《モフモフの魔導師》44 フクーベにて

暇なら読んでみてください。

( ^-^)_旦~

フクーベに著いた2人は、馬車の従者に報酬を払おうとしたが、従者は「王様に傷を治してもらって、金までもらったら商人の名折れ」と言い張って、頑としてけ取りを拒否されてしまった。

アイリスが倒したフォレストウルフの牙や皮を素材として売れば、馬車代くらいになるので問題ないとのことで、それならばと互いに笑顔で別れた。

あれしきの數でそんなに高く売れるはずはないが、引き下がってくれなそうなので今回は厚意に甘えることにした。

フクーベまで來れば、気付く者もそうはいないだろうと張も解けた様子の2人は、時間もまだ晝過ぎでどうしたものか思案していた。

リスティアが提案する。

「アイリス!晝ご飯を食べよう。街のご飯久しぶりだから食べたい!」

「そうですね。ちょうどお腹も空いてきました。そうしましょう」

アイリスが街ゆく人に聲を掛け、味しい料理を食べられる店はないかと尋ねたところ、薦められた店に行ってみることに。

味しかったね!」

「はい。この店の料理は、王都でも人気になります」

聞いた甲斐があった。教えてもらった店の料理は驚くほど味しかった。店が満員なのも納得だ。王様もケプッと息をらし、お腹をさすっている。

食後のお茶を飲みながら、周囲に聞こえないよう小聲で尋ねる。

「王様。まだ日は高いですが、これからどうされますか?」

「とりあえず、1度森に行ってみたいと思ってる!」

「解りました。その前に宿を確保しておきますか?」

「そのほうが安心だよね。そうしようか」

話がまとまったところで、後ろのテーブルに座る獣人が聲を掛けてきた。

「お前ら、森に行くのか?」

アイリスが振り向くと、中傷だらけのゴリラの獣人が獨りで酒を飲んでいる。醸し出す雰囲気は、明らかに只者ではない。

警戒しつつ答える。

「…そうだが、それが何か?」

「森に行く用件は何だ?」

獣人は酒を煽りながら聞いてくる。危険な風貌なのに、不思議と嫌なじはけない。

「探しだが…」

「なら、森に住んでる『ウォルト』って獣人に聞いたらいい。そいつは森に詳しいぜ」

「獣人のウォルト…。その者は何処に?」

「住み家までの地図を描いてやる。持ってけ」

ゴリラの獣人は、店員に「書くものを寄こせ」と注文し、サラサラと紙に地図を描いて「ほらよ」と手渡してきた。

それをけ取ったアイリスは思った。

この獣人は、口調は暴だがは親切なのだろう。もしかすると、何かの罠の可能もあるけれど、私はともかく王様の素はバレてはいないはず。

「すまない。謝する」

「気にすんな。ところで、お前…王都の騎士だな?」

やはり気づかれていたか。そんな気がした。

「何故わかった?」

「その防を見ればな。ボバンは元気か?」

「貴方は…団長の知り合いなのか?」

「あぁ。ちょっとな」

そう言いながら酒をグイグイ飲んでいる。

「ところで、行くんなら早く行かねぇと日が暮れるぞ。俺を信用するならだけどな」

「ありがとう。ゴリラのおじちゃん!」

様が大きな聲で禮を告げた。

何故か周りの客は失笑し、獣人の男はプルプル震えて怒っているように見える。何かおかしなことを言っただろうか?

「誰がゴリラだ!どっからどう見ても狼だろうが!!」

「「えっ!!」」

アイリスも驚きを隠せない。

狼…?百歩譲って、熊の間違いではないのか…?

