《パドックの下はパクチーがいっぱい/子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー》妖怪の私が初詣?
「妖怪の私が初詣? 変だと思うけど」
というランを無理やり連れだして、競馬サークルR&Hは、京都藤森神社でお賽銭をあげていた。
もう、ノーウェやアデリーナの話題も、フウカの話題さえ出ることはない。
あのお館様の館の白砂の上でフウカが語った直後には、ハルニナはこう言ったものだ。
「だから最初に言ったでしょ。馬が教えてくれるって」
京都競馬場、秋のG1レースの勝ち馬。
覚えてる?
こうよ。
秋華賞
一著 イトシノレイチェル、の「イ」
二著 ウタエチョットマ、の「ウ」
三著 ジェイピーゼロイチ、の「ジ」
四著 ミンナノレイチェル
五著 ニゲロアヤ
花賞
一著 ハクシュウノリキガク、の「リ」
二著 レイチェルノウソ、の「ウ」
三著 マコトノデンセツ、の「デ」
四著 アレガハツコイ
五著 ハクシュウノウワキ
エリザベス王杯
一著 アイラブサリ、の「ア」
二著 マモノノカタオモイ、の「カ」
三著 ライラノロマンス、の「ロ」
四著 ツレナイニニ
五著 ワスレジノ
マイルチャンピオンシップ
一著 ルンチャッチャ、の「ル」
二著 イコマファイル、の「フ」
三著 ウソノカオリ、の「ウ」
四著 サリノオモイデ
五著 オレガワルカッタ
各一著の馬名からは、ルリイア。
各二著の馬名からは、フウウカ。
各三著の馬名からは、デジロウ。
という名が連想される。
「でも、外したよ」
と、茶化すジンに、
「往々にして一番人気は來ないってこと」
とハルニナは笑いを取ったものだ。
「もし、マイルチャンピオンシップにボクラノレイチェルが來たら、ルリイアの代わりにアイボリーとなるところだったし、ミリッサもアサツリもここに名を刻む可能はあったんだよ。例えばアサツリなら」
「もう、意味ないし」
「じゃ、ミリッサの場合は」
「聞きたくないって」
と、ジンが笑って切り捨てたものだ。
それきり、その話題は封印されたわけでもないが、誰も口にしない。
フウカのフクロウには草、つまり小妖怪が取り付いていたという。
そいつがどうなったのか、ミリッサ含めて、誰も関心はない。
むしろ、関心はR&Hの幸いな未來に向く。
次の三年生には、部希者がたくさんいると聞く。
初めて他の學部からも。ミリッサの授業をけていない學生も。
今、部長は欠員。
春になれば、決まるだろう。
ジンか、アイボリーに。
ランの可能だってある。
學校をやめると言い出しているが、さて、どうなることやら。
きっと、殘ってくれる。
もちろん、実は妖怪だ、なんてことは白砂に集ったメンバー以外には知られていない。
あれ以來、ミリッサは誰とも個人的に話す機會はなかった。
ジンともアイボリーともルリイアとも。
できればハルニナとは話しておきたかったが。
話し足りないことがあるような気がして。
そして誰よりも、フウカと。
何を話すか、難しいが、お館様が言ったように、自分の気持ちをきちんと言葉にして。
そして謝らなくては、と思っていた。
「ガリさんのこと、どうする?」
ジンとアイボリーが話している。
「職員がサークルにったらダメっていう決まり、あるのかな」
「さあ」
「ってくれたらうれしいね」
「彼、ストイックだから、的中の嵐だったりして」
「じゃ、ミリッサ先生、形なしだ」
ハルニナは、卒業をものにすることができるだろう。
大學をやめると言い出したが、引き止めが奏功し、猛勉強を始めたのだ。
今更ながらだが、卒業論文にもを出している。
もともと、頭はいい。
無事卒業できるだろう。
PHカニとの抗爭次第ではあるが、メイメイがきちんと補佐している。
「來季のサークルのルール、見直さない?」
「追加でしょ」
「パドックは見る」
