《後は野となれご令嬢!〜悪役令嬢である妹が婚約破棄されたとばっちりをけて我が家が沒落したので、わたしは森でサバイバルすることにしました。〜》鮮の雪上ですわ!
雪は吹雪に変化した。氷の粒が頬に當たり、痛いほどだった。
ミシェルは走り続ける。
肩が熱い。が溢れ続けている。
それでも歩みを止めなかった。
アーサーが諦めたわけではないことは、背後の圧迫するような気配から明らかだ。
やがて森は途絶え、雪原が広がる。
(まずい……!)
白い背景にが暴されては、木々の中より標的になりやすい。
焦った時には手遅れだった。
闇夜を切り裂くような高い音が周辺に反響したと同時に、ミシェルの足が銃弾に裂けた。
白い雪にが飛ぶ。バランスを崩したミシェルはその場に崩れ落ちる。
だがすぐに起き上がり、再び走り出した。立ち止まっている時間はない。ひたすらに前へと進むことだけを考えた。
片足を引き摺っていては、進むスピードは格段に遅く、加えて傾斜はきつくなった。
振り返ると、橫毆りの雪の中に、アーサーが追ってくる黒い姿が見えた。なぜ恩人と慕う人間に殺されかける事態になるまで至ったのか、理由さえ分からなかった。
「……止まるわけにはいかないんだ」
彼の思いに報いなくてはならない。
葉わなくても、彼が好きだ。たった一つの、強烈なだった。それは姉へのと同じで――永遠に消えることはない。
目前に崖と見紛うほどの更なる急斜面が見えたとき、思わずミシェルはんでいた。
「神様!」
そんな存在、信じていないはずだった。それでもどういうわけか、今は心から願った。
「見てるなら、オレに正義を全うさせてくれ!」
直後――一発の銃聲が聞こえた。
音からして、拳銃のように思えたが、アーサーが持っているのは自小銃だったはずだ。続けざまに聞こえたのは確かに小銃のもので、だから初めの一発は、聞き間違いだったのかもしれない。
アーサーがしびれを切らしてこちらへ撃ったかと思えたが、幸運にもかすってすらいない。どういうわけか、彼の歩みも遅くなったようだ。
(本當に、神様がいたのか)
何が起こったのかは不明瞭だが、この機會を逃さない手はない。極度の興狀態で、痛みももはやじない。
斜面に手をかけると、ミシェルは登り始めた。
* * *
背後から撃たれたのだと、アーサーが気がついたのは數秒経ってからだった。ミシェルを殺してでも止めなくてはならない時に、一何の邪魔がるというのだ。
腹から赤いが溢れる。
撃たれるなどあり得ない。一何者が――。
驚嘆たる思いで振り返ると、吹雪の白い視界の中、一人のが目にった。
「シャルロッテ……!」
こちらに拳銃を向けるのは、間違いなくシャルロッテ(出來損ないの聖)だ。
いつの間にここまで接近を許していたのだろう。追うのに夢中で、気がつきもしなかった。よもや、ロスに思いをぶつけることには異様な熱を燃やし、それ以外は片隅でぷるぷる震えていることしかできない哀れな娘が銃を撃つとは。
利用価値を見いだし彼を側に置いていた。前世の話も実に興味深いものだ。彼の言う“シナリオ”を知し上手く立ち回れば、この國で覇権を振るうのは容易い。ロスをくれてやると言ったら、あっさりと味方になった。
だがアーサーにとって、シャルロッテは同時に危険な存在だった。彼の信者はまだ存在する。敵対すれば、強大な勢力となるのは目に見えていた。
それ故、葬り去ろうとするのは當然の判斷だった。まさかそれを悟られたか。
(だが、この