《モフモフの魔導師》42 カネルラ

暇なら読んでみて下さい。

( ^-^)_旦~

ウォルト達の住む土地は【カネルラ】という國が統治している。

建國からは約千五百年が経過している。世界の國の中では新興國であり、未來永劫の平和と自然との共存を信念とする國である。

過去、幾度か侵略戦爭に巻き込まれた歴史があるものの、代々國王が穏健派で國民第一主義であるが故に、他國へ侵略を仕掛けたことは皆無。

建國當初から変わらず、平和をする自然かな國である。あえて云うなら、國民も朗らかで大らかだ。

國民は、いつの時代も庶民派な國王一族、所謂王族のことを好意的に捉えており、謀反や一揆などを企てた歴史もなく、世界的に見ても珍しい國と云える。

カネルラの現國王ナイデルは第29代國王である。

前國王である父と前王妃である母は、病に倒れて既に亡くなっており、ナイデルは若くからカネルラを背負っている。

そんなナイデルは、王妃であり妻であるルイーナとの間に3人の子を為した。

男児が2人と児1人。王子である男児2人は既に人していて國政に攜わっているが、年の離れた王はまだ10歳を迎えたばかり。

そんなカネルラの王リスティアは、國王達を悩ませることも多い『お転婆王』だ。

「お父様、遊びに行っていい?」

公務の合間、自室での休憩中に娘リスティアが無邪気に聞いてきたので、國王ナイデルは確認する。

「何処に行くんだ?城の中庭か?」

「『の森』に行きたいの」

の森』は國が管轄する巨大な森。その面積は國土の約4分の1を占める。そんな森は王都からはかなり遠い地にある。

「あの森には魔や獣が跋扈してる。殘念ながら無理だな」

「えぇ~!『の森』なんだから大丈夫だよ!」

駄々をこねるリスティアに嘆息した。

「名前の問題じゃない。棲息してるのは、というより獣だ。魔に襲われたら、最悪命を落とすかもしれないんだぞ」

「大丈夫!ボバンと一緒に行くから!」

ボバンとはカネルラの騎士団長である。王族と民を守護する鋭部隊、騎士団の長だ。

周りには堅だと言われている男だが、よく話し相手になってもらうリスティアは、融通の効くな男だと思っている。

その考えに異論は無いが…。

「ボバンは駄目だ。いや、そもそも駄目だ」

「むぅ~!お父様にはもう頼まない!」

リスティアは頬を膨らませて部屋から出て行ってしまった。

國王に頼まなければ、誰に頼むと言うのか…。

「ナイデル様。あまり厳しくしすぎると、あの娘は何をしでかすか解りませんよ」

その様子を、隣で椅子に腰掛けたまま靜かに見ていた王妃でありリスティアの母であるルイーナがナイデルに警告する。

2人は結婚當初からずっと変わらず仲の良い夫婦で、國民にされている。

「解ってる。だが、理由もなく魔の住む森に行かせる訳にはいかん」

「そうですね…。我が娘ながら、我が儘で困ったものです」

「あの娘のお転婆は、今に始まった訳ではないがな」

ナイデルとルイーナは顔を見合わせて苦笑する。この夫婦は、いリスティアに隨分と手を焼いてきた。

でありながら活的でお転婆なリスティアは、10歳にして己のに忠実だ。

以前『城下町に行ってみたい!』と言われ、『そのにな』と誤魔化し半分でナイデルが答えたときは、一どうやったのか城から走し、戻ったあと自分の部屋で城下町で流行しているお菓子を頬張っていた。

