《モフモフの魔導師》37 技と技

暇なら読んでみて下さい。

( ^-^)_旦~

「お前は強くなんかなれねぇよ!の程知れや、この狐ヤロー!」

何度、同じようなことを言われただろう。

狐の獣人ということもあって、の線も細く特段優れた能力も持たない獣人だった。所謂、十人並みの能力。

それでも、い頃から強い獣人に憧れていた年は、誰彼構わず闘いを挑む腕白小僧だった。

しかし、喧嘩をしても連戦連敗。同じ獣人といえども種族間の力の差は如何ともしがたく、闘えど勝てない日々が続く。ただ、それでも諦めなかった。

パワーやスピードで勝てないのなら、他の手段を使って強くなればいいと考え、やがて武を扱うことに関して右に出る者がいないほどの手練れになる。

「武なんて、卑怯な獣人の使うモノ」「お前ではなく武に負けた」などと、言い訳がましいことを言う輩もなくなかった。負け犬の遠吠えだと相手にしなかったが。

やがて、マードックのような強者が現れると、更なる高みを目指すため新たな技の習得と武の改良が必要だとじるようになる。そのためには、世界の技を學び研鑽する必要があった。

そうして磨いた技を強者相手に試そうとして、巡り巡って変わった白貓の獣人に出會う。いや正確に言うと再會した。

その男は、信じられないことに魔法をる獣人だった。

かつてないほど興した。長い獣人の歴史でも存在したことがないと云われている魔法使いに出會ったのだから。興しない方がどうかしてる。

闘いが始まって直ぐに理解した。この男は同類だと…。

能力に恵まれていないであろうで、を吐くような修練で會得した魔法(ぶき)を使って、刀という武に立ち向かってきた。

己の磨き上げた武と魔法(ぶき)のぶつかり合い。力と技ではない。技と技の戦い。

今までで…最高の闘いだった。

目を開けて、ガバッと起き上がる。

周りを見渡すとベッドの上。隣にはポントーが置かれている。

鞘からゆっくりポントーを抜き取ると、刀をジッと見つめる。ウォルトのが付いている以外に変わったところはない。

顔をしかめたまま、キンと鞘に納めるとウォルトを呼ぶ。

「おい。ウォルト!いるんだろ!?」

姿は見えないが匂いはする。近くにいるはずだ。

「何かありましたか?」

ウォルトがひょっこり顔を出す。

「さっきの闘い、俺が負けたのは覚えてる。だが、聞きたいことがあるから答えろ」

「ボクは勝ってないですし、起きてすぐに言うことですか?」

「やかましい。最優先事項だ」

當然だろうと言わんばかりに答える。

仕方ないという面持ちで、ウォルトはベッドの橫に置いてある椅子に座った。

「聞きたいことって何ですか?」

「お前にトドメを刺そうと居合で抜刀した時、スッと刀が抜けなかった。お前が何かしたのか?」

あそこですんなり抜刀できていれば、勝っていたはず。偶然にしては余りにも出來過ぎている。

今まで刀が抜けなかったことなどなかったし、ウォルトが何か仕掛けたとしか考えられなかった。

「それは…『氷結』です」

「『氷結』だと?」

「刀を凍らせて鞘と固定しました。だから抜くのが一瞬遅れたんです」

「なにっ!?あの時、魔法を使われた覚はなかった。いつの間に…」

「腹に刀が刺さった時です」

「あの時に?」

「刺さった刀を抜こうとしてれた時、引き戻される直前に刀に『氷結』をかけておいたんです。徐々に冷えるように」

「どういうことだ?」

「居合を見せてもらった時、鞘に収めた狀態から抜刀してました。その時から、もしかして…と思ってたんですが」

「居合を繰り出すには、刀を鞘に納めておく必要があることに気付いていたのか?」

ウォルトは頷く。

「そして、ボクにトドメを刺す技も居合だろうと思ってました」

「なるほどな…。俺は、手元に戻した刀をそうとも知らずに鞘に納めた」

「その後、會話している間にしずつ剣先から凍り付いた。刀に付いたボクのが」

