暇なら読んでみて下さい。

( ^-^)_旦~

「オーレン…。私は大丈夫だから…先に街に戻って治療をけて…」

肩を借りて歩くアニカが呟いた。魔力を使い果たした上に、足を怪我してまともにけないから弱気になっているんだろう。

でも、こうして２人で歩いているのもアニカの魔法のおかげだ。そうでなくても、兄妹のように育ったアニカを置いていくようなことができるわけない。

「獨りで歩けもしないのに、何言ってんだ。ゆっくりでいいから２人で帰るんだ。街に帰ったら、腹いっぱい飯食おうぜ」

無理やり笑って気持ちを盛り上げる。

「…うん。２人で帰ろう…。好きなモノ、食べさせてよね…」

「幾らでも食わせてやるから、あとし頑張れ」

歩いていると言えないような速度でも、しずつ歩を進めた。

どの位歩いただろうか。

息が苦しい。疲労のせいか時間の覚もない。ただ、周囲の明るさは確実に失われているので、夜が近いことだけは理解できる。

夜になれば夜行の獣のきが活発になる。今の狀態で、もし襲われたら間違いなく命に関わる。どうにか…夜になる前に森を出ないといけない。

そんな焦りをじていた時、ズンッ！とが急に重さを増した。肩を貸しているアニカが意識を失ってしまったのか、今にも崩れ落ちそうだ。

「アニカ！？しっかりしろ！」

必死の問い掛けにも返事はない。力の限界を迎えつつあったでは、倒れそうなアニカを支えきれず、バランスを崩して共にその場に倒れ込んでしまった。

急いでを起こそうとするが…

「ヤバい…。に力が…らない…。もう…けない…」

を流しすぎたのか、それとも倒れたときに張の糸が切れたのか。力なく地面に橫たわるオーレンの眼前に、反り立つ木々の隙間から微かに見える建。

「あそこ…　誰か…いるかも…　聲…出さな…いと…」

そして……意識を失った。

★

「うぅ……ん……」

ゆっくり瞼を開いたアニカの眼前には、見知らぬ天井。

頭が働かないけど、どうやらベッドに寢ていることは解る。左目には包帯が巻かれているのか、視界の半分は白一に染まっている。窓から差し込む明るいを見る限り、今は朝か晝みたい。

首をひねって橫を見ると、黒いローブのような服にフードを被り、機に向かっている誰かの後ろ姿が見えた。

「ここは…どこ…？オーレンは…？」

大きな背中に向かって純粋に放たれた疑問。

小さな聲を聞いたローブの人は、きを止めてスッと立ち上がると、こちらに向き直る。

ゆっくりフードを外すと、凜々しくもらかな表をした貓の獣人だった。

しい白い皮に耳とヒゲはピンと立ち、水晶のような碧い目の片方に、眼帯のようにしてモノクルを著けている。

獣人は、人間に近い容姿の者と獣に近い容姿の者に分かれるけど、この獣人の容姿は絵で見たことのある貓そのもの。

「オーレンとは、君と一緒に倒れていた年のことかい？」

優しい口調で尋ねられて、コクリと頷く。

「彼は別の部屋で安靜にしてる。ひどい怪我を負っていたけど、命に別狀はないから心配いらないよ」

白貓の獣人は優しく微笑んだ。その言葉に安堵して思わず嗚咽をらす。

「うっ…　うぅ～…　よかったぁ…」

白貓の獣人はゆっくり歩み寄って、ベッドの橫に置かれている椅子にフワリと腰掛けた。

「君も彼に比べると軽傷といえるけど、重癥には変わりない。事は知らないけど、２人ともよく頑張ったね」

そう言って優しい笑顔を向けてくれる。とめどなく涙が溢れて止められない。でも、泣いてる場合じゃない。お禮を…言わなきゃ。

「助けてくれて…ありがとうございます…。私は…冒険者のアニカ…です。貴方は……？」

を起こそうとしたが、フッと手で制された。

「まだいちゃだめだよ。そのままでいい。ボクはウォルト。見ての通り白貓の獣人だ。この森で暮らしてる」

「ウォルト…さん…」

「聞いてなかったけど、どこか痛むところはない？」

まだいてないから解らないけど、今はどこも痛くない。

「大丈夫です」

「それなら、気になるだろうからし君が眠っていた間の話をしようか」

それからウォルトさんは、私達を見つけた経緯や今の狀況を簡単に説明してくれた。

あの日、夜の帳が下りた頃、何故か森の獣が住み家の近くに集まってくる気配をじて、何事かと周辺を見回ったとき、倒れている私達を発見したこと。

今日で保護されてから２日経っていること。眠っている間に、治療はもう済んでいることも。

「もう、２日も経ってるなんて…」

「きっと、倒れたとき君達の力と神は限界を超えてたんだ。出もかなり多かった。実際、オーレンの癥狀は落ち著いているけど、まだ１度も目を覚ましてない。かなり疲労が溜まってるはずだよ」

ウォルトさんは冷靜に優しく語りかけてくれる。この人は…私の知ってる獣人とはイメージが違う。

「そうなんですね…」

「とりあえず、ここにいれば安全だからゆっくり休んで。、乾いてない？」

言われてみればがカラカラだ。

「乾いてます」

「解った。今、水を持ってくるよ」

「ありがとうございます…」

そう告げると、ウォルトさんは立ち上がって部屋から出て行った。１人部屋に殘されて、ボンヤリ天井を見上げるとゆっくり瞼を閉じる。

正直、もうダメだと思った。見たこともない魔に襲われて、恐怖で一歩もけなかった。オーレンの剣も通用しなくて、たくさん傷ついてた。

ギルドに行けと言われたのも、私だけでも逃がしてくれようとしたんだ。一矢報いたくて苦し紛れに『火炎』を詠唱したけど、それでも倒せなかった。今、こうして生きているのは、間違いなく運が良かっただけ。

いろんな想いが溢れて考えがまとまらない。いつの間にか、また眠りに落ちていた。

読んで頂きありがとうございます。