも天罰だと信じて疑わなかったろう?」

「う、それは……!?」

まんまと騙された覚えのある薬師スェルは怯んだ。

「アレは私が開発したまったく新しい毒薬なのだよ! 新発明で同じものは私の手の外にはない! だからこそ同業ですら毒の仕業だと見抜けなかった! 凄いと思わないかね!? それもまあ、このエキドナ薬草園があってこそなのだけれどね!」

なんか変な名前つけだした。

「このエキドナ薬草園には、あらゆる地域のすべての薬草が揃っている。これだけ多種類の薬草を惜しみなくふんだんに使用できるのはここだけだ。普通なら資材が追い付かなくてできないような実験も何回だって行えたよ。様々な調合を試すこともできる。おかげでいまだに見つかっていない、まったく新しい効能を持つ組み合わせを、いくつも見つけ出すことができた」

「王様を殺した毒も、そうやって開発したってことか?」

ナントカに刃という言葉が鮮明に浮かんでくる。

この場所はあの毒使いにとって、本當に何の制限もなく好きなことができるオモチャ箱なんだろう。

本來であれば世界中のあちこちにある薬草を採取して取り寄せるだけでもメチャクチャな人的資源と費用が掛かる。

そうして手にれた薬草は貴重で、とても気軽な使い方なんてできない。

それが、どんな貴重な薬草でもその辺に生えているエキドナ薬草園では可能なわけだ。

誰もがやらないアホみたいな組み合わせでも気軽にやれる。

そしてその中には誰もが予想できなかった驚くべき結果を弾き出すことがあるかもしれない。

そうしてこの異端の毒師は、持ち前の貪な探求心からすべてを試したに違いないんだ。

「なんて羨ましい……!」

「え? スェル?」

「いや何でもないです!! アナタ、実験なんて簡単に言いますけれど薬材さえ揃えばできるってほど簡単な話でもないはずです! 効果をたしかめるには実際に生きている何かに投與して、経過を観察しないといけない! 被検は一どこから用意したんです!?」

と鋭く問い詰めれば毒師は肩をすくめ……。

「人実験した……とでも言いたいのかい? 私が毒を使うからってどんな悪事にも手を染めていると?」

「ち、違うんですか!?」

「エキドナの素晴らしい能力は説明しただろう? 彼は何でも生み出してくれる。キミたちがり口辺りで倒したモンスターなどもね、彼らは被検としては充分な役割を果たしてくれたよ」

「はッ!?」

よかった……。

どうやら、毒の実験になった人はいなかったようだ。

「もちろん最後には街の人間に投與して効き目をたしかめたがね」

「ちょっと!?」

「人に飲ませることを目的としているんだから、人への効果を確認しない限り完とは言えないだろう? 元々、この近くに街を作ったのはそのためでもあるのだからね」

何?

それは、アルデン山渓のダンジョンに付隨する街のことか。

そう言えばあの街の人々がいきなりゾンビのようになって僕たちのことを取り囲んできたのは記憶に新しい。

あれはそういう風な効果を持たされた幻剤の仕業だと聞いたが。

剤に毒師。

実にマリアージュな組み合わせ……!

「有効利用というヤツさ。この深淵に寄り付く愚かなハエどものね」

有効利用?

なんだそのあからさまに気分の悪い字面の単語は?

「そもそも何故ここに教會蔵の大魔獣が巣食っていたか……わかるかね?」

たしかに言われれば……!?

ここには元々アルデン山渓ダンジョンがあったはず。

「大魔獣は、それを押しのけてダンジョンに擬態していたのか?」

「違う違うよ違うとも……! ここには元々何もなかった。そこへエキドナが潛伏することでダンジョンができたんだ」

エキドナがそもそもの始まりだと……!?

「大聖教會は、神よりこの大魔獣を授かった。あらゆる生命を無限に生み出すという特を有効活用するために連中は、王都に近場で目立ちにくいこの場所に隠匿することにしたのだ」

「そうして大魔獣を地中深くに埋め、ダンジョンに見せかけたと?」

「完璧に隠すのは卻って発見のリスクを生むものだよ。何もないはずの場所に人の出りがあれば、そりゃ怪しまれるのも必然だ。しかし小規模ながらもダンジョンのていを取っていれば、僅かであろうと人の流れは生まれる。そこに紛れてしまえば怪しまれるのも避けられる。教會の連中もない知恵を絞ったものだ……!」

どこか嘲るような口調のロドリンゲデス。

「じゃあアルデン山渓のダンジョンは最初から大魔獣が擬態したもので、教會の手のにあったと……!」

「そんな、ここのダンジョンは発見されてから五十年近くは経ってるって聞きました。そんなに昔からの謀だったってことなんですか?」

さらに言えばそんなに昔から、大聖教會は毒を使って暗躍を……!?

しかし毒師ロドリンゲデスはさらなる嘲笑を浮かべて……。

「いやいや、私だって不老不死ではない。この大魔獣は私以前にも何人かが代替わりしながら管理していたようだが、私ほどに使いこなせたものは過去いなかったようだ。ずっと寶の持ち腐れになっていた」

この男が現れるまでは。

「私が死を偽裝されて大聖教會に匿われてから、この場所は真に始まった。潤沢な資材、枯れかけダンジョンに群がるくたびれた人間どもを実験材料に、私の研究は飛躍的に進んだ! 今やもう、私の作り上げた毒薬にできないことはない! 毒で世界を支配することも可能なのだ!!」

たけだけしく笑うロドリンゲデスさんだが、忘れていないか?

お前は完璧に追い詰められているって。

なんか大それたことを口走っていたが、お前がどんな野を抱えていたとしてもお前は終わりだ。

僕たちがお前を叩き潰すんだから。

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