《モフモフの魔導師》43 王リスティア

暇なら読んでみて下さい。

( ^-^)_旦~

「久しぶりにお城の外に出たぁ。アイリス、付き合ってくれてありがとう!」

無邪気な顔で、大手を振って城下町を歩くリスティアは、並んで歩くアイリスに禮を述べる。

「いえ。あそこで斷れるほど、私の心臓は強くありません」

アイリスは苦笑する。

アイリスは、カネルラ騎士団で唯一の騎士であり、団長に次ぐ実力者と云われている。

金髪のショートカットに整った容姿を持ち、王都には男問わず表立たないファンが多數いると噂されている。

生真面目な格に加えて、想がないのが玉に瑕だが、逆にそこが良いという者もいる。

アイリスは城で巡回の任務に就いていたところをリスティアに捕まって同行させらせた。

『私は今からの森に行くけど、アイリスも一緒に行ってくれない?無理なら1人で行くから大丈夫だよ』と笑顔で言われてしまったのだ。

それを聞いて、普通なら子供の冗談と思うだろうが、王をよく知る者はそれが冗談でないことを知っている。

そうなると、魔の住む森に王を獨りで向かわせる訳にはいかない。故にアイリスに斷るという選択肢はなかった。

「帰ってもボバンやお父様達に怒られないようにするから心配しないでね」

様は心中を見かしたように微笑む。

「ありがとうございます」

様はこの年齢にして聡明。さらに、人の上に立つ者のオーラのようなものがある。私のような者が烏滸がましいが、順調に長されたら王にすらなれるのではないかと思える。

それはむべくもないことだが、それだけのだとじさせる何かが王様にはある。

「アイリス。まずは服を買いに行こう。この服は目立ちすぎるし、汚したら大目玉だからね!」

「わかりました。では何処がいいでしょうか…?私は生憎そういった処に疎くて…」

「知り合いのとこに行くから大丈夫だよ!」

勝手知ったるといったじでズンズン歩を進める王様。城下町に來たのも數えるほどのはず。それでも…おそらく一度訪れたところは忘れてないのだ。

その後、一軒の服屋で軽裝を購し、戻ってくるまでの間、ドレスは預かってもらうことになった。

「アイリスも著替えたら?」と提案されたが、守護者としては防を外すわけにいかないと斷った。

様が服を著替えて、王都をしばらく歩くと、多くの町人に聲を掛けられる。

皆ドレス姿でなくとも王様と認識できるようだ。私と一緒にいるから目立つのもあると思うけれど。

「王様、今日は何か買いかい?」

「リスティア様、流行の菓子がってるよ!」

「王様~!またお城の話を聞かせて~!」

老若男、種族を問わず親しげに話し掛けられ、それら1つ1つに対して丁寧に答えながら王様は歩く。笑顔満開だ。

『これなのだ。王様は國民にされる才能がある。それは、誰しもが真似できるものではない』

アイリスの推測はおおよそ正しい。カネルラの王族は、過去から現在に至るまで國民を大事に扱ってきたため好意を持ってれられるが、長い歴史の中でもリスティアほどされた者は存在しない。まさに天のもの。

