《モフモフの魔導師》45 いざ捜索

暇なら読んでみて下さい。

( ^-^)_旦~

次の日の朝。

ぐっすり眠ったリスティアとアイリスは、これまた味なウォルトの朝食に驚きつつ、相伴に與ってしっかり完食すると、いよいよ『タコウソウ』探しに出発することに。

ウォルトの優しく素樸な人柄に加えて、しっかり胃袋まで摑まれてしまって完全に懐いたリスティアは、手をつないでピクニック気分で歩いている。

「ウォルトは手が溫かいね!気持ちいい!」

「そうかな?自分じゃ解らないけど」

アイリスは2人のし後ろを歩く。

昨晩「何故、ここに泊まりたがったのですか?」と王様に聞いたところ、「ウォルトさんは良い獣人だよ!間違いない!」と笑顔で返されてしまった。

楽しそうな2人を橫目に、魔との遭遇に備えて周囲の警戒を怠らない。

ウォルトさんも獣人ゆえに戦闘はできるだろうが、その痩せた軀を見るに強さには疑問が殘る。不測の事態が起こった場合、私が何とかしなければ。

「ウォルト!目的地まで、あとどれ位?」

いつの間にか、さん付けもしないほど2人は打ち解けている。

「う~ん。この速さだと、2時間位かな」

「そんなに?結構遠いね♪」

「リスティアは、何だか楽しそうだね」

「普段、あんまり歩かないから楽しい!」

「そっか。しゆっくり行こうか」

「うん♪」

まるで人同士かのように甘い雰囲気を醸し出す王と獣人。アイリスは、2人の會話に若干焼けのような覚を覚えていた。

そんな中、ウォルトが急に聲を上げる。

「アイリスさん!リスティアを頼みます!」

「えっ!」

ウォルトは一目散に駆け出して、2人はすぐに見失ってしまう。

『速い!でも、一何が…?』

10分ほどその場で待っていると、ウォルトが戻ってきた。

「何かあったんですか?」

「いえ。魔の気配がしたのでちょっと確認に行ったんですが、気のせいでした」

「なるほど。びっくりしました」

「いえ。じゃあ、行きましょうか」

再び3人は歩き出す。

ウォルトは、ハウンドドッグという野犬のような魔を數匹倒してきたが、心配をかけないよう2人には黙っていた。

それから2時間。休憩を挾みながら歩き続けて、遂に目的地に到著した3人。

「ここが目的地だよ。正確にはあそこだね」

ウォルトが指差した先には、大きな崖がそびえる。その上の平らな部分に、タコウソウはあるらしい。

「あんな場所にあるの?」

「うん。間違いない」

「あの…ウォルトさん…。あそこに行くにはどうすれば?」と素樸な疑問をぶつける。

「この崖を登ります。危険なので、ボクが1人で行きます。2人はここで待っていて下さい」

「だめ!私も行く!」

リスティアが大きな聲を上げた。

「ウォルトは知ってるでしょ?タコウソウは自分でとったものでないと、渡しても意味がないって」

「もちろん。でも、リスティアが危険なことをして萬が一があったら、それは相手に喜ばれるのかい?」

「喜ばれない!けど、私は獨りでも行く!だって……このために私は來たんだから!」

力強い眼差しに確かな決意を見たウォルトは、それならばと別の提案をする。

「ボクだけなら崖を登る。でも、それ以外にもう1つ行く方法があるんだ。それにはアイリスさんの協力が必要だけど」

「私の?できることなら協力します」

「解りました。では、移しましょう」

崖を迂回するように裏側まで歩いて、目的地に著いたウォルト一行。

「ここは?」

3人の目の前には枝や蔓で隠された窟の口がそびえる。窟というには大きく見えるけれど。

ここで、ウォルトがこれからの行について2人に説明する。

「この窟はさっきの崖の上に繫がっているんですが…魔が出現します。なのでアイリスさんの力が必要なんです」

基本的に々と鈍いウォルトでも、さすがにアイリスの格好を見れば闘える者であることには気付いている。

「なるほど。それにしても、まるでダンジョンのような大きさですね」

「ここは…おそらく人々に忘れられたダンジョンです。基本的に魔は強くないんですが、油斷するとたまに強敵も出現します」