「先輩後輩の區別はなし」
「レースとパドック以外では人を束縛しない。自由行」
「G1レースは、前もって買い目公表」
「ミリッサが言うように、各人、常に品格ある行を」
「これまで通りね。それ以外に?」
「こんなのはどう? ペットロボット止」
「えっ、ジン。三四郎、連れてこないの?」
「うん」
「ふーん。でも、競馬と関係ない止事項はねえ」
「じゃ、G1レース日は複勝転がしをやる」
「それはいいかも。楽しいし」
「部活、たまにはテニスコートの庭園でやる。藤棚のベンチで」
「さあ、先生がいいって言ったらね」
「それから、それから、えっと、もう思いつかないね」
「結局、ほとんど今まで通り、か」
ジンのトカゲに、妖怪はもういない。
しかし、ジンのペット熱も冷めたようだ。
アイボリーは卒論のテーマを変更した。
公営競馬の地域経済に與える影響(京都編)、という無難なテーマに。
メイメイは大學職員の道を目指すという。
ポーハーハー・ワイの責任者は続けるつもりのようだ。
ただ、サークルの部長就任には全く興味はない。
「うわお! 手、舐められた!」
「神馬であろうと、馬はニンジン、好きだからね」
「よし。明日の金杯まで、手は洗わないっと」
「汚ね」
ヨウドウの推挙により、R&Hは最優秀サークルの特別賞を賞することになった。
恩を売られたのだ。
ヨウドウのごり押しによって、來春から擔當する科目を追加され、通學する曜日を増やされてしまった。
ミリッサはあれ以來、妖怪の村にも、コアYDにもUDにも、足を踏みれていない。
わずかふた月ほど前のことだが、どことなく、遠い過去のことのようにじた。
お館様の聲。お館様の舞。
あれは現実のことだったのだろうかと思うことさえある。
しかし、ランの目の下のほくろが大きくなったり小さくなったりするたびに、あれは本當にあったことなのだと思い直すのだった。
藤森神社の境は押すな押すなの大賑わい。
その波にジリジリと押し流されながら、ハルニナがミリッサの左腕を、ランが右腕を取ってきた。
ハルニナのもう一方の手をメイメイが。
ランの手をジンが、ジンのベタつく手をアイボリーが。
ランの服の裾をスペーシアが。
「はぐれないようにね。迷子、嫌だし」
ミリッサはハルニナを引き寄せた。
「前に話してくれた件」
「なに?」
「パクチー、飲ませてくれないか」
「え」
「俺は今の俺でいたい。余計な経験や知識はいらない。むしろ」
「むしろ、なに?」
「なんでもない」
「オマエたちがいてくれるなら、でしょ」
「ま、そういうことにしておこう」
ジンが言った。
「さ、明日は京都金杯。みんな、行くだろ!」
「おう!」
「ルリイア先輩から連絡があったんだ。京おせち、ご用意してお待ちしてます、って」
「うへ! 今度こそ、お金払えるようしなくちゃ」
「當たっても當たらなくてもね」
了
最後までお読みくださり、まことにありがとうございました。
書き始めのころ、もうちょっと謎解きの場面を多く、と思っていましたが、書きたいエレメントが多すぎて、結果はこの通り、犯人探しという意味では中盤から見え見えの狀態になってしまいました。
でも、これはこれで楽しいお話になったかなと、自畫自賛しています。
(書き終わったことによる高揚ってやつですのでご容赦を)
推理小説の執筆に挑戦し始めて、かれこれ20年ばかりが経ちました。
最初のころは、推理小説らしく、誰かが誰かを殺して、その犯人を機と共に暴いていく、というストーリーでした。
誰かか誰かを恨んでという暗い面を、なんとか払拭しようと、楽しいサブストーリを盛り込むようにしていました。
おかげで、長すぎる、登場人多すぎて名前覚えられない、結果として登場人が立っていない、というご批評も常にいただいておりました。
確かに、WEBで読む小説が暗すぎても嫌ですよね。もっと明るく、さらっと、ニヤリと笑って。
人が何か恨みを抱いて、誰かを殺すというのもなんだかなあ。
それを考えるのも疲れるし。
ということで、十年ほど前からは、いっそのことサブストーリー重視の「ミステリー風」にしようと、スタイルを転換してきました。
「ニューキーツ」から始まる「トゥシーイントゥザヒューチャー」の4部作がそれです。
しかも人が殺されないミステリー小説。(人は死ぬんですが、それがメインじゃない)
今回は、近未來の日本が舞臺ですが、空気は「トゥシーイントゥザヒューチャー」の4部作とよく似たじになったと思います。
いかがでしたでしょうか。
もし、ご意見、ご想をいただけるようでございましたら、幸いに存じます。
なお、完結したとはいえ、これからまた何度も読み直し、誤字字、不適切な言い回しなどを推敲し続けて參ります。
本當にありがとうございました。
いつのことになる分かりませんが、次回作もよろしくお願い申し上げます。
まだ、「ニューキーツ」から始まる「トゥシーイントゥザヒューチャー」の4部作をお読みいただけない方は、どうぞそちらの方へお回りくださいませ。
【書籍化】宮廷魔導師、追放される ~無能だと追い出された最巧の魔導師は、部下を引き連れて冒険者クランを始めるようです~【コミカライズ】
東部天領であるバルクスで魔物の討伐に明け暮れ、防衛任務を粛々とこなしていた宮廷魔導師アルノード。 彼の地味な功績はデザント王國では認められず、最強の魔導師である『七師』としての責務を果たしていないと、國外追放を言い渡されてしまう。 アルノードは同じく不遇を強いられてきた部下を引き連れ、冒険者でも始めようかと隣國リンブルへ向かうことにした。 だがどうやらリンブルでは、アルノードは超がつくほどの有名人だったらしく……? そしてアルノードが抜けた穴は大きく、デザント王國はその空いた穴を埋めるために徐々に疲弊していく……。 4/27日間ハイファンタジー1位、日間総合4位! 4/28日間総合3位! 4/30日間総合2位! 5/1週間ハイファンタジー1位!週間総合3位! 5/2週間総合2位! 5/9月間ハイファンタジー3位!月間総合8位! 5/10月間総合6位! 5/11月間総合5位! 5/14月間ハイファンタジー2位!月間総合4位! 5/15月間ハイファンタジー1位!月間総合3位! 5/17四半期ハイファンタジー3位!月間総合2位! 皆様の応援のおかげで、書籍化&コミカライズが決定しました! 本當にありがとうございます!
8 87視えるのに祓えない、九條尚久の心霊調査事務所
『視えざるもの』が視えることで悩んでいた主人公がその命を斷とうとした時、一人の男が聲を掛けた。 「いらないならください、命」 やたら綺麗な顔をした男だけれどマイペースで生活力なしのど天然。傍にはいつも甘い同じお菓子。そんな変な男についてたどり著いたのが、心霊調査事務所だった。 こちらはエブリスタ、アルファポリスにも掲載しております。
8 137三分間で世界を救え!「えっ!ヒーローライセンスD級の僕がですか!」 就職したくないからヒーローになった男は世界で唯一のタイムリープ持ち。負け知らずと言われた、世界一のヒーローは世界で一番負け続けていた
ある日、地球に隕石が飛來した。大気圏に突入した際に細かく砕けた隕石は、燃え盡き 地上に居た人々にケガ人は出なかった。 その日、大量の流れ星が空に現れ、消えて行った。 SNSでは流れ星の寫真が溢れ、多くの人が話題に上げ、連日ニュース番組では街行く人に街頭インタビューをしていた。 數週間と時が過ぎ、話題にも上がらなくなった時に異変が起きた。 外見的変化が世界中から報告され始めた。 次第に外見の変化は無いが、「個性」と言われる能力が確認され始めた。 するとSNSでは自分の個性を載せようと、寫真、動畫がアップされ始めた。 