《視えるのに祓えない、九條尚久の心霊調査事務所》私の過去
井戸田さんは仕事があるとの事でそこから去り、私と九條さんは持ち込んだたちの片付けに取り掛かっていた。
それを終えたら、今回の件は全て解決だ。
病院の時とはまた違い、今回は溫かな気持ちになれる終わりだった。
「……また泣いてるんですか」
私の赤くなった目を見て、九條さんがやや呆れたように言う。私は目をりながら反論した。
「私はられた経験から、あの人の気持ちがシンクロしやすいんです、だからです!」
「あなたの場合られなくてもそのように鼻水垂らしてそうですけど」
「え、鼻水!?」
「冗談です」
九條さんはそう言いながら座り込み、モニターの配線を外していた。私は口を尖らせながら、沢山の長いコードをまとめていく。
しかしすぐに、自分の顔が綻ぶのが分かる。
「でも本當にしました……最初はその姿に怖がってたけど全然怖い霊じゃなかったですね。自分の子供に會いたいだけだったなんて」
「……母のとは、何にも負けないほど偉大ですね」
九條さんの言葉を聞いて、ふと顔を上げた。彼はこちらをじっと見ていた。
それは私をどこか咎めているようなまっすぐな視線で、つい言葉をなくす。
……そう、そうだよ。
彼の言いたい事は、私も分かっている。
霊にられた時シンクロした気持ちは今でも心に殘っている。あれほど、母のは強い。私の想像以上に。
子を強く強く思い、している。
「……反省しました」
私は苦笑する。
「今回の件も……病院のすずさんの件も……。
生きたくても生きられない人がいるのに、私も母から沢山のを貰って生きてきたくせに、安易にそれを捨てようとして。
なんて自分が愚かだったんだろうと、今は本當に思います」
九條さんを見て言った。彼は無表のままじっと私を見つめていた。
確かにあの頃、本當に辛かった。もう何もかもいらなくなって、全てを終わりにしようと思っていた。
今だってそれを乗り越えられたかは分からない。でも、捨てるのは間違っているのだと言う事だけは分かる。
前を向かなくてはならない。自分のためにも、お母さんのためにも。
私は手に持っていたコードを置き、改めて九條さんに向き直る。
「あの、九條さん、私……」
「あなたをそこまで追い詰めたのは、果たして何だったんですか」
彼は私の言葉に被せてそう言った。真剣な目でこちらを見ている。
……そうだった。
九條さんの元で働くと決めた時には、話を聞いてくれますかと言ったのは私だった。
彼はその約束を覚えてくれていたんだろうか。
手に持ったコードを握りしめて、私は俯いた。
「……半年前……母を亡くしました」
私の聲が部屋に響く。家も何もないここには、私と九條さん二人だけの世界に思えた。
「心筋梗塞で、職場で倒れて。そのまま意識を戻すこともなく亡くなりました」
「……そうでしたか」
「母一人子一人の生活で、母は唯一の理解者でした」
「お父様は」
私は小さく首を振る。
「い頃に離婚しました。それから一度も會うことなく、母の葬儀で會ったくらいです。妹も父に引き取られました。妹は時々母と3人食事をしたりしてましたが……」
「妹さんもいらっしゃったのですね」
「……離婚の原因も、私なんです……」
私はどこを見るでもなくぼんやりしながら思い出していた。
生まれつき見えざるものが視えていた私は、言葉が話せるようになった頃からそれを周りに話していた。
自分が見えているものが他者には見えてないなんて知らなかったから。
両親は初めは子供によくある遊びの一種だと笑っていた。
だが回數を重ねるごとに、そして子供が話すにしてはやけに生々しい容に徐々に不審がるようになった。
通事故があった現場で塗れのを見る。
病院で足のない男を見る。
やがて両親は私を病院へ連れて行った。脳の異常や視力の異常がないか、事細かに調べられた。
無論私のに異常は見られなかった。それでも、県を越え大きな病院へ手當たり次第通い調べ続けられた。
やがて有名な病院は行き盡くし、ついには神科に通い出す羽目に。
その頃になると、母は私の能力について見方を変え、お寺などに相談した方がいいのではないかと父に言った。見えざるものが視える能力ならば、それを抑える方法があるかもしれないと。
普段から非科學的な事は信じず頑固だった父は母を非難した。「お前まで頭がおかしくなったのか」と。
そして父には叱られた。「もう噓をつくんじゃない」と。
両親は意見が割れ喧嘩する事が増えた。二人が和解する事はなかった。
そこまで來て初めて、自分がみえるものは普通ではないと思い知ったのだ。そして決して人に話してはいけない事なのだと。
後悔した時にはもう遅かった。両親は離婚が決まった。
私を引き取るのは無論母。母は妹も引き取りたがったが、父の「頭のおかしい二人に妹は任せられない」という言葉に項垂れ諦めた。
そして、私と母二人の生活になった。
ヤメロ【完】
他人との不必要な関わりや人混みが苦手ということもあり、俺はアウトドア全般が昔から好きではなかった。 そんな俺の唯一の趣味といえば、自宅でのんびりとホラー映畫を鑑賞すること。 いくら趣味だとはいえ、やはり人が密集する映畫館には行きたくはない。それぐらい、外に出るのが好きではなかったりする。 だが、ある映畫と偶然出會ったことでそんな日常にも変化が訪れた。 その映畫の魅力にすっかりとハマッてしまった俺は、今では新作が出る度に映畫館へと足繁く通っている。 その名も『スナッフフィルム』 一部では、【本當の殺人映像】だなんて噂もある。 そんな噂をされる程に上手く出來たPOV方式のこの映畫は、これまで観てきたホラー映畫の中でも一番臨場感があり、俺に最高の刺激とエンタメを與えてくれるのだ。 そして今日も俺は、『スナッフフィルム』を観る為に映畫館の扉を開くーー。 ↓YouTubeにて、朗読中 https://m.youtube.com/channel/UCWypoBYNIICXZdBmfZHNe6Q/playlists ※ 表紙はフリーアイコンを使用しています 2020年4月27日 執筆完結作品
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