《後は野となれご令嬢!〜悪役令嬢である妹が婚約破棄されたとばっちりをけて我が家が沒落したので、わたしは森でサバイバルすることにしました。〜》サバイバル開始(二回目)ですわ!
修道院には、ヴェロニカとチェチーリアが二人で逃げたということにしてしいと頼んだ。できれば一、二日経ってから、王都に連絡をしてしい、とも。
王都に連絡を取ることは同時に二人が追われることも意味する。修道院にはできるだけ迷をかけたくなかったが、なるべく距離を稼いでおきたかった。もう一人の背いた者、グレイについても、いずれは王都も知ることになるだろうが、あえてこちらから行を一緒にしていることを教えてやるつもりもない。
もちろん、アルテミスも一緒だった。
三本足のかわいい彼は、ヴェロニカが去ろうとすると途端に不安げに鳴くのだ。置いていくことなどできかなった。
「ポチ……じゃなかった、アルテミスがかわいそうじゃありませんか? 怪我も治ったばかりなのに」
「何が幸せかなんて、誰にも分からないわ。この子が一緒に來たいというなら、それが一番いいのよ」
チェチーリアにはそう言ったが、実際のところヴェロニカがアルテミスと離れたくなかった。もう二度と、なにも失いたくはなかった。
「どうやって王都へ行きますか? オレたちがここを出たと知ったら、兵士だって道を見張るでしょう。人がいない道があるとしたら……」
グレイの目線は王都がある方角に向けられているが、見えるのは雪を被り始めた山脈であり、目的地はその先だ。
彼が不安にじているのは聲の調子から明白だった。これから待ちける未知の試練を恐れているらしい。
「どうやって? 決まってるじゃない」
ヴェロニカは、不敵に笑う。
「森の中で、サバイバルよ」
*
「お、お姉様速いですわ! し待ってくださいまし!」
はあはあと息を切らせながらチェチーリアが登る。ヴェロニカはグレイが妹の手を取って引っ張るのを立ち止まって待っていた。橫を歩いていたアルテミスも立ち止まる。皮の友人は三本足だというのに、それに気がついていないかのようにすいすいと歩いた。
「一日歩けば慣れるわ」
妹をめながらまた歩く。登り続けるのは永遠に疲れ続けるとも思えるが、不思議なもので、一日もすればが慣れてしまう。それは経験から來る事実だった。
事前にグレイとともに地図を見ながら進む道を決めていた。
まだ周囲には木々が生えているが、高度がますにつれ草は低くなり、代わりに雪が現れるだろう。ヴェロニカにとって雪山は未知である。だが、他に道はなかった。
「鹿だ……」
グレイが前方に目をこらしたのでヴェロニカも見る。し先の木の影に、座り込む鹿の姿があった。草を食むでもなく、ぼんやりと空中を見つめている。こちらに気がついているのか、耳はぴくぴくとく。
鹿の目は良くない。代わりに、絶えず集音のような耳で報を拾う。
「撃ちますか」
グレイもそれなりに知識はあるようで、即座にそう言った。チェチーリアのが固くなるのがじられた。
ヴェロニカは銃を向けるが、當たらないだろう、と直する。いつしか獲に弾が當たるか當たらないか、瞬時にじ取れるようになっていた。
その通り、鹿はその気配をじて、ささっと逃げていってしまった。
ほっとチェチーリアが息をつくのが聞こえた。それから慌てたように咳払いをすると、
「ざ、殘念でしたわね!」
取り繕ったようにそう言った。妹が鹿の命を奪うのに抵抗をじているのには気がついていた。まるで初めて森へった時の自分のようだ、とヴェロニカは思った。
*
「だけどお姉様かっこいいですわ」
休憩がてら巖に腰掛けたところでチェチーリアがそう言う。アルテミスがその傍らででられている。
「全然疲れたご様子もないですし、銃だって……。一どうやって覚えたんですの?」
「死ぬ気になればなんでもできるものよ」
「森で本當は誰かといたんですの?」
チェチーリアの目は純粋な疑問をヴェロニカに投げかける。ヴェロニカの妹だけあって、なかなかどうして鋭いものだ。誰にもロスの話はしていなかったのに。
グレイは地図を広げながら、靜かに姉妹の會話を聞いている。
「山の神様に々教えて貰ったのよ」
「それってアルテミスですか?」
「……さあ? どうかしらね」
「どうなのです? アルテミス。あなたは全部見ていたのでしょう?」
チェチーリアが優しくアルテミスにれる。アルテミスは何もかも知っているが、何も答えない。口の堅い友人は、賢そうな目でヴェロニカを見つめる。
「山の神様には何を教わったんですの?」
「うーん……そうね。銃の撃ち方とか、食べられるものとか。他にも々」
「どんな方だったのです?」
「どんなって……。レディファーストもなってないし、むさいし、怖いし、髭が汚かったわ」
思い出して思わず笑った。ロスという男は本當にヘンな奴だった。
遠くじていたあの日々が、森の中にいると鮮明に思い出される。木々のざわめきも、生きの息づかいも、土の匂いも強烈だ。
辛く、恐怖をじる生活だった。だけど、それだけじゃない。じていたのは、それだけじゃなかったはずだ。ヴェロニカのが、溫かくなる。
「優しい人だったのですね、山の神様は」
どこをどう聞いたらそんな想を持つのかと、ぎょっとして妹を見た。相変わらず大きな瞳でヴェロニカを見つめている。勘違いを正さなくてはと慌てて否定した。
「全然優しくないわよ! それに人というより、ゴリラに近いわ!」
「だけどお姉様、山の神様のお話をするとき、とても楽しそうでしたわ」