「アイリス。『の森』にはどうやって行けばいいのかな?」

唐突にリスティアが尋ねる。

「王様…。知らずに來たのですか?」

呆れたように聞き返すと、リスティアは「テヘッ♪」と舌を出して笑顔で誤魔化した。

ふぅ…と嘆息して「馬車乗り場に向かいましょう」と案する。馬車乗り場に到著すると、ちょうど1臺の馬車が停泊していた。

そこでアイリスは気付いた。

「王様…。著の著のままで來たので、持ち合わせがありません…」

「心配しないで!こんなこともあろうかと、お小遣い持ってきたからね!」

様は懐から小銭れのようなを取り出し、フフン!と自慢気に見せる。このために事前に準備していたんだろう…と思うと、國王様達が気の毒に思えた。

その後、馬車の従者に行き先を告げると「全く問題ないよ」とのことで、まずは『の森』のすぐ近く、フクーベの街を目指し出発した。

王都からフクーベまでは、馬車で4時間ほどの移になる。

のんびり馬車に揺られながら、2時間ほど進んだ森の中で、アイリスは『そういえば…』とリスティアに確認していなかったことを聞く。

「王様、1つ確認してもよろしいですか?」

「ん?どうかした?」

「今回、何故『の森』に行きたいと思われたのですか?」

「それはね…手にれたいモノがあるんだ」

「手にれたい…モノ?それを手にれたら、すぐにでも戻られるおつもりですか?」

「そのつもりだよ」

「解りました」

それ以上詮索することはせず、馬車の後ろに流れる景を眺めていると従者がんだ。

「お客さん!魔に囲まれた!気を付けろ!」

それを聞いたアイリスは、素早く馬車から飛び出して周囲を警戒する。周りを見渡すと、4頭のフォレストウルフに囲まれていた。

「従者!貴方は戦えるか?」

「大丈夫だ!馬は守れると思う!」

「上等だ!前方は頼むぞ!」

馬車に積まれた食料が狙いか。はたまた馬や乗客か。どちらにしても関係ない!と気合いをれて神を集中する。

馬車に乗っている王様を守りながら戦わねばならないが、焦りはない。

フォレストウルフは、ジリジリと距離を詰めてくる。

2頭が同時に跳びかかってきた。瞬間、右から來た魔の首を一瞬で斬り飛ばすと、逆方向の魔には手甲を噛ませて無防備な腹に剣を突き刺す。

が口を離して地面でジタバタ悶えているところで冷靜に首を刎ねた。

殘る2頭は前方で馬に襲いかかっているのを傷を負いながらも従者が守っている。

アイリスは軽やかに前方へ駆けると、まず1頭の首を刎ね飛ばす。もう1頭も従者に覆い被さっているところを薙ぐと、真っ二つに両斷された。

周囲を検索し、脅威がないことを確認したアイリスは従者に近づいて労う。

「貴方のおで助かった。謝する」

「こっちは商売なんで當然でさあ。お客さんこそ、強いんだねぇ」

従者には幾つか噛まれた傷が散見されるが、そこまで深い傷ではなさそうだ。手持ちの薬で治療しようとした時、リスティアが馬車から降りて2人の元に近寄る。

「2人に多大なる謝を」

リスティアはそう言うと、従者の傷にれた。すると傷はしずつ回復して、何もなかったかのように元通りになる。

目の前の出來事に、従者の男は驚きを隠せずにいたが、ふとリスティアの顔を見て気付く。

「もしかして…リスティア王様では?」

リスティアはニコリと笑って頷く。従者はしたようにリスティアにお禮を告げるが「かないで」と制して全ての傷を治す。

ペコペコと頭を下げ続ける従者に、もう一踏ん張り頼む旨を伝えて、2人は再度馬車に乗り込んだ。

「アイリス。左腕を見せて」

先ほど左腕を噛ませた際、手甲でガードされていない部分を噛まれて出していた。

「王様、私に治療は必要ありませんが…」

「ダメ!お嫁に行けなくなったらどうするの!?」

そんなことを言って王様が治療を始めると、みるみる傷が治っていく。

『やっぱり凄い…』

聞いたところによると、王様のこの能力は魔法の『治癒』に似ているが全くの別で、魔法ではないらしい。

カネルラの王族に代々け継がれてきた【霊の加護】の力で、現王族では王様しか使えないと聞く。

失禮を承知で言えば、お転婆な王様であるけれど、こうしているとまるで聖のようにもじる。王様を見ていると…これが神にされた者かと思う。

「はい。治ったよ」

「ありがとうございます。私のような者に貴重なお力を…お手數をお掛けしました」

「アイリス」

頭を下げたアイリスの耳に凜とした聲が響く。一瞬、『誰?』と思ったほど。顔を上げると、王様は真剣な眼差しをこちらに向けていた。

「貴方は私の命を救ってくれた。民の命を守ったことは、騎士として誇るべきこと。己を卑下しすぎです。を張りなさい。そして、私の力も民を守るためにある。貴方も例外ではない。私は、2度と貴方自を貶めるような発言を許しません」

「はい…。心得ておきます」

それを聞いたアイリスは、グッと下を噛んだ。そうしないと、泣いてしまいそうだったから。

この…まだい王様には本當に敵わない。この人の命を守れて良かったと…自分を誇ろうと、そう思えた。

様はまだ10歳。だが、王族として表舞臺に立つとき、今のように大人顔負けの一面を見せる時がある。

いつだったか、冗談じりに言っていた。

「今はまだ、ただの子供でいたいの」と。

言い終えるとフニャッとした顔で「お嫁に行くときは、私も式に出席するからね!」と一言付け加えた。

その言葉を聞いて、不覚にも笑ってしまう。本當に凄い王様だ。

その後、馬車に揺られること2時間。私達はフクーベの街に到著した。

読んで頂きありがとうございます。

      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください