《後は野となれご令嬢!〜悪役令嬢である妹が婚約破棄されたとばっちりをけて我が家が沒落したので、わたしは森でサバイバルすることにしました。〜》馬屋の匂いは強烈ですわ!
淺黒いに描かれた、異國を思わせるれ墨を、指でなぞるのが好きだった。
背中に差し掛かった時、彼は言う。
――背中の傷は兵士の恥だ。
――わたしは好きよ。
そう答えて、傷跡のひとつひとつに丁寧にキスをした。
模様を遮るように付いた無數の銃痕は、彼がヴェロニカを命を懸けて守り抜いた証のように思えたからだ。
*
「臭っ!」
んだ自分の聲で目を覚ました。獣の臭と糞の匂いが立ちこめる。
「よかった。死んだのかと思った」
聲が聞こえ、ぎょっとしてそちらを見た。ヴェロニカが助けようとしたが、ドレスの裾が土で汚れているのも気にせず、すぐ隣の地面の上に座り、じっと見つめていた。
つややかな黒髪に、見かけによらずハスキーな聲。著ている服は上等なもので、金持ちの娘のように見えた。
「あなた、無事?」
「……まあ、そう」
は頷く。その聲に、どこか聞き覚えがあるように思えたが、初対面のはずだった。
こわばった表を浮かべているが、怪我はないようだ。
「ここはどこなの? ……ひどい匂いだわ」
言いながら、原因はすぐに分かった。四方を壁に囲まれた屋のある小屋で、中に數頭の馬がいたからだ。
どうやら馬屋にいるらしい。
毆られた頭がズキリと痛む。
立ち上がろうとしたところで、ようやく違和に気がついた。がかないのだ。
縄がに食い込むほどにきつく、結ばれていた。
「噓、もしかして縛られてる?」
「そうだね」
縛られる心當たりはない。だが一つだけ思い浮かんだ。
「もしかして、わたしたち、拐されたの?」
「……あんた、ここに來る前のこと、覚えてないの?」
ふて腐れたように、彼は話す。それが本來の格なのか、こんな場面で気が荒くなっているせいなのかは分からない。
ヴェロニカは答える。
「覚えてるわ。あなたが男たちに取り囲まれてて、助けにったら、昏倒させられて……っていうか」
また別の違和に気付く。
「どうしてわたしだけ縛られてるの?」
ヴェロニカのは柱と結びつけられているが、側にいるのは自由だ。
「さあ、暴れそうに見えたんじゃない?」
「なんてこと!」――むかつくわ!
をよじるが、簡単にはほどけそうにない。
「馬屋ってことは分かったけど、一どこの馬屋なのかしら」
さあ、とは首を橫に振る。
「……男たちに連れてこられた時、目隠しをされていたし。森の中ってことは間違いないと思うんだけど」
話しながら落ち著いてきたのか、の口調もらしくなっていた。
「あたし、町で攫われたのよ。森に差し掛かったところで逃げようとしたけど捕まっちゃって。そこにあなたが現れたの」
「拐される理由に心當たりがある?」
「……家が商人をしていて、小金持ちだからかしら? 代金目當てかもしれないわ」
だとしたら、金を貰うまではの安全は保証されている。ヴェロニカにしてもすぐに殺されなかったのは、おそらくなりからどこかの金持ちと思われ、同じく利用価値があると思われたためだろうと納得した。
「逃げ出すチャンスはきっとあるはずよ。待ちましょう」
言うとの目が、わずかに開いた。
「あなたって、すごいのね」
神力に対してか、狀況をすんなり飲み込んだためか、あるいは危機管理能力のない途方もない阿呆だと思われたのか。
心された意図を計りかねるが尋ねる前に言葉が続けられた。
「さっき見たけど、馬屋の外に見張りは二人。だけど周囲には、もっと大勢の男たちがいる。逃げ出すのは簡単じゃないわ」
「そうね。普通はそうよ」
狀況を悲観するを元気づけようとヴェロニカは言う。
「あなた、名前はなんておっしゃるの? わたしはヴェロニカ・クオーレツィオーネよ」
「あたしは、ミシェルよ。よろしくヴェロニカさん」
「心配しないでミシェルさん。夫なら、わたしがいないことに気がついたら、必ず助けに來るはずだから」
言い切ると、ミシェルがクスリと微笑んだ。
「旦那さんを信頼しているのね」
ヴェロニカも笑う。
「しているのよ」
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