チェチーリアが意味ありげにいたずらっぽく笑ったので、その額を軽くつつく。そうするとチェチーリアはケラケラともっと楽しそうに笑った。たまらずヴェロニカも笑う。大聲で笑い合う道連れたちに何があったのかとグレイが顔をあげても、まだ笑っていた。
ヴェロニカは幸せだった。こうしていると、ずっと小さかった頃に戻ったみたいに思えたのだ。
が、ふいに違和を覚え、ヴェロニカは後方を振り返る。アルテミスも同時にすくっと立ち上がった。
「どうしたんです?」
急なきにグレイも即座に反応する。彼は手に修道院で半ば無理矢理持たされた長銃を握っていた。
(気のせいかしら)
視界の隅で、何かが見えた気がしたのだ。だが、今目を凝らしても姿は確認できない。ぞわり、と鳥が立つ。
「……獣が偵察しに來ているのかもしれないわ」
ここは人間の領域ではない。いつだって、森は彼らのものだった。
ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし
貧乏子爵家の長女として生まれたマリアはギャンブル好きの父、見栄をはる母、放蕩をする雙子の弟を抱え、二月後のデビュタントに頭を抱える14才。 祖父から堅実なお前にと譲られた遺品と鍵つきの祖父の部屋を與えられたものの、少しずつ減らさざるを得ない寶物に嘆きつつ何とかしたいと努力していたが、弟に部屋に侵入され、祖父の遺品を盜まれた時にブチキレた! 一応、途中の內容の為に、R15を入れさせていただきます。
8 181引きこもり姫の戀愛事情~戀愛?そんなことより読書させてください!~
この世に生を受けて17年。戀愛、友情、挫折からの希望…そんなものは二次元の世界で結構。 私の読書の邪魔をしないでください。とか言ってたのに… 何故私に見合いが來るんだ。家事などしません。 ただ本に埋もれていたいのです。OK?……っておい!人の話聞けや! 私は読書がしたいんです。読書の邪魔をするならこの婚約すぐに取り消しますからね!! 本の引きこもり蟲・根尾凜音の壯絶なる戦いの火蓋が切られた。
8 186天界での僕は神様の旦那?
ある日、不運なことに交通事故に遭ってしまった獨り身の主人公。 天界で神様とご対面!そこで神様からつげられた一言!「私の旦那になりなさい!」 その一言から始まる、戀愛物語!
8 75脇役転生の筈だった
乙女ゲーム『エデンの花園』に出てくる主人公……の、友人海野咲夜。 前世の記憶というものを取り戻した咲夜はある未來のために奮闘する。 だって、だってですよ? この友人役、必ず死ぬんですよ? 主人公を庇って死んじゃうんですよ? ……折角の2度目の人生、そうそうに死んでたまるかぁぁぁ!! という思いから行動した結果、何故か私を嫌っている筈だった兄が重度のシスコンと化したり…。 何故か面倒事に巻き込まれていたり? (特にシスコン兄の暴走のせいですが) 攻略対象者とは近付かないと決めていたのに何故か友人になって…。 しかもシナリオとは違って同じクラスになってるし…!
8 119草食系男子が肉食系女子に食べられるまで
女性が苦手で、俗に言う草食系男子の雄介は、ある日クラスのアイドル的存在の加山優子に告白される。 しかし、その告白を雄介は斷ってしまう。 それでも諦めきれずに、熱烈なアプローチを繰り返してくる優子。 しかし、主人公は女性が苦手な女性恐怖癥で? しかも觸られると気絶する?! そんな二人の戀愛模様を描いた作品です。 毎日更新実施中!! 良かったら読んで感想をください! 2017年10月22日現在 PV 30萬件突破! ブックマーク700件突破!! 本當にありがとうございます!! バレンタイン特別編公開中!! http://ncode.syosetu.com/n7433du/ ブックマークや評価をしてくださった方、ありがとうございます。更新は遅いですが、必ず完結させますので、お付き合いいただければ嬉しいです。 コメントもお待ちしています!! 11月12日完結
8 161自稱空気の読める令嬢は義兄の溺愛を全力で受け流す(電子書籍化進行中)
ただいま、電子書籍化進行中です。 加筆修正をして、ラストや途中エピソードなど、少し違う話になっていきます。 なろう版はなろう版で完結まで走りぬきますので、どうぞよろしくお願い致します。 「空気を読める女になりなさい」という祖母の教えを守って生きる令嬢チェルシー。祖母も両親も亡くなり天涯孤獨となった途端、遠い親戚だという男爵一家が現れて家を乗っ取られ、名前さえ奪われてしまう。孤児院に逃げたチェルシーの前に現れたのは、真の親戚だった。 優しい義両親につれられて向かった伯爵家で待っていたのは思春期を迎えた義兄。最初に冷たくされて空気を読んだチェルシーは、彼とはなるべくかかわらないように頑張ろうとするが、何故か婚約してしまい……? 「怪我をしたのか? 治療を……」 「あ、大丈夫です!」 「學園で苛められていると聞いた。俺がなんとかして……」 「大丈夫ですよ~」 「男共に付け狙われているようだな、俺が……」 「大・丈・夫、ですよーーーっ!!」 「聞けよ!兄の話を!!」 「大丈夫です!安心してください!ご迷惑はかけませんので!」 思春期を終えた義兄の溺愛をぶっちぎって、空気を読む令嬢は強かに生きていく! いつものコメディです。 軽い気持ちでお読みください。
8 161