――――――『最悪だ。』

別室でリリアン様やリタ達と更に數著試著をしながらも、さっきの言葉が頭から離れなかった。

やっぱり結婚式を挙げなくてよかった。

普段ならあまり著ないデザインはしウエディングドレスに似ていた。

リリアン様の見立てで々とドレスを持ってきてくれるが、服に負けるんじゃないかと思いながら試著したドレスは思いのほか似合っていた。……と思っていた自分が恥ずかしい。

もう、……それはもう、ものすごく恥ずかしい。

あの結婚式の日も飾り立てた自分が慘めだったのをこの數日で忘れていた。

彼には綺麗で、洗練された人がいるのに、辺境から出て來た田舎者が彼の目にどう映るかなんて分かりきっていたのに。

「……ンノ？アンノ？」

リタが心配そうに顔を覗き込んでいた。

思わずハッとして、顔を上げると、リリアン様も眉を下げて心配そうな顔をしている。

「あ……、ごめんなさい。リリアン様、私はドレスのことは分からないので、やっぱり実際ティツィアーノ様が來られてから選ばれた方が宜しいかと……。」

そうだ、ここに殘るつもりも、結婚するつもりもない。

公爵家に無駄なお金を使わせる訳にはいかない。

公爵家にはドレスを數著購したところでなんの痛手にもならないかもしれないけど、私が辛い。

買ったドレスは誰も著ないまま処分される。

公爵様の人も、婚約者に贈ったドレスなど著たいと思わないだろうし、私だったら絶対に嫌だ。

まだ誰か著てくれるなら良いけれど、処分されたドレスはまるで私の心が処分されたようで……。

「……では、何か他のものを見に行きませんか？私のドレスはもう注文しましたし、今流行りの新しいコスメが見たくて。」

リリアン様が気を遣ってくれたんだと分かる。

侍の分際で仕えるべき主人に気を遣わせて申し訳ないと思いながらも、なんと言って良いか分からず、笑って「そうしましょう。」というのが一杯だった。

――――――きっと、今日はこれ以上私に勧めてくることはないかな。と思いし安心して、次の店に向かった。

「お姉様！！このリップのがお似合いですわ！！」

そう思っていたのに、なぜか次の店でも押しがすごかった。

男陣は先程の一件の為、リリアン様によって別行をとらされている。

おかげで気は楽だが、こんなに椅子に座り、メイクの為にじっとしているのはに合わない。

リリアン様が、店の化粧品をしに行った時、思わずリタに言ってしまった。

「私、こんなに化粧品勧められてもいらないわよ。」

「良いじゃないですか、お嬢様。公爵邸を出る時、謝料がわりにドレスもコスメも全部いただいて行きましょう。」

「いや、こっちが一方的に婚約破棄したんだから、謝料払うのは私でしょう。」

「いいえ、人だか、人だかがいるのに関係を続けたまま結婚しようとしたのはあちらですから。」

「ええ？？」

そういうもの？誰にもきちんと言わず出てきた私に問題があるのは明白だが、リタは常に私の味方だから言ってもしょうがないと思い、反論しなかった。

「良いじゃないですか。綺麗になってお嬢様をぞんざいに扱ってきた男達に一泡吹かせてやるんでしょう？この際利用できるものは利用しましょう。どうせ普段著が騎士服のお嬢様一人ではこういった事はどうしたら良いかも分からないんですから。」

ざっくりと図星を言われ、容赦なく傷口に塩をり込んでくるリタに反論できるわけもなく、「そ……そうね。」と項垂れるのが一杯だった。

その時、リリアン様がウキウキで白を片手に戻ってきた。

「お姉様は普段お化粧されないからおに負擔がかかっていなくてとってもすべすべですね。これだけでとても綺麗に見えますよ。このおはおに潤いを與えるキリイオアの分がっていて、その働きを補佐するキナの実も一緒に――――――……。」

リリアン様は嬉々とし説明してくれるが、ごめんなさい。さっぱり分かりません。橫でうんうんと頷くリタを橫目に化粧をされていく。

「あぁ……、本當に綺麗。」

私の顔を見ながらうっとりと呟くリリアン様の脳には何か補正がっているようで、夢見る乙のような瞳になっている。

「あ、あのリリアン様。そろそろ私ではなく、皆様のものを……。」

そう言うと、ハッと夢から覚めたように真顔になり、

「そうですわね。ティツィアーノ様のを探しましょう。」

と宣った。

いや、結局私のかい！！

とがっくりと肩を落とすと、リタが真顔であるが、嬉々として説明を始めた。

「ティツィアーノ様はいつも普段著はきやすい服裝で、騎士服をお召しになっていることが多いですが、かわいいものが大好きです。」

思わず、リタの口を塞ぎたい衝に駆られるが、そんな事は出來ない。

「まぁ、可いものがお好きなんですか？」

當然意外だったのだろう。

可いものより、武が似合うと散々言われてきたし、自分も似合わないと思っていたので好きではないふりをしてきた。

「はい、いつも街に出ると、ドレスや可らしい小にも興味を惹かれていらっしゃいますが、ご自に似合わないとお思いの様で、見るだけにされていらっしゃいます。」

ねぇ、なんで言うかな？ていうかばれてたのね。

てか、何で言うかな。

公開処刑ですか？

「先日は仔犬に見とれて柱にぶつかっていらっしゃいました。」

ねぇ！！！

だからさ！！！

恥心で死ぬから！！

イメージじゃないって笑われるからやめてくれない！！？？

「ふふっ。」

そう笑ったリリアン様の目に嘲るようなは無かった。

「私も可いものが大好きです。以前仔犬が飼いたいと言ったらお兄様や両親に反対されたけれど、ティツィアーノ様が飼いたいと言ったら、きっとお兄様が飼ってくれるわ。」

そう優しく言ったリリアン様は、初めて會った時の彼と隨分印象が違った。

あんなに『ティツィアーノ』に敵意を剝き出しだったのに……。

この數日で何があったのだろうか。

私に言った容を咎められた？

そんな事を考えていると、店の外から悲鳴が上がった。

「きゃぁぁぁぁぁぁああ！！魔よ！！」