ウォルトはしゃがんで目線を合わせると、リスティアに語りかける。

「ボクがリスティアを守る。だから一緒に行こう」

「うん!」

リスティアは笑顔で頷いた。「いい子だ」と頭をでると、目を細めてフニャッとした表

が何のためにタコウソウを探してるのかは知らない。ただ、リスティアは強い意志を持ってタコウソウを採りに來たことは解る。

きっと、大切な人のため。

話を黙って聞いていたアイリスが、念のためウォルトに確認する。

「私が魔を撃退すればいいんですね?」

騎士は対人戦闘が主たる任務だが、魔との戦闘も経験はある。

「いえ。アイリスさんはリスティアを守って下さい。魔の相手はボクがします」

「え?」

意外な答えだった。

「何度か來てるので、此処の魔はボクのほうが詳しいです。ボクが頼りないとアイリスさんが判斷したらいつでも替します。なので、最初はボクが闘います」

「わかりました。無理しないで下さい」

「ありがとうございます。じゃあ、行きましょう」

3人はそれぞれの決意を窟の奧へと歩を進める。中はひんやりとして薄暗い。

「そういえば…私たち松明も何も持ってないんですが」

「心配いらないです」

「え?」

『夜目(ヤコウ)』

ウォルトが詠唱すると、リスティアとアイリスの視界が明るくなる。暗い場所でもしばらくの間、視界を明るく保つことができる魔法。

「これって……まさか魔法?」

「しばらく暗闇でも目が見えるようになります。ボクは必要ないんですが、2人は危ないので」

魔法を使えることを隠すことより、今はリスティアを安全に目的地に連れて行く方が大事だ。2人の反応がし怖いけど、信じてくれるかな?

「ウォルト!!」

突然、リスティアが聲を上げる。

「びっくりした。なんだい?」

「魔法が使えるの?!獣人なのに!?凄いね!」

リスティアがキラキラした目で見つめてくる。どうやら獣人が魔法を使えないことを知ってるみたいだ。予想外の反応に照れ臭くなる。

「そうかな?ボクは、良くも悪くも普通の獣人じゃないんだ」

苦笑いのウォルトを見つめるアイリスは言葉が出ない。

獣人の魔法使いなんて…聞いたこともない…。驚きでけないでいると…。

「アイリスさん。リスティアを頼みます!」

3人の前に魔が出現した。

ケイブバットと呼ばれる蝙蝠のような魔だ。數匹がウォルト目掛けて襲いかかってきた。

アイリスは我に返って、すかさずリスティアを守る勢を整える。ウォルトは魔と対峙して手を翳した。

『火炎』

「ギィ~!!」

ウォルトが放った炎はケイブバットを焼き盡くし、灰となって地面に落ちる。その度と威力にアイリスは開いた口が塞がらない。

「凄い!カッコイイ!」

リスティアは興して大はしゃぎ。ウォルトは照れた表でまた苦笑した。

アイリスは、眼前で繰り広げられる景を信じられないといった面持ちで見つめる。

現に行われていることだというのに、己の常識が邪魔をして、疑問ばかりが浮かんでは消える。隣に立つ王様は、キラキラした目でウォルトさんを見つめていて鼻息も荒い。

ウォルトは、2人の眼前で襲い來る魔を次々討伐していく。『火炎』だけでなく『疾風』や『水撃』など、出現した魔の討伐に最も適した魔法と『強化』したを駆使して。アイリスはその姿から目が離せない。

彼は…私の知る常識とかけ離れた存在。

王都には騎士の他に魔導師も多くいる。カネルラ王城には、國鋭を集めた宮廷魔導師も控える。

自分は魔法を使えなくとも知識は必須。騎士はあらゆる驚異を想定しなければならない。魔導師や魔法をる魔との戦闘もないとは言い切れない。

それに加えて、治癒魔法や補助魔法は騎士にとっても有用なもの。有事以外であっても常に魔導師と流を持ち、盛んに意見換も行っている。今まで學んだ魔法の常識と、ウォルトさんはあまりにかけ離れている。

まず、なにより驚きなのは、彼が獣人の魔導師であるということ。

獣人は、人間やエルフとの構造が異なり、魔法を修得するのに必要なが存在しないと云われている。故にカネルラでは、建國より現在に至るまで、1人も魔法を使う獣人は存在していないと聞いた。