「お前もか!……まぁいい。気を付けて行けよ」

男はそう言うと手で払うような仕草を見せて視線を外す。私達は若干の気まずさを殘しつつ、店を後にした。

2人が店を出るのを見屆けた【狼】の獣人マードックは思案する。

『カネルラの王と騎士が『の森』に何の用だ?まぁ、あの王なら変なことはしねぇだろ。それより…あの騎士は、まぁまぁ強ぇな』

マードックは上位ランクパーティーの冒険者。なので、クエスト絡みで王都にも何度か行ったことがあり、王も騎士も見たことがあった。

そうでなくても、耳のいい獣人には先ほどの2人の會話が丸聞こえだったのもある。

サマラに薬を盛られた一件から、ウォルトに誰かをけしかけるのは難しいと思っていたが、『今回は人助けだ。相手が王なら仕方ねぇよな』と笑みを浮かべる。

あとは、あの騎士次第だが…と駄目元でお節介を焼いた次第。

マードックは、々な強者にウォルトの存在と強さを知ってもらい、かつ強者との勝負でウォルトの本能を引き出そうと企んでいる。

そして、最終的に己の夢を果たそうと。

今回は、思い通りにいかない可能が高い。完全に賭けになるが、そうなった時を想像してワクワクしていた。

渡された地図を頼りに、ウォルトと呼ばれた獣人の住み家を目指す2人。

その道中、2人は反省していた。

「アイリス…。私は初対面の相手に、中々の失禮をかましてしまったの…」

「王様…。私もそう思っていたので同罪です…」

あんなにゴツい狼の獣人がいるなんて誰も思わない。どう考えても熊かゴリラにしか見えなかった。

「凄いつきだったよね。狼でもあんな獣人がいるんだね。よく見ると、ちょろっとタテガミがあったんだけど気付かなかった」

「私はゴリラか熊だと思っていました。まさか狼だとは…。そもそも狼にタテガミは無かったと思うのですが…」

マードックをゴリラの獣人と間違って落ち込む2人は、描いてもらった地図を頼りにトボトボとウォルトの住み家に向かうと、時間は掛かったがすんなり辿り著いた。

住み家が見えてくると、2人は心する。

「本當に森の中に住んでるんだ。凄いね!」

「家も周囲も綺麗に手れされています。獣人の住み家には見えませんが…」

この時アイリスは『ウォルトとはどんな獣人だろうか?もしも、おかしなことをするようであれば……』と騒なことを考えていた。

2人が玄関の扉の前に立って、ノックしようとした時、背後から聲がした。

「ボクの家に何か用ですか?」

「「ひゃうっ!」」

びっくりしてバッと振り向くと、そこには黒いローブを著てモノクルを付けた白貓の獣人が小首を傾げて立っていた。

「誰かニャ?」とか言いそうな顔をして。

アイリスは話し掛けられるまで気配をじなかったことに驚きつつも、冷靜に自己紹介をする。

「私はアイリスと申します。獣人のウォルトさんに用があって參った次第です」

「私はリスティアっていうの!私もウォルトさんに用があって來たの!」

「ご丁寧にどうも。ボクがウォルトです。良ければ中で話を聞きましょうか?よかったら、中へどうぞ」

笑顔で家に招きれるウォルトさんを見て『まさか…ああ見えて、虎の獣人とかってオチはないよね?』とあらぬ疑いをかけてしまったが、「どうぞ」と言われてらぬのも失禮かと、警戒しながら家にる。

居間のテーブルで座って待つよう促された2人は、黙って臺所に消えたウォルトさんを待つ。

綺麗に片付いた家の中は、獣人の住み家とは思えぬ雰囲気で、2人は意外だといわんばかりの表を浮かべる。

王城にも警備員などで獣人がいるが、男の獣人は皆ガサツでを片付けたりするのが苦手だというイメージを持ってたりする。

なので、住み家が綺麗に片付いているだけでも意外抜群だ。そんなことを考えていると、両手にコップを持ったウォルトが戻ってきた。

「口に合えばいいんですが」

良い香りのするお茶を2人に差し出した。

それとは気付かれぬよう、毒見も兼ねてアイリスが先に口を付ける。良い香りが口の中から鼻腔に広がって、何とも言えずホッとする。味も抜群で味しい。

「これは…味しいです。何かの花茶でしょうか?」

「その通りです。カラムという花の葉なんですが、香りが良くて煎じて飲むと張を解く効果もあると言われています」

笑顔で答えてくれるウォルトさんは、話し方も丁寧で穏やか。私は初めて接するタイプだ。王様も、続くようにして口を付けた。

「すっごく味しい!これ、お城にもない味…!ムググ…」

「オホホホ!余計なことを言ってはいけませんのことよ!」

「?」

焦って変な言葉遣いになりつつ、王様の口を押さえる。小首を傾げたウォルトさんが確認してきた。

「ところで、2人はボクに何の用があって來たんですか?」

そうだった!と思い直したリスティアがウォルトに尋ねる。

「ウォルトさん!タコウソウがある場所を知らない?この國では『の森』にしかないって聞いたの!」

「タコウソウ?知ってるよ」

「ホント?!持って帰って、あげたい人がいるの!場所を教えてもらいたいの!」

花茶を飲むアイリスは、タコウソウとは何だったか?と何処かで聞いたような気がするけれど、思い出せないでいる。

ウォルトさんは聞かれたあと王様をジッと見つめている。正確には、見つめるというより何かを確認しているような視線を送っていて、王様も真剣な眼差しをウォルトさんに向けている。まるで目で會話するかのように。

