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( ^-^)_旦~

今日のウォルトはいつになく気合いがっていた。

目の前には、いつも洗濯や水浴びに使う綺麗な川が流れている。住み家の外にもかかわらず、ローブをぎ鍛えぬかれたをわにして神集中していた。

「よし…。今日こそ、やれそうな気がする」

全く拠のない自信をに、勇気をい立たせて目を瞑った。深く息を吸い込むと、勢いよく目の前の川に飛び込んだ。

次の瞬間。

「ニャァァァァアア！！」

２秒と経たないうちに川から這い上がる。ただでさえ細いが、皮がピッタリ張り付いてさらに細く見える。

「やっぱりダメだった！」

ブルブルッと高速でを震わせた後、持參したタオルで皮の手れをする。

ウォルトは綺麗好きなので、こまめに水浴びや風呂などでを清めたいのだが…。

「やっぱり水にれない…。ホント、なんとかならないもんかな…」

小さな頃から水が苦手だった。水でを拭いたり、雨に濡れたりするのは平気なのだが、浸かることができない。水に浸かると全が途轍もない嫌悪に襲われるのだ。

父さんに聞いた話だと、母さんがまだ小さかったボクを誤って川に落として、溺れて死にかけたことがあるらしいから、その後癥だと思うんだけど…。

被告人、三貓曰く

『あの時はウォルトが暴れたんだからね！それはもう、暴れ馬か牛かってくらいに！貓なのに！』

…と、人のせいにしていたが、赤ん坊がどうやって暴れ馬になるというのか…。

「母さんに何の恨みもないし、もう治っても良いんじゃないかと思うんだけどな…」

數え切れないくらい克服しようと挑戦してきたけど、一向に改善する気配がない。「いつかは浸かれるかニャ…」と悟ったように遠い目をしてみても、水には浸かれないのだ。

諦めて帰ろうとしたとき、花の香りを嗅ぎ取る。とても良い香りがする。

どこか懐かしいその香りに、これは何だっけ？としばらく考えていた。

『思い出した！これはダメだ！早く…　帰ら…　ないと…』

人一倍敏な鼻で、匂いを何度も嗅いでしまったウォルトは、足下が覚束なくなり歩くこともままならない様子で千鳥足になってしまった。

『久しぶりに…　嗅いだから…　油斷した…』

遂には力なくその場に倒れ込んでしまう。

住み家に遊びに來たオーレンとアニカの２人が、殘された書き置きを見て川に向かい、うつ伏せに倒れているウォルトを発見した時は、かなり焦った。

「ウォルトさん！大丈夫ですか！？」

オーレンが抱き起こすと、表に苦しそうな様子はなく、むしろ気持ち良さそうである。夢見心地なのか、ニャーニャー言いながら手を丸めて、顔を貓のようにっている。

「良かった…。この様子なら心配は要らなそうだな…。ん？アニカどうした？」

「な、何でもない！」

アニカの顔が真っ赤に染まっている。

それもそのはず、ウォルトは水浴びのあとなので、下著一枚で倒れていた。初めてを目にして嬉しいやら恥ずかしいやらで、混していた。

「…気持ちは解るけど、今はそんなこと考えてる場合じゃないぞ」

「何も考えてないっつうの！そんなことってどんなことよ。凄い腹筋！とか思ってないわ！」

ダメだコイツ…と思いながらも、とりあえず無視することにして、この狀況はどういうことだ？と推理してみる。

『水浴びしながら昏睡…？寢不足か…？いや、ウォルトさんに限ってそれはないと思う。そうなると、この場所に何か原因があるのか？』

気持ちよさそうに眠るウォルトさんをそっと地面に寢かせて周囲を観察する。すると、離れた場所に咲く花が目にった。それは、２人の故郷ではよく見た花。

「もしかしたら、花(これ)のせいかもな」

「これって…夏梅(マタタビ)？」

「貓に嗅がせると酔ったようになるって聞いたことがある。ウォルトさんは貓の獣人で、嗅覚が半端じゃない。風向きも風上になる。あり得るんじゃないか？」

「なるほどね。もしかして、寢てるんじゃなくて酔ってるのかな？」

「多分そうだ。だから、気分が良さそうなんだろ」

納得したものの、皮が濡れっ放しのウォルトさんを見て、このままでは熱を出してしまうかもしれないと、２人で連れて帰る方法を模索する。

「なんとか起きてもらえれば良いんだけど…」

「獣人にしては小さいけど、私達からしたら大きいからね…」

う～ん…と腕組みして頭を悩ませていると、ウォルトさんがクシュン！とクシャミをした。よく見るとし寒そうにしている。

「よし！私が肩を貸して歩くよ！」

「それは無理だろ。やるなら２人じゃないと」

「大丈夫！私に任せなさい！」

アニカはウォルトの上半を起こすと、背中側から右脇に自分の首をれて、一気に持ち上げるようにして起き上がらせた。

「おぉ！すげぇ怪力！」

「うるさい！一言多い……ってぇぇぇぇ！」

「アニカ！？」

立ち上がって直ぐにバランスを崩す。オーレンが急いで手をばしたが間に合わなかった。ウォルトにバックドロップするような形で、ともに川に落ちる。

『ゴボボ！この川、意外に深いぃ～！。私、泳げないぃ～！』

水中で目を瞑ったまま焦っていたところに、を抱き寄せるように摑む逞しい腕が。水面まで一気に引き上げられる。

「ぶはっ！死ぬかと思ったぁ！」

「アニカ！大丈夫？！」

眼前には、目を覚ましてずぶ濡れのウォルトの顔があった。

「ウォルトさん！目が覚めたんですね」

「いきなり水に落ちたら、さすがにね」

「良かったです。　…！！…」

「どうかした？」

「い、いえ。なんでも…ないです」

水中からアニカを引き上げて、片腕で抱き寄せるような狀態になっていた。板にアニカの顔が付いてしまっている。

「顔が赤くなってる。早く家に戻って著替えよう！」

「このままでもいいんですけど…」

「？　ダメだよ。熱でも出たら大変だ」

「…わかりました」

ウォルトはアニカを持ち上げて、先に陸に上げる。続いて自分も上がったところで、あることに気付いた。

『水に…っても問題ない？！』

もう１回、川に浸かってみる…が、嫌悪をじない…。これは、間違いなく克服したと見ていい。２人のおだ。

「ウォルトさん？」

オーレンが心配そうに聲をかけた。

「ごめん。ちょっと嬉しくてね」

「？」

「後でゆっくり話すよ。とりあえず急いで帰ろう」

ローブを拾って素早く羽織ると、ずぶ濡れのアニカを背負って全力で駆けた。オーレンはスピードに付いて行けず、ゆっくり２人を追う。

…無駄にゆっくりと。

『アニカ…。今の俺、良い仕事してるぞ』

オーレンは心の中で自畫自賛していた。

住み家に著いたウォルトは、早速アニカに服を渡す。今回は貫頭…ではなく、アニカが普段著ている冒険者の軽裝に近い服。

「ウォルトさん。これは…？」

初めて見る服だけど、何処からか調達したのかな？

「それは、ありあわせの布でボクが作ったんだ。サイズが合うと良いんだけど」

「わざわざ私の為に…。ありがとうございます。嬉しいです！」

「うん。早く著替えて。濡れた服は『速乾』で乾かそう」

「解りました！」

アニカは、服を大事そうにに抱えて部屋へとっていった。

前回はサイズの合わない貫頭で、を大々的に出させてしまった。しかし、今回は大丈夫だ、とをなで下ろしていたが…。

「お待たせしました」

戻ってきたアニカは、何処から探し出したのか、前回と全く同じ格好で登場した。ダボダボの貫頭を著て生足を出させている。

「何でまた貫頭(それ)を著てるのさ？！さっき渡した服はどうしたの？！」

予想していなかったので、刺激的なアニカの姿をモロに見てしまい、目を瞑って真っ赤になる。濡れてるのに顔が熱い！

「渡された服は、ちょっと大きくて…」

「貫頭(それ)よりはマシでしょ！早く著替えようよ！！」

目を逸らしたまま、顔は真っ赤に染まっている。アニカはそれを『眼福だ！』と思いながら見つめていた。

「これでいいんですけど」

「ダメだって！オーレンも戻って來るよ！」

言われてみればその通りだ。オーレンには絶対に見られたくない。

「それは確かに…。著替えてきます」

アニカがそそくさと部屋に著替えに戻ったあと、心を落ち著かせたウォルトはかに決意する。

家中の貫頭をアニカのサイズに作り変えることを。

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