暇なら読んでみて下さい。

( ^-^)_旦~

マードック兄妹と別れて寄り道することなく住み家へと向かうウォルトは、野原を抜けて森にると一杯に空気を吸い込む。

たっぷり時間をかけてそれを吐き出すと、スッキリした表を見せる。

やっぱり森の空気は気持ちいいな。全が喜んでる気がする。

元來、獣人は街で暮らしていなかった。皆、山や森に住んで狩りをして暮らしていた。

人間の街が発展するとともに、獣人の中にも人間の街に住んでみたいというものが現れた。

そうして人間にはできない力仕事や、能力を生かして冒険者になる者が増えていくと、直ぐに市民権を獲得する。

今では、街で生まれて街で死ぬ獣人が當たり前になってしまった。

そうした多種族との流を良しとしない獣人達は【原始の獣人(ハジマリ)】と呼ばれ、世界各地の辺境に獣人だけの集落を作り、昔ながらの生活を送っているという。

昔、マードックが冒険中に【原始の獣人】と遭遇したことがあるらしい。

『あいつらは見た目は俺らと一緒だがよ、中は全く別モンだ。正直、獣人の仲間ってじはしねぇ』

そんなことを言ってた。

マードック曰く、同じ獣人とは思えぬほど排他的だったらしい。ボクは、それを聞いても一度は會ってみたいと思ってるんだけど。

そんなことを考えつつ森の奧へ歩を進めると、嗅いだことのない、けれど懐かしいような匂いを放つ存在が居ることに気付く。

『これは…もしかして』

息を潛め、音を立てぬよう風下から匂いのする方へ慎重に近づく。想像通りなら、匂いの主は警戒心が非常に強くて気付かれた時點で終わり。

張の糸を切らずに匂いのする方へしずつ接近していくと、その姿を辛うじて判別できる距離に到達した。

そこには…崇拝の対象である貓がいた。それも、凜とした黒貓。

『この森にも、いたんだ…』

三角の耳はピンと立って、黒曜石のような瞳に引き締まった、沢のある黒絨毯のような並みは、の下で見ればどれ程素晴らしいだろう。

その軀は、立ち上がればボクより一回り小さいくらいかもしれない。

貓の獣人の祖先と言われる貓は、今では滅多に見ることのできない存在。

昔は多數生息していたらしいけど、獲や流行病など諸説あるものの、現在その個數は減する一方らしい。

そんな貓の姿を初めて目にして、不思議な高揚に包まれる。ヒゲと尾はピンと立ちっぱなしで、その立ち姿に見とれる。

黒貓は、しばらく繕いしたり顔を洗うような仕草を見せていたけど、何かに気付いたようにを起こすと、フイッとを翻して何処かへ姿を消した。

黒貓が姿を消したあと、の余韻に浸っていると、ここ最近の出來事が脳裏をよぎる。

『最近のボクは幸運だ。予期せず友人ができて、サマラとも再會した。初めて祖先と言われる存在も見ることができた。急に環境が変わりすぎて、なんか…ちょっと怖いな』

そんな思いにふけっていると、パタパタと雨が木の葉を叩き始めた。

急に降り出した雨に『貓が顔を洗うと、雨が降る』という俗説は正しいんだ！と嬉しさで上機嫌になる。それでも、早く帰らなきゃと冷靜になって全力で森を駆ける。

木々の間をすり抜けるように、ひたすら駆けること數分。無事に住み家に到著した。

ローブと付屬するフードのおで、なんとかは濡れずに済んだけど、足元はしっかり濡れてる。

ローブをいである程度雨を払うと、ポケットから鍵を取り出して、鍵に挿して回したところで鍵が開いていることに気付く。

オーレンとアニカが來ているのだろうと思って、ドアを開けて中にると同時に懐かしい匂いを捉える。

『どうしたんだろう？』

ローブをぐと玄関に掛けて、居間へと歩を進める。部屋にると椅子に座って水を飲んでいる獣人がいる。久しぶりに會う。

「珍しいね。そっちから來るなんて」

「たまにはね。どうせ、いつも暇なんでしょう？」

向かい合わせの椅子に腰掛けながら答える。

「そうでもないよ」

「またまたぁ～。噓ばっかり。ウォルトに趣味があるとも思えないし～」

「趣味はないけど、こう見えてボクも意外に忙しいんだよ？」

「まぁ、アタシには関係ないし～。とにかく、今日は泊まっていくからね！」

「ダメだよ」

「え？…何て？」

「いや、だからダ・メ・だよ」

「ダメ…？まさか…斷るってこと？」

大きく頷く。何故、そんなにビックリしてるのか。泊まりに來た理由も予想できるからね。

「そんな…。ウォルトが…反抗期！？」

「そんな歳じゃないよ…。どうせ、ケンカして家を出てきたんだろう？」

「當たり…」

「もういい歳なんだから、ちょっとは落ち著こうよ」

「歳のことは言うなぁ～！馬鹿息子～！！」

ウォルトは『相変わらず騒がしいな…』と思いながら、三貓の獣人である母親のミーナを見る。

やっぱり、いいこともあれば面倒臭いことも起こるよなぁ、と嘆息した。

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