さらに、彼は多くの魔法を使い続けながらも、魔力が枯渇する様子がない。今も涼しい顔で次々魔法を繰り出している。おそらく膨大な魔力を所持しているのは想像に難くない。

詠唱に集中し、足を止めて戦闘魔法を放つ普通の魔導師と違って、弾戦を主としながら流れるように次々魔法を繰り出す姿は、まさに圧巻でしくさえある。魔法を見せながら踴っているようだ。

魔法の屬は、武と同じで人によって適がそれぞれ違うらしく、火、風、氷など1つの屬を極めるのが魔導師の常識だと聞くが、どの屬も高い水準で使いこなしているように見える。

そして…今の時點でも凄い魔導師だと斷言できるのに、素人目にも明らかに全力の魔法ではないと解る。表や魔力からも疲れをじとれない。とにかく々と規格外の獣人を目にして、複雑な心境。

その後も、リスティア達に危険が及ばぬようウォルトは魔を討伐していく。リスティアの護衛を任されたアイリスは、魔を1も撃ちらしていないため出番はない。

その大きな背中と、仲間を守り抜くために闘うさまは、アイリス達に安心を與え、この人がいる限り何が起きても大丈夫とさえ思えた。

ウォルトの闘う姿を見つめながら、に去來する想い。

『もしも、彼が私達の仲間だったら…。一緒に王や民を守れたら…』

そう思う自分と裏腹に、騎士としての気持ちか、もう1つのが顔を出す。

『力と魔法を兼ね備えた獣人に、騎士の力で挑んだら勝てるだろうか』

著実に歩を進めて、出口に辿り著いたウォルト一行。今回のダンジョン進行では強敵は出現せず、ウォルトはホッとをなで下ろした。

『夜目』の魔法は明るいところで使用すると目が潰れるかもしれないと話し、解除してから外に出る。

すぐにリスティアが駆け出した。

「ホントにタコウソウだ!本で見た通りだよ!」

「うん。よかった」

「本當にありがとう!私たちだけで、ここに來るのは絶対無理だったよ!」

リスティアは凄い喜びようだ。無事に連れて來ることができて良かった。

「これが…タコウソウ。綺麗…」

「アイリスさんは見るの初めてですか?」

「はい」

【多幸草(タコウソウ)】は世界的に珍しい高原植の一種。4の花が一カ所に群生する質を持ち、それぞれにしい花を咲かせる。

花のにはそれぞれ意味があり、多幸草を贈られた者には、贈られた花のに応じた幸せが訪れるといわれている。

手にれることは非常に困難で、理由は不明だが人の手で栽培に功した例はない。

「そんな謂れがあるんですね…。初めて知りました。この花のために…初めて會った私達を、こんなところまで…」

申し訳なさげに語るアイリスにウォルトは微笑みかける。

「大切な誰かに幸せを運ぶために、在る場所も知らないままこんな辺鄙な森まで來て…高い崖を目にしても「獨りでも行く」と言ったリスティアの目は本気でした。それだけでボクにとって信用に値する人間です」

「ありがとうございます…」

そんな話をしていると、リスティアが駆け寄ってくる。

「ウォルトには、何かお禮しなきゃね!」

「そんなの要らないよ。友達だろう?」

リスティアは大きな目を見開いた。直ぐに花が咲いたように笑う。

「違うよ!解ってないなぁ!」

ちっちっ!と人差し指を左右に振る。

「え?」

「私とウォルトは…ダンジョンという生死の境をともに潛り抜けた『生涯の親友』だよ!解った?」と無いを張った。

意外な臺詞に一瞬だけ目を見開いて直ぐに表が綻ぶ。何故か、リスティアに言われるとすんなりれようと思えた。ボクに、こんな小さな親友ができるなんて思いもしなかった。

「そうだね。ボクらは親友だ。だからお禮なんていらない」

「そうきたか!がないというか、お人好しなんだから!」

自分が言っておいて、そんなことを言い出す。

「ボクはお人好しじゃないけど、こんなじなんだ。…リスティア」

「なぁに?」

「君が誰に花を贈るのか知らない。でも、その人に幸せが訪れることを心から願ってる」

そう言って微笑んだ。

「ウォルト…。ありがとう…」

笑顔なのにリスティアの瞳から涙が溢れる。

リスティアは4のうち2の花を數本摘むと、ウォルトの用意した保存用の花瓶にれて大事に持ち帰った。

読んで頂きありがとうございます。

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