《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》118 最後の反撃

僕……エピクの仕事は終了したと言っていいのか?

そもそも今回の行の目的は、大聖教會が隠した毒師を見つけ出すことだったので、他でもない毒師ロドリンゲデスを発見、生かして捕縛までやったところで要件は百パーセント満たしていると言ってよかろう。

「エピクくん、よくやってくれた」

ブランセイウス様もホクホク顔で僕のことをねぎらってくれた。

王城の謁見の間で、既にもう王のあるべき玉座に座り、その隣の席にティターニア様まで座らせている。

「あの毒師は現在、牢獄で聴取を進めさせている。思った以上に簡単で、尋問するまでもなく自分からペラペラと喋りたてているそうだ」

「ロドリンゲデスは、ただ自分を天才だと思っているだけの自己者だと薬師協會の資料にはありました。大聖教會への義理もなく、ただ死刑を回避する可能が一ミリでもあるなら何でも喋ると思います」

スェルが補足するように言う。

も今回の騒に関わった一人として、前にて事を聴かれる役割を擔っていた。

それはそれとして……。

「あなたがエピクちゃんのお嫁さん? 可いお顔ねー」

「はい?」

ティターニア様がスェルに興味津々だ。

「エピクちゃんのお嫁さんってことは私の義理の娘なんでしょう? 生んでないのに子どもになるって人間のしきたりは不思議ね。でもこんな可い子なら、娘になっても全然オッケーよ!」

「何ですこの人? エピクさん!? 一何がどういう理屈で? ちょっと待ってうひゃわわわわわわわわ……!」

僕の出生のこととか新たに判明した事実はまだスェルには伝えていなかった。

いや僕自がまだけ止め切れてなくて。

問題を先送りしていたともいう。

しかしながら、婚約者としてスェルににしておくわけにもいかないので、いつかは話さなきゃいけないことだったんだろうなあ、と思う。

ティターニアさんが代わりに説明してくれるならそれでもいいか……。

「とにかくあの毒師は、大聖教會との繋がりまで包み隠さず話してくれる。ヤツらが自分を擁護してくれるなんて微塵もあり得ぬと思っているようだ。だからヤツらを売ることで恩赦や減刑を狙っているのだな」

「司法取引ですか? 応じるってこと?」

「まさか、彼が犯した罪は王を毒殺したこと。この國でもっとも重い罪だ。極刑以外にあり得ない」

ですよね。

あー、よかった。あの毒バラマキ男がこの先も生き延びて、萬が一でも再び自由になる可能が殘っているなんて嫌すぎるもの。

「とりあえず恩赦をチラつかせて喋らせるだけ喋らせたあと、それでも極刑は揺るがないと思い知らせて絶させてやるさ。あの毒師については、それで決著だ」

「執行の際には是非、薬師協會からも立ち合いを!!」

組織として言うことを躊躇わないスェル。

「ここからの問題は、大聖教會をどう料理するかだな。攻め手の材料はあの毒師が充分すぎるほど提供してくれた。ヤツと大聖教會の繋がりは立証可能だし、前王たる我が兄の毒殺を指示したのがヤツらであることをハッキリさせれば國教であることの撤回どころか教にまで追い込むこともできる」

何しろ王様の暗殺ですからね。

組織丸ごと吹っ飛ぶレベルの大罪であることを理解してほしかった。

「ブランセイウス様……、途中で手打ちにするなんてことは……」

「絶対にしない。私だってああいう連中に手を緩めれば、禍を殘すことにしかならないと重々承知している」

さすが約束された名君ブランセイウス様。

『一度やり始めたら中途半端に止めてはならない』ということをキッチリ心得ていた。

それは僕が薬師協會長さんから教えてもらった心得その二十三ぐらいのヤツだった。

知者は同じ道を進む。

「だがだからこそ行は慎重に……かつ迅速に行わなければならない。追いつめられた者は何をしてくるかわからないものだ。ここで何もしなければ死ぬだけとわかっているからこそ、これまでやってこなかったどんな汚い手だって使ってくる」

