《パドックの下はパクチーがいっぱい/子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー》36 憎しみを抱いている人の話の行きつく先は
ハルニナの擔當は、ノーウェの會社の友関係を洗うことだが、まだ報告することはない、とのことだった。
當然である。ミリッサが擔當で、ハルニナは補佐役だで、まだ何もしていない。
フウカの擔當は、警察からの報収集ということになっている。
「じゃ、最後に警察から聞き出せたことを話すわね。まず私が疑問に思ったことは、今頃になってなぜ再捜査ってことになったのか」
フウカの人リオンによれば、匿名の通報があったらしい。
通報者の名前、年齢、別、いずれも不明。手紙という形で大阪の中央郵便局に投函されたらしい。
「リオン自はペーペーだから、その手紙を見せてもらってないんだけど、あれは事故ではない。調べ直せ。その理由として、ケイキを憎む人間は多數いる、とだけ書かれてあったらしい」
多數か。
ケイキを憎む人が。
それはあるかもしれない。
ケイキマスコットについては、よくない噂が流れている。
だからこそ、財団は躍起になってPRに努めているのだ。
「どうした?」
ジンがアイボリーを気遣っている。
「うん……」
そうか、もしケイキを憎む人がいるのなら、ノーウェではなくアイボリーが死んでいたかもしれないのだ。
ノーウェがあの日、ケイキの著ぐるみにっていたのは、例外的なこと。
いつもはアイボリーがっていたのだから。
誰もがそのことに気づいて、神妙な顔つきになっている。
わかりきっていたのに、今になって、自分たちのやろうとしていることの重大さに気づいた。
ミリッサにしてもそうだった。
學生たちがやること、として軽く考えていたかもしれない。
遊び気分ではないにしろ、ノーウェへの思いにかされて、言い換えればあの楽しかった思い出を再び思い起こしたいという不謹慎な考えだったかもしれない。
「アイボリー」
「なんでもない」
「顔、悪いよ」
アイボリーを參加させて、この會議をするとは、なんという配慮のなさ。
ミリッサは、どう収拾すればいいのか、すぐには思いつかなかった。
フウカの責任ではない。
顧問として、自分の落ち度だ。
フウカがアイボリーを気遣っている。
「ごめんね。気が利かなくて。あなたに聞かせる話じゃなかったよね」
首を振るアイボリー。
「いいえ、いいんです。気にしないでください」
ノーウェの辺を調査する方向で會議は進んでいる。
しかし、本當はアイボリーの辺調査でもよかったわけだ。
さすがにこれを口にする者はいない。
フウカは気付いていたのだろうか。
気付いていて、ノーウェだけにスポットを當てたのだろうか。
フウカなら、今語られていたノーウェの振る舞いを知っていたのかもしれない。
だからノーウェを。
とはいえ、はなはだ片手落ちとしか言いようがない。
いくらアイボリーが、優秀でまじめな學生だとしても。
「じゃ、話を戻すわね」
そのフウカは、場の雰囲気を戻そうとするかのように、朗らかに言った。
「警察の捜査の狀況は、詳しくは聞けていない。でも、わかったこともある」
リオンによれば、一から捜査を振り出しに戻したわけじゃないみたい。
一旦、事故という結論を出したんだから、念のために、という程度。関係者への聞き込み、ケイキちゃんマスコットの部構造などは調べたわけだし。
通報に沿って、ケイキちゃんに憎しみを抱いている人の洗い出しを始めてる程度。
再びアイボリーのに危険が迫る。
ケイキちゃんに憎しみを抱いている人。この話の行きつく先は、ノーウェではなく、アイボリー殺人未遂事件、に繋がっていく。
本當にそうか。
ノーウェは財団職員。
やはり、ノーウェ殺害事件でいいのかもしれない。
しかし、まさかこんな迷いをここで披する気はない。
だれも聞きたくはないだろう。
「最後にもう一つ」
イベント會社が廃業したそうなんだけど、それにもし訳があるんだって。
またもやアイボリーに関係した話だ。
ミリッサはすでに聞いている。
「あのケイキちゃんの著ぐるみに不合があったらしくて」
ノーウェの首に絡まったワイヤーの話。
「それが原因で、イベント會社は責任を取らされて」
廃業に追い込まれたという。
アイボリーの顔が幾分青ざめていた。
「じゃ、今日はここまで」
とお開きになったが、アイボリーが気にかかる。
アイボリーをこんな気持ちにさせたフウカは、いつものように、來週はみんなに幸運が訪れますように、と迎えの車に乗り込んだ。
京阪電車に乗り、京橋まで帰る間、ミリッサはアイボリーの様子を見ていた。
もう普段通りに振舞っているが、心には引っかかるものがあるようで、やっぱりサークルやめようかな、とジンに話していた。
ミリッサが引き止めるまでもなく、ジンとランが、気にしない気にしない、とめていた。
スペーシアはとうとう、最後まで何も発言しなかった。
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