《後は野となれご令嬢!〜悪役令嬢である妹が婚約破棄されたとばっちりをけて我が家が沒落したので、わたしは森でサバイバルすることにしました。〜》一匹狼ですわ!
誰が聞いている訳でもない恨み言を、ヴェロニカはぶつぶつと呟く。
「……このわたしが、こんなにしているのに。今まで誰にも抱いたことのないくらいに、深く思っているのに。こんなに好きで好きでたまらないって言っているのに。しも嬉しそうな顔をしないし、なんなのよあいつ……」
たけど好きだ。今だって。止められないほどに。
目から涙がこぼれ出た。
いけない、考えすぎている。
こんな森で一人でいると、頭がおかしくなりそうだ。
そのときカタリ、と音がした。
――戸が開いている。
ミシェルの足音ならすぐに分かる。彼が帰って來たわけではない。
閉め忘れた戸が、風で開いたのかと思い、痛むを起こし這うように向かう。だがほんのわずか進んだところで、きを止めた。
戸の隙間から、こちらを見つめる者がいた。る目はヴェロニカを捉えている。生暖かい息さえかかりそうな距離。
開かれた口からは、を引き裂くのに特化した、鋭い牙が見える。
(ああ、ロスみたい……)
初めて會った頃の彼を思い出した。
野生を生き抜く者特有の、他者を寄せ付けない強い気配をに纏う。格からして、どう考えても勝てないと一目で分かる存在。
獲の価値を見定めるように、全黒い皮で覆われた一匹の立派な狼が、ヴェロニカを見ていた。
群れからはぐれたのだろうか。追い出されたのだろうか。
こんな森の中をたった一匹で彷徨い歩いていたらしい。
「……赤ずきんを殺しに來たの? 無知で愚かで弱い存在は、死んで順當だって、あなたもそう思ってるの?」
獣に話しかけるだ。端から見たら頓狂だろう。
床にをつけたままのヴェロニカは、なおも狼に語りかけた。
「殺すなら、殺せばいいじゃない」
これは弱いだけの獲だと判斷したのか、一歩狼が小屋の中に進んだ。
存外太い前足だ。並み良く、まだ若い。
鋭い爪と牙が見えた。
冬のつららのように冷たく尖る。
狼は、その口に獲の首を咥え、骨を折ってとどめを刺す。あの立派な牙を前にして、ヴェロニカの命など、吹けば飛ぶほど軽い。貴族であろうが、しかろうが、いくら人の社會の中で価値のある存在でも、捕食者の前ではただのだ。
「死にたくない」
愚かだと、ヴェロニカは自分を呪う。
さっき死んだ方がましだと口にしたばかりだというのに、んだ。
「死にたくない! 助けて! 助けてロス――!」
必死に呼んだのは、夫の名前だった。
いつか彼は助けに來てくれた。だから今も、きっと來てくれる。
剎那、狼は何かに気がついたように突然顔を上げ空中を睨んだ。
それからくるりと背を向け、戸を出ると瞬く間に去って行く。その背を追うようにして遅れて數発、銃聲がした。
まさか。
「ロス……?」
神が願いを聞きれ、彼を助けによこしたのだろうか。
だが戸の前に現れたのはミシェルだった。
銃を床に置くと、未だ床に這うヴェロニカに駆け寄ってくる。
「大丈夫?」
人を心配する、不安が混じった聲だった。
「怪我はない?」
「……な、い。平気よ……」
聲がれた。分かってる。ロスが來るはずがないことくらい。
こんなに悲しいのは、疲れて痛くて弱くなっているせいだ。
(泣くことじゃないわ……)
だけどなくとも、ミシェルはヴェロニカを殺そうとはしていない。狼よりはいくらかましだ。
「よかった……。びっくりした。あんたに何かあったら、オレも死んじゃうよ」
そう言って、ミシェルはヴェロニカを抱きしめた。
あれほど嫌悪しかじ無かった彼の溫が、驚くことに今は安心する。
狼は恐ろしかった。ヴェロニカを、まるでただの獲としか思わない、のないあの瞳。鹿を殺したヴェロニカとは違う。ヴェロニカを殺したって、狼は罪悪など抱かない。も憎しみもない存在。それが獣というものだ。
気付けば涙が溢れていた。
夫ではない男の腕にすがりつき、絶するように泣いた。ミシェルは優しく言う。
「……怖い思いをさせてごめんね」
ヴェロニカは泣き続け、ミシェルはその頭をただなでた。
「まいったな……本気でヴェロニカを好きになっちゃったみたい。安心して。オレが、ずっと守ってあげるから」
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