またある時は『お兄様に相応しいを探してくる!』と言いだしたかと思うと、これまた走して何処からか若い娘を連れて帰ってきた。そして、本當に第2王子の妻になった。

本人達は幸せそうなので結果としては良かったのだが、一歩間違えれば人攫いである…。

天真爛漫で、生まれながらに人にされる才に恵まれたリスティアには、城下町のみならず城にも協力者がいるようで、毎度數名が走の手引きをしているようだ。

國王夫婦も基本的に娘に甘いので、関わった者について詮索や処罰する気はない。

「それにしても、今回は『の森』ときたか…。流石に獨りで行くことはないと思うが…」

「えぇ…と言いたいところですが、あの娘ならなんとかしてしまいそうで…」

「しばらくリスティアには監視をつける。『の森』にはいずれ視察で連れて行く」

「では、そのようにボバンに伝えましょう」

ルイーナはベルを鳴らしてメイドを呼ぶと、ボバンを呼ぶよう伝える。すると、暫くしてボバンが現れた。軽く一禮して顔を上げる。

この國には王族に対する形式的な禮は存在しない。初代國王から続く伝統で『限定された者しかできない禮など必要ない』という方針ゆえだ。

「お呼びでしょうか」

「いきなり呼び出してすまんな。実は、リスティアが『の森』に行きたいと言い出した。近く視察を兼ねて行こうと思うが、それまで大人しくしておかせるよう、騎士の誰かを監視に付けてくれぬか?」

すると、ボバンは眉間に皺を寄せ、1つ唸ってナイデル達に告げる。

「リスティア様なら先程『探さないでね♪』と仰って何処かへ走って行かれました。正直、私には意味が解らなかったのですが…」

「「へ?」」

鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、間抜けな返答をした國王と王妃。

ナイデルとボバンは急いでリスティアの部屋に向かう。ルイーナはゆっくりと2人の後を追った。

「リスティア、るぞ」

部屋のドアを勢いよく開けたナイデルの目に飛び込んで來たのは、綺麗に片付けられた部屋と、機の上に置かれた書き置き。

恐る恐る書き置きを手に取って目を通すと、そこには『お父様、お母様、先に『の森』へ行く不幸をお許しください』と何だかよく解らない文章が書かれていた。

「はぁぁぁ…」

夫婦で深く溜息をつく。

何という行力。さっきの「頼まない!」は『じゃあ、勝手にする!』という意思表示だったのだと今さら気づいた。

「ボバン…。手間をかけるが、リスティアを探してくれぬか?城だけで構わない」

「仰せのままに」

おそらくもう城には居まい、と思いながらも、城で働く者達に指示して探させつつ報を集めてみると、どんな手を使ったか解らないが、騎士団ではボバンに次ぐ実力者のアイリスと一緒に出て行ったようだ。

どうやら子供1人で行けると思うほど馬鹿ではなかったらしい。

むしろ…リスティアは聡明だ。正直、若干の親馬鹿であることを差し引いても、リスティアの優秀さは誰もが認めるところ。

王族として學ぶべき素養は、1度學べばほぼ完璧に修得する。勉學の績も優秀である。

母親譲りで容姿も優れており、麗しい金髪と碧と緑のオッドアイが印象的な瞳は、神的ですらある。友好國の王族からは是非、將來王子の嫁にと引く手數多なのだが…。

ただし、それらを全て相殺するほどのお転婆であり、制不能の弾娘である。なまじ聡明なだけに手が付けられない。

故に國のために嫁がせるのは現狀では絶対無理だ、とナイデルは考えている。それ以外にも理由はあるのだが…。

『とりあえずアイリスが一緒なら心配いらないか』

アイリスの実力はよく知っている。騎士でありながら、年に1度開かれる武闘大會でも參加すれば必ず上位に食い込む実力の持ち主で、その勇敢さは折り紙付き。

比較的治安の良いカネルラでは、拐などないと思いたいが、彼が付いていれば余程でない限り問題はないだろう。

それに、王族であっても國民の1人。病にせよ事故にせよ、死は平等に訪れる。

今回リスティアが街や森で命を落としても仕方ないとも思う。ルイーナには悪いが、王族だからといって命の重さは変わりはしない。

とはいえ、1人の親として娘が無事にこしたことはないので、今はいつものように元気に帰ってくることを祈りながら、政務を続行することにした。

読んで頂きありがとうございます。

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