か…。きれいに払っておくべきだった。いつもなら……いや、慢心だな。注意を払っていれば、何処かで気付いていたかもしれん」

魔法をるウォルトとの闘いに熱中し過ぎて、冷靜さを欠いていたのは間違いないが、1番の要因は『自分の方が強い』という慢心だ。

「苦し紛れの賭けでした…。ほんの一瞬だけ隙を作れないかと思ったんです。たまたま上手くいっただけ。エッゾさんの優しさにも助けられてます」

「俺の…優しさ?」

「エッゾさんが、最後に話し掛けてくれたから、ボクは手で傷を押さえるフリをして『治癒』で傷を塞ぐことができた。時間的に完治は無理でも、かなり痛みは和らぎました。だから最後の一撃に力が込められた」

「…聞けば聞くほど、己の慢心が腹立たしくなる。偉そうに口を開いて…お前を助けていたのか」

思わず苦笑する。

「違います」

「違う?何がだ?」

「ボクはエッゾさんの敵じゃない。確かに貴方の磨き上げられた技は、ボクにとって脅威だった。けれど、それ以上にボクの手本になるモノでした。魔法と刀…武はそれぞれ違っても、それを磨くことの重要さは変わりない」

その言葉を聞いて、スッとに落ちるものをじる。

ウォルトは自分に似ている。獣人なのに、力ではないものをひたすら磨いて強くなった。この心優しい獣人は、そもそも強くなどなりたくないかもしれないが。

「そうか…」

互いに磨いたものを見せ合って「俺のほうが凄いだろう?ってるだろう?」と褒め合った気分だ。

當然負けて悔しい気持ちはあるが、過去のどの闘いにもなかった充実がある。

「なるほどな。お前の魔法は素晴らしい。攻撃から回復まで何でもできる。なくとも俺はそんな獣人を知らない。人間でもそうはいないだろう」

「ありがとうございます。魔法はボクが使える唯一の武です。でも、エッゾさんには視えてないはずなのに全部躱されて…。修練が足りないと反省してます」

ウォルトはガックリと肩を落とす。

「ククッ!自慢じゃないが、魔法をじるようになってからは、1回もまともに食らったことはない」

「その『じる』ってどんなじか、教えてもらっていいですか?」

炎みたいに空気が歪んで見える。飛んできても何の魔法かは解らん。『強化』の魔法は、普通うっすらオーラを纏ったみたいに見えるらしいな?そういうのは全然解らん」

頷きながらウォルトは思った。

『ボクには理解不能だ。エッゾさんだけの『第六』ということにしておこう…』

「お前が俺の申し出をけてくれたおで、心ともに充実した。謝するぞ」

エッゾさんは清々しい表を浮かべてる。ジッとしてられなくて、もう此処を離れると言う。もうちょっと話したかったけど仕方ない。

「ボクもです。闘いたくなかったのに、終わってみるとこれで良かったと思える。闘いの中で、いろんなことを教えてもらいました」

ボクらは握手して笑い合った。

「よし!早速、街に戻ってマードックと闘うとしよう」

いきなりとんでもないことを言い出す。

「『治癒』で治療しましたけど、まだき回るのはオススメできませんよ」

「いや。お前と闘って、俺はまた強くなった。今こそ大願就のとき!このチャンスは逃せん!」

鼻息荒いエッゾさんは興狀態だ。そして、闘っていた時と同じ兇悪な表で嗤っている。知らない人間が見たら、腰を抜かしそうな顔だ…。も疲れてるし、間違いなくピンチだと思うのはボクだけなのか?

初めから解っていたが、やはりこの人はっからの戦闘狂。説得を諦めて「街に戻るなら」と、1つお願いをすることにした。

「そんなことでいいのか?お安い用だ」

「よろしくお願いします」

「あぁ。では、早速行くことしよう」

見送りはいらないと言って、素早く支度を整えると「またその勝負しよう」と言い殘してエッゾさんは住み家を後にした。

その後、エッゾは息をするように道に迷って、森で2泊してフクーベへ戻った。

読んで頂きありがとうございます。

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