そして事件は起きた。 隕石によって影響を受けたのは、人類だけでゃなかった。 動物にも変化が起きた。「突然変異」によって巨大化、兇暴性の増した「怪物」達が 人類に牙を向け始めた。 街を破壊して暴れまわるその姿は、まさしく「怪物」 生物の頂點に居た人類は、淘汰される危機にあった。 そんな中、個性を使った強盜事件、犯人は個性を使い犯行を行い 警察から逃げきる事に成功した。 世界中の國々で同様な事件が発生し対応に追われていた。 そんなある日、一人の男が現れえた。 街中で暴れ、警察が対応出來ずに困っていた時に、仮面を付けた男だけが犯人に向かって行った。 その様子はテレビ局のカメラや周辺に居た人々の攜帯でも撮影された。 個性を使った犯罪に、個性で立ち向かった勇敢な姿は見ていた人に勇気を與えた。 事件から數日後、政府がある事を発表した。 それはヒーローの組織設立を國が進めると言う事、ただ後日発表された詳細は、公務員として雇用するわけでは無く、成果報酬型のフリーランス。 報酬はバイトと変わらず、自分の個性を使って楽に稼げると、期待していた人は報酬もさることながら、他があからさまに酷いと、SNSで政府を批判した。 そんな事があった為に人は集まらなかった。 そんな時だった。 一人の資産家が政府に代わって新たなヒーローの組織「イポテス」を設立した。 ヒーローとして怪物から街を守り、個性を使う犯罪者達から市民を守るヒーロー。 この物語は「無敗のヒーロー」と言われた男、赤波新屋の物語である。 カクヨム掲載中
8 193現実で無敵を誇った男は異世界でも無雙する
あらゆる格闘技において世界最強の実力を持つ主人公 柊 陽翔は、とある出來事により異世界に転移する。そして、転移する直前、自分を転移させた何者かの言った、自分の幼馴染が死ぬのは『世界の意思』という言葉の意味を知るべく行動を開始。しかし、そんな陽翔を待ち受けるのは魔王や邪神、だけではなく、たくさんのヒロインたちで━━━ ※幼馴染死んでません。
8 120転生したらロボットの中だった(ただし、出る事はできません)
自分が目覚めたらわけわからない空間にいた。なんか半身浴してるし、変な聲聞こえるし……更には外が囂々してる。外の様子がわかるようになると、なんと魔王と勇者が最終決戦してた。その場にいる自分ってなんなんだ? って感じだけと、変な聲の話では二人の戦闘でこの世界がヤバイ!? 止めなくちゃ――と動き出す自分。それから事態はおかしな方向に進んでいくことに!?
8 195異世界でもプログラム
俺は、元プログラマ・・・違うな。社內の便利屋。火消し部隊を率いていた。 とあるシステムのデスマの最中に、SIer の不正が発覚。 火消しに奔走する日々。俺はどうやらシステムのカットオーバの日を見ることができなかったようだ。 転生先は、魔物も存在する、剣と魔法の世界。 魔法がをプログラムのように作り込むことができる。俺は、異世界でもプログラムを作ることができる! --- こんな生涯をプログラマとして過ごした男が転生した世界が、魔法を”プログラム”する世界。 彼は、プログラムの知識を利用して、魔法を編み上げていく。 注)第七話+幕間2話は、現実世界の話で転生前です。IT業界の事が書かれています。 実際にあった話ではありません。”絶対”に違います。知り合いのIT業界の人に聞いたりしないでください。 第八話からが、一般的な転生ものになっています。テンプレ通りです。 注)作者が楽しむ為に書いています。 誤字脫字が多いです。誤字脫字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめてになります。 【改】となっているのは、小説家になろうで投稿した物を修正してアップしていくためです。第一章の終わりまでは殆ど同じになります。
8 95