「解った。リスティアちゃん。ココから結構離れたところなんだけど…」

「リスティアでいいよ!遠くても、自分で行きたい!無理かな?」

「無理じゃないけど、力が持つかな?」

「アイリスもいるし、大丈夫だと思う。場所だけ教えてもらえれば自分達で行く!」

「う~ん。結構、道が説明しにくいから…。もし良ければ、ボクが明日にでも道案しようか?」

「いいの?私たちは助かるけど」

「わざわざこんな所まで尋ねて來てくれたんだ。何か力になれたら嬉しいよ」

「じゃ、早速だけど明日お願いできるかな?」

「わかった。明日ね」

アイリスが口を挾む暇もなく、話は終わってしまった。

この目の前にいる獣人は、悪い獣人ではないと思うが、信用してもいいものか…。

後でお金でも請求してくるのではないか?などと思案していると、「お金なんかいりませんよ。心配しないで下さい」と苦笑したウォルトさんに言われてしまい、顔を赤らめながら自分を恥じた。

「2人は、この後どうするの?」

ウォルトが尋ねた。

「フクーベに戻って1泊しようと思ってるの」

「もし2人が良ければ、此処に泊まってもいいよ?部屋は余ってるし、それなら明日は朝から行ける」

「泊まっていいの!?じゃあ泊まりたい!」

「王…じゃなかった、リス…ティア、それは駄目だと…思う」

流石にウォルトさんの前で王様やリスティア様とは呼べず、変な話し方になってしまう。

いくら人が良さそうといえ、初対面の獣人の家に王様を泊めるわけにはいかない。自分1人なら何か起こっても対処できると思うが、危険すぎる。

「えぇ~!?泊まりたい~!」

だが、リスティアは初対面の獣人の家に泊まりたいと言い張る。この時點で、アイリスはウォルトが危険な人でないことは理解していた。

何故なら、王様には初見で人の悪意を見抜く不思議な能力がある。私の知る限りでは百発百中だが、それでも萬が一はある。

どうしたものかと悩んでいると、ウォルトさんが口を開いた。

「リスティア。きっとアイリスさんには何か考えがあるんだ。ワガママ言っちゃ駄目だよ」

「えぇ~!?そんなぁ~!」

「それに、自分で言うのもなんだけど、ボクは素の知れない獣人なんだから、ちゃんと警戒しないと駄目だ。怖い目に遭うかもしれないからね」

「それはそうかもしれないけど……」

2人の會話を聞いて、アイリスは思った。

『優しくだけど、あの王様が叱られている…。しかも至極當たり前のことを言って…。ウォルトさんは、多分、まともで良い獣人だ』と。

我ながら単純だと思うが、お願いすることに。

「ウォルトさん。さっき言ったことを覆して申し訳ないのですが、2人とも泊まらせて頂いてよろしいでしょうか?」

「アイリス!」

リスティアは目を輝かせている。

「いいんですか?何か事があったのでは?」

「いえ。正直言うと助かります。遠くから來たもので、実は疲れていまして…。街に戻るには暗くなりますし」

「それは大変でしたね。そういうことなら遠慮なく休んで下さい。晩ご飯もボクが作ります。それまで、お風呂にでも浸かってゆっくりして下さい」

「ありがとうございます」

承諾してくれたことにホッとして花茶を頂こうと口に含む。

「お風呂!りたい!ウォルトさんも一緒にる?」とリスティアが無邪気にう。

「ブゥ~ッ!!ゲホッ!ゴホッ!」

アイリスは盛大にお茶を噴き出した。思いっきり鼻にる。

「リスティア…。冗談でも、の子がそういうことを口にしちゃ駄目だよ」

「えぇ~。冗談じゃないのに」

「余計、駄目だよ」

咳き込んで苦しみながらも、再度叱られている景を目にして、ウォルトさんはやはり常識があって信用できる獣人だと思えた。

その後、若干ウォルトを気にしながらも2人でお風呂にって汗を流す。

「すっごく気持ちいいね~!」

「本當に…良いお風呂です。木の浴槽なんて初めて浸かりました」

「ウォルトさんとりたかったな」

「それはさすがに容認できません」

「心配しないで!その時は、もちろんアイリスも一緒だから!」

「王様の命令であっても、絶対に無理です」

2人が風呂から上がると、ウォルトは夕食の準備をしていた。味しそうな匂いが漂っている。

味し~い!こんな料理、食べたことないよ!」

「本當に…味しいです」

「ありがとうございます」

ウォルトが作った見たこともない味な夕食に舌鼓を打った2人は、長旅の疲れを癒すようにフカフカのベッドでぐっすり眠った。

読んで頂きありがとうございます。

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