《後は野となれご令嬢!〜悪役令嬢である妹が婚約破棄されたとばっちりをけて我が家が沒落したので、わたしは森でサバイバルすることにしました。〜》闇夜の狩りですわ!

――秋の蟲が好き勝手に鳴く聲が聞こえていた。

誰もまさか気付かない。この闇の中に、殺人者が紛れているなど。

集落のり口に、見張りと思しき人間は四人。

最も外側にいる一人の男の背後に周り、元に刃を付ける。ひと思いに引き抜くと、を吹き出しながら絶命した。地面に倒れる前にを抱き留め、音を立てないように橫たえる。

「ああ? どうした」

違和を覚えたのか、別の男が振り返る。その額に、ナイフをぶち込んだ。

聲も立てずに見張りは順番に死んでいく。

満月の、靜かな夜。

集落の中の男たちの聲の他には、蟲の鳴く聲が聞こえるだけだ。

要塞の外で四人、聲を上げる暇さえなく命を失ったことなど、誰一人気がついてはいなかった。

そっと壁の中にる。

闇に隠れながらロスは周囲を窺った。

まず目にったのは砲臺だ。

(まじかよ)

集落には居住していると思われるテントがあり、いくつかには明かりが付いていた。數人がうろついている。見つからず徘徊するのはし骨が折れることだ。

の気配もする。家畜か馬か。

(冗談にしては金がかかってやがるな)

男たちは武裝し、大量の武を持っている。

近頃、商売をしている時に聞いた噂を思い出す。再び、反勢力のきが活発になっているらしい、という噂だ。

その話をしたのは軍人で、聞いたときはロスを軍に戻すためにでっち上げた適當な話だと取り合なかったが、どうも事実であったらしい。

倉庫らしき小屋も數戸ある。そのの一つにだけ、見張りがいる。もしヴェロニカがここにいるのなら、その中だろうと思われた。

ふらりと、ロスは暗がりから躍り出る。

蟲の聲が突然止んだ。

自然は聡い。人間よりも遙かに。

人は鈍い。命の脅威すらじ取れないのだから。

音を立てないように細心の注意を払いながら小屋の前に移する。見張りの一人の心臓に、ナイフを突き立てた瞬間、再び蟲は鳴き出した。

ロスが手際よく殺人を犯していく姿を、シャルロッテは見つめていた。心は恐怖に戦慄いた。ロスをしている。だが、このままだと彼(・)が(・)危(・)な(・)い(・)。

「助けにいかなくちゃ……」

地面に置かれた銃を握る。

見張り靜かに葬り去ったロスが小屋の扉に手をかけたところで、闇夜を切り裂くような鋭い音がした。

――バン。

聞こえるはずのない音に、驚き振り返る。

先ほど森の中に置いた銃を握りしめたシャルロッテが、集落のり口に立っていた。

銃口から昇る煙が、風に流されていく。

「敵襲だ!」男の一人がぶ。

「ロスさん! 助けに來ました!」

明るいらかな髪が、月明かりに照らされた。風にふわりと髪が揺れたとき、我に返ったロスは小屋の見張りの死から銃を抜き取ると、に向かう男たちに放った。

(余計なことを……!)

すぐさまシャルロッテに駆け寄ると、その細く白い手を引き、ついでに傍らの死を蹴り上げる。

銃聲に気づき向かってきた男たちは、視界いっぱいに仲間の死が吹っ飛んでくるのを見て、ほんの一瞬、きを止めた。

生じた隙を見逃さず、即座、建の影に隠れる。

靜寂は瞬く間に喧噪に変わる。銃弾が降り注いだ。

こうなっては、隠は不要だ。

「なぜ來た!」

「わたしも、加勢しようと思って……!」

「邪魔にしかならない」

「ごめんなさい……」

こうも素直だと調子が狂う。怒りすら沸かなかった。

接近戦でまず防がねばならないことは同士討ちだ。敵が味方か、瞬時に識別撃をしなくてはならない。

その分ここは楽だった。自分以外、皆敵だからだ。

から、なるべく照準にならないよう、右目から耳を數秒出させ、銃口を僅か表出させる。それだけで十分だった。

男たちの急所目がけて銃を撃ち込む。集落の中の命が、一つずつ確実に消えていく。

武裝はしているものの、兵士ほどには鍛えられていない。勝ち目がどちらにあるかなど、分かりきったことだった。

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