暇なら読んでみて下さい。

( ^-^)_旦~

魔は四つ足で走っているが、その速度は人間を軽く凌駕していて、瞬く間に距離が詰まる。

「グルァァ！！」

「危ない！！」

どうにか固まっているアニカを突き飛ばす。

間一髪、魔の突進から逃れたアニカは、突き飛ばされた衝撃と痛みで冷靜さを取り戻してくれたみたいで表を引き締めている。

突進してきた魔は、勢いそのままで木に衝突すると鈍い音を響かせて止まった。ぶつかった木から、ザァッと大量の葉が落ちる。

あまりの衝撃の大きさに一瞬怯んだものの、気を取り直して剣を構えた。

「グルルァ！」

吼える魔に対する警戒を解くことなく、アニカに確認する。

「アニカ！大丈夫か！？」

「…大丈夫！驚いただけで怪我もしてない。助かった！」

「よし。けるなら逃げるぞ！あれは…俺達の手に負えない！」

「わかった！」

駆け出し冒険者の俺でも、見ただけで解る。コイツは…ヤバい。

魔はを翻して赤い目を向けてきた。興して唸りをあげる口から、ボタボタと涎を垂らしているのが見える。

その様子から、空腹狀態なのだろうと推測できた。おそらく…焼けたの匂いにわれて現れたのだと。

…と、次の瞬間。

魔はその巨をグッとめたかと思うと、発して一気に力を解放するかのように一瞬で間合いを詰めてきた。

「はやっ…！」

「グガアァァァ！！！」

魔は咆哮とともに右前足を振り上げ、鋭い爪で切り裂こうとしてくる。剣でけ止めるのは危険だと判斷して、攻撃を辛うじて躱して反撃する。

「オラァァ！くらえっ！」

い頃から冒険者に憧れていた。故郷は何もない田舎で、剣に詳しい師匠もいなかったけど、毎日のように自己流で剣の稽古をしていた。

平和な村でもたまに獣や魔が現れる。村を守るため、大人と一緒にフォレストウルフと呼ばれる狼型の魔や、ゴブリンも倒したこともある。

自己流とはいえ、長年鍛えてきた剣技に多なりとも自信があった。

しかし…。

魔の前足を切斷するつもりで振り下ろした渾の一振りは、刃が埋まりきるくらいの深さで止まってしまった。骨までも屆いていない。

「そんな…」

「グギャアァァア！！」

反撃をけた魔は激高して、喚きながら切られた右前足をそのまま外に振って裏拳のように毆りつけてきた。

「しまっ…！」

ショックをけて一瞬きが止まった隙を突かれた。両腕でガードしたものの直撃は免れず、衝撃をけ止めきれるわけもなく、軽く吹き飛ばされてしまう。

「ガハッ！」

今の一撃は効いた。痛みでがかない。今まで味わったことのない衝撃。

「オーレン！！私も戦う！」

「來るな！お前は先に逃げろ！俺もすぐに行くから」

今のアニカに戦闘は無理だ。武もナイフしか持ってない。そんな裝備で太刀打ちできる魔じゃない。

「でも！」

アニカは今にも泣き出しそうだ。けれど、闘わせる訳にはいかない。

「早く！ギルドへ行け！応援を呼んでこい！」

「……わかった！」

「頼んだぞ！俺も隙を見て行くから！」

アニカは踵を返して走り出す。小さな頃から、走るのはアニカの方が速い。これで…とりあえず希はできた。

『ふぅ…あちこち痛ぇ。骨がイッたっぽいな。この狀態で逃げられるか？…とにかく、やるしかない！』

まだける。そう思って魔に剣を向けた次の瞬間…。

「なっ…！？」

魔は俺を無視するように橫を通り過ぎ、背を向けているアニカのもとへ突進する。すかさずあとを追うが、魔が數段速い。

あっという間にアニカに追いついた魔は、鋭い爪を振りかぶった。知らせるためにぶ。

「アニカ！後ろだ！避けろぉ～！」

その聲に振り返ったアニカは、眼前に迫り來る爪を躱すため、後方に跳んだ。

「うあぁぁっ！」

直撃は避けたものの防のない腹と腳の一部をえぐられてしまい、そのまま倒れ込んでしまった。痛みに顔を歪めている。

「オラァァァ！」

「グルァ！」

魔に追いついて背後から斬りかかるが、魔は驚くこともなく反撃してきた。逆に避けきれず腕のを削られる。

「痛ってぇ！くそったれ！」

傷はさほど深くなかったが、痛みと出が激しい。距離をとって睨み合いながら、とりあえず持ってた包帯を雑に巻いておく。綺麗になんて暇はない。

ただ、このままじゃマズイ。アニカはあの腳じゃ走るのは厳しい。どうする？どうすればいい？

思考を巡らせて最善を探るが、正解が見つからない。

「グルァァァ！」

「くっ！どうする！？」

とにかく、今は倒れたアニカに意識を向けさせちゃいけない。次に狙われたら止められない。俺はまだける。

「お前の相手はこっちだ！かかって來い！」

「グルァァ！」

傷を増やしながらどうにか立ち回っていると、アニカが痛みを堪えて立ち上がった。

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