大聖教會のヤツらが汚いことをするかどうかなんて今さらだが、あとがなくなった今さらに汚い手段だって躊躇わずに使ってくるってことだろう。

正邪の問題だけじゃない、リスクの問題でも。

やらなきゃ死ぬとわかっていれば、多のダメージは覚悟の上でどんな暴な手を使ってくるかわからない。

最悪、相打ち覚悟という展開にもなりかねない。

注意はしていて無駄になるということはなかろう。

「今、法務に命じて毒師から聴取した容をまとめさせている。大聖教會の罪狀に関することを選りすぐってな。様式が整い次第、すぐさま教會への糾弾を開始するつもりだ。雑にならない範囲での最大速度で」

「先にき、相手に主導権を與えないってことですね。常に自分が狀況を引っ張り続けることが勝利の鉄則だって薬師協會長さんも言ってました!」

「ううむ、そうか……!」

どうしたんだろうブランセイウス様は、薬師協會長さんの話が出るとどうも歯切れが悪くなるな?

取ってもいい人なのに。ブランセイウス様も會えばすぐさま意気投合すると思うんだけど?

とにかくブランセイウス様は、この王國に長いこと巣食っていた病巣を排除せんと、手も足も緩めるきはないようだった。

さすが名君。

しかし……。

「ご報告申し上げます!!」

うわ誰か來た。

なりからして王様の側仕えか何かか。

「ただ今、城下で大規模な集會が催されております! 凄まじい勢いで人が集まっており、憲も抑えきれるかどうか不安だと報せが……!」

「集會だと? 今日集會が催されるなどという報告はけていないが?」

集會を行うのには上に許可を貰わないといけません。

「どうやら無許可の集會のようです。王都の役所も何の話も通っておらず困を極めていると……」

「まあ、あのようなことが起こったばかりでもあるしな……。民が不安がるのもわかるが……」

大魔獣エキドナが王都に接近して翌朝のことだからな……。

「しかし陛下、問題はもっと別のところにありまして……!」

「これ以上なんだ? 報告は簡潔に済ませよ」

「その集會の主催者は、大聖教會なのです。より正確には大聖イリエリヒルト様が発起人なのです」

大聖イリエリヒルトは、集會など引き起こして何を狙っているのか?

既に王都の大通りには鈴なりの群衆が出來上がっていた。

王都でもっとも人通りの多い場所だそうな。そういうところを狙って人を集めようとするとはこの期に及んでも大聖は抜け目がない。

「こたびの災厄はすべて、新王となるブランセイウスの仕業です!!」

多くの聴衆の前でイリエリヒルトは聲を張り上げていた。

「ブランセイウスこそすべての元兇! この國を崩壊に追い込もうとする悪魔の使者です! 賢君などという噂はデタラメにすぎません! 騙されてはいけません!」

聲を張り上げ、地平の彼方まで聞こえんばかりに喚き散らす大聖

しかしその聲質はしく、どんなにがなり立てても通りすがる人々の足を止める魅力を伴っていた。

やはり大聖までのし上がった、何気ない振舞いにすら稀有なる資質を含ませている。

「昨夜、王都の目と鼻の先まで迫ってきた大魔獣は、ブランセイウスが呼び込んだものです! あの男は王都を壊滅させんがために悪魔と手を結んだのです! さらには毒師を雇い、前王を殺したのもあの方! ブランセイウスこそこの國に災いをもたらし、すべての人々を不幸にせんとする邪悪なのです! あんな男が王になれば、この國は地獄へと変わりましょう!」

……。

何を言ってるんだあのは?

「さあ民よ! 立ち上がるのです! 今こそ皆の力を合わせて暴君ブランセイウスを倒すのです! 安心なさい、その先頭にはこの大聖イリエリヒルトが立ちましょう! アナタたちの聖なる戦いを、神は認めてくださいます!!」

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