《視えるのに祓えない、九條尚久の心霊調査事務所》生徒會室

「一旦控え室に戻って休息を挾みますか。気がつけばもう日付がかわりました」

「え、もうそんな時間でした?」

九條さんがポケットから攜帯を取り出して私に見せる。確かに、數字は零時を回っていた。

攜帯も持っていないし、腕時計というものも付けていないので時間の把握ができない。給料ったし、どちらか手にれようか。

隣であくびする聲が聞こえた。

「今朝早く起きてしまったので眠いです、晝寢もしてませんし。ゲームって怖いですね」

「ああ、あの……」

子供向けの験ゲームね。

そう言おうとして口をつぐむ。いや別に言ってやってもいいけど、なんとなく本人には黙っておいてあげようという心が働いた。

「朝方になれば撮影機材の回収もありますし……休憩してもう一度散策したあとは仮眠をとりましょうか、力が持ちません」

「あの、もし寢るとしたらどこで寢ます?」

「控え室の椅子でも機でも並べるか、ああ、それが嫌ならさんは保健室でも」

「絶対いや」

即答した。保健室って。夜中に保健室で一人寢るって! 冗談じゃない!

私はううんと唸りながら反省する。

「こうなれば簡易的な布団か布も準備がいりますね……もうキャリーケースパンパンなんですけど」

「あれ以上荷増やす気ですか、は大変ですね」

「手ぶらの九條さんが変なんです」

呆れながら話して足をすすめている時、突然九條さんがはっとしたような顔つきになった。同時に、彼の足が止まる。

私も釣られて足を止めた。九條さんはゆっくりと、すぐ隣にある部屋を見た。

その迫した顔に一気に不安が押し寄せる。私も恐る恐る、彼が見る方へ視線を向けた。

『生徒會室』

プレートには、そう書かれていた。

「く、くじょ」

「しっ」

聲をかけた私に、彼は人差し指を立てて止める。ぐっと言葉を飲み込んだ。九條さんの特技は霊の聲を聞くこと。私には聞こえない何かが響いてきたとみて間違いない。

彼はゆっくり扉の前に移する。教室は引き戸だが、そこは押すタイプのドアだった。九條さんは無言でドアノブを握る。

私はそれを背後から眺め、張と恐怖で大きく鳴り響く心臓をなんとか抑えようと努力する。

ドアノブがゆっくり下げられた。

ぐっと力をれてそれを押した九條さんだったが、ドアはわずかに揺れるも開きはしなかった。九條さんはしだけ首を傾げる。

鍵がかかっているんだろうか。

彼は無言で再びドアを押した。その時、一瞬だがドアがわずかに開いたのを私は見逃さなかった。

鍵がかかっているわけではない。ドアが、開かないんだ。

この扉の一枚向こうで、誰かがドアノブを握って押さえている場面を想像してゾッとする。でも首吊りの霊が、そんなことをするだろうか。例えばふざけて侵した生徒たちが隠れているとか、そういう展開だったらいいのに。いやそうであってほしい。

何も言わず、九條さんはドアノブを握り直した。今までよりさらに力を込めるように、もう片方の手を壁に置く。

九條さんの背後にいた私は、何となくしゃがみ込んでドアの近くに顔を寄せた。さっきみたいにし開いた瞬間、中が見えるかもしれないと思ったのだ。

ごくりと唾を飲み込み、瞬きもしないようにじっと白いドアを見つめる。

九條さんが力を込めてその戸を押した瞬間、とうとうそれが十センチほど開かれた。無理矢理こじ開けたじなんだろう。

私は素早くその隙間から中を覗き込んだ瞬間、息が止まった。

九條さんはさらに力をれてドアを押した。

ずっ ずっ ずっ

ほんのしずつ、ドアが押されていく。それと同時に、何か重いものが引きずられるような音が響いた。

廊下のが中にれ、中にあるものがさらに鮮明に見えた。

長いロングヘア、俯いた顔。紺のスカートに力なく落ちている腕。至近距離に、ドアにもたれかかって俯いているがいる。あまりの景に、私は直してぶことすら忘れた。

その白く細い首にはロープが巻きつけてあり、部屋の中のドアノブへと繋がっていたのだ。

「あなたは何を」

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