《視えるのに祓えない、九條尚久の心霊調査事務所》悪意のない姿
「……これは……異様ですね……」
九條さんがポツリと呟く。
「ど、どうしますか、部屋にりますか?」
隣の九條さんに尋ねる。彼はじっと考えるように畫面を見ながら答えた。
「巖田さんには申し訳ないですがこのまま観察しましょう。娘が何か行を起こすかもしれない」
私は畫面を見る。未だかないリナちゃんは母親を見さげている。
「や、やっぱりリナちゃんに何か憑いてるんでしょうか……!」
「……その割には、私も黒島さんも彼に不穏なは何もじませんでした。私たち二人とも察知出來ないような相手では、解決は難しくなります。こんな事は初めてです」
珍しく九條さんもし困ったように頭を掻いた。
確かに、どんな相手か分からないのではその霊の気持ちも理解できるはずがない。私たちのやり方は通用しなくなる。
九條さんは腕を組んで呟く。
「そうなればやはり除霊か……? 除霊して様子をみるか……」
リナちゃんはずっと制を変えない。巖田さんはずっと唸っている。
悪寒が走りそうなほど異様な景は、それから20分間続いた。リナちゃんはその間、全くかなかった。
私と九條さんは言葉を発する事もなく、ただ異常なと苦しむ母親を見続けた。
そしてついに。
「……あ、うめき聲が止んだ……?」
スピーカーから絶えず聞こえてきた巖田さんの聲がピタリと聞こえなくなった。隣の九條さんも頷く。
「も自由が効くようですね、足がきました」
長い金縛りはようやく終えたようだった。それと同時に、リナちゃんは垂れていた頭を持ち上げ、靜かにベッドへ潛り込んでいく。
まるで何事もなかったかのように再び橫になろうとするリナちゃんの背後に、一瞬何かが見えた。
「……あ!」
聲をらしたのは私だけではなく、九條さんもだった。彼も気づいたらしい。
リナちゃんに重なるようにほんの一瞬だけだが、私はその姿をとらえた。
「黒島さん、見えましたか?」
九條さんは霊そのものは黒いシルエットでしか判別出來ない。霊の姿形をハッキリ認識出來るのは私の特なのだ。
「……あれ、は……」
私が話そうとした時、畫面の中の巖田さんが飛び起きた。ようやく現実へ戻ってこれたらしい。苦しそうに肩で息をしている。
そしてすぐに、隣で眠る娘を見て抱きしめた。相変わらずリナちゃんは反応はない。母親の背に腕を回す事すらしないのだ。
巖田さんはしばらくリナちゃんを抱きしめたあと、こちらを見た。カメラの存在を確かめているようだった。
し迷った素振りを見せたが結局は彼は再び橫になった。恐らく、私たちの元に來て何が映っていたか聞きたいが、リナちゃんがいるので明日にしようと思ったのだろう。
真っ直ぐ天井を見て臥床しているリナちゃんに寄り添うように、巖田さんは布団に潛り込む。
「……著を著たでした……多分、現代の人ではありません……」
私がポツリと言う。
「私あまりこう、昔の人の霊って見たことなかったです。真っ白な著を著てました、顔はハッキリは見えなかったけれど……」
「、ですか……」
「……でも不思議なんです。
あのの人、全然恐ろしいものに見えない」
素直な想をぶつけた。一瞬見えたは、まるで悪しきものに思えない。むしろどこか優しさと神々しさをじるほどの存在。
九條さんは頷いた。
「私もそうじました。悪いものには見えない。ただ、どこかこう……怒りを滲ませているようには思いましたけど」
「何でしょうこの違和?リナちゃんをあんな風にする霊が悪いものに見えないなんて?無害な霊がリナちゃんをあんな狀態にするはずがないですよね?」
「…………」
「何で?リナちゃん、何であんな事になってるの……?」
いっそ悪霊と呼ばれるものが憑いていたら。怒りや苦しみで我を失っている程の悲しい霊が憑いていたら。それなら、全て繋がる気がするのに。
どうしてもさっきの著のが、悪い事をしてるようには見えなかった。彼は悪しきものじゃあない。それは私と九條さんの意見だ。
だがしかし、リナちゃん自は恐怖そのもの。あんな異常な子供は見た事がないし、普通じゃないことは明白なのだ。
「……無駄かもしれませんが、明日巖田リナにもう一度話を聞いて見ましょう。今回の件は彼が鍵になる」
九條さんは、畫面の中の二人を鋭く見つめてそう言った。
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