《視えるのに祓えない、九條尚久の心霊調査事務所》考察

とりあえずその甘味を口にれ、私は思いついたことを言ってみる。

「制服を著ているけど実はここの生徒じゃないとかですかね? 例えばここにりたくてしょうがなかった中學生とか!」

「いい視點です」

九條さんがしだけ口角を釣り上げた。初めて考察で褒められた! 私は素直に激する。

「制服を著ているからと言ってここの生徒とは限らない。思い込みを排除するのは大切なことです。霊がにつけて現れるものは、死ぬ時その格好だった、もしくは著たいと強く願っていた、というパターンもありますからね。

ただ、友人がいないからと自殺するほど絶している者が、死後制服を著て現れるほどこの學校に未練があるというのはどうも矛盾をじますが……」

「まあ、確かに……」

友達がいないことで悩んで自殺する。でも高校には凄くりたかった! ……確かに、なんだか納得しないなあ。普通、高校にったら友達ができるかもしれないと夢をみるものだろうし。

九條さんはさらに悩むように呟く。

「それに、首吊りと一言で言ってもバリエーションに富んでいるのもはやり気になる……」

「ですね……」

「結局謎は殘っています。これはやはり本人にあって聞くしかないでしょうね。今夜は一晩中探しますよ、さん覚悟しておいてください」

「ひぇ」

「あちらもどうやら私たちにアピールしてきていますし、結構簡単に遭遇できるかもしれませんよ」

「が、頑張ります……」

項垂れて返事する私を不憫そうに伊藤さんが見ている。いいえ、私の仕事だからいいんです。寢不足も慣れてきました。

それより、と、目の前のパソコンをみる。

友達がなかなかできなくて悩み、毎日が悲しい気持ちは実はよくわかる。私だって、まるで友達がいなかったからだ。

私の場合理由もよくわかっているし、自分から人を遠ざけたりすることもあったから致し方ないとは思っている。それでも、友達同士で楽しそうに笑う周りの子をみると悲しくて堪らなかった。

私も普通の生活がしたい。一人でも、友達がいれば全然変わるのに。

そう悩み抜いた學生時代、今もあまりいい思い出はない。

もう二度とは戻れない青春という時間は、取り返しがつかない。

話題を変えるように、九條さんが言った。

「そういえば、先ほど昨日きた澤井さんがまた來ました」

「……え?」

昨日首吊りの証言をしてくれた澤井さん。私とは無縁のキラキラグループにいそうな可らしい子だが、果たして今日はなんのためにきたのだろうか。

伊藤さんがバトンタッチするように答えた。

「なんか他にも首吊りの目撃者がいたらしくて連れてきてくれたみたいだったよ!」

「ああ、そういいえば昨日もそう言ってましたね……」

「まあ、あれは僕たちに協力したかったっていうか、完全に……」

伊藤さんは無言で九條さんを見た。ハムスターみたいにポリポリポッキーを食べている彼を見て、ああと理解する。

澤井さん、九條さん目當てできたのね。まあ、昨日もそんなじだったけど。

當の本人は私たちの視線にまるで気づいていないようで平然と言う。

「証言は今までのものと大差なかったですね、夕方にある教室の真ん中で首吊りを発見、髪の長い生徒の後ろ姿。新しい報はありませんでした」

「そうでしたか」

「とりあえず生徒たちがいなくなるまではしっかり休息をとりましょう。夜は長いですよ」

そう言ってペットボトルの水を飲む彼を見て、私は無言でキャリーケースの中から九條さん用の著替えを取り出す。それを差し出した。

九條さんは黙って目の前の白い服を見ている。

「はい、九條さんもどうぞ」

「私は今から寢」

「どうぞ、九條さん」

にっこり笑顔でさらにずいっと差し出した。そんな私を見て、彼は悲しそうに眉を下げてけ取る。どうして著替えを勧めるだけでそんな悲しそうなの、澤井さんにこの姿を見せてやりたい。

九條さんは諦めたように無言で立ち上がり、スタスタと出口に向かっていく。

「ではし行ってきます」

「ごゆっくり!」

満面の笑みで手を振った。そんな私を見て、やっぱり九條さんは悲しそうに教室から出て行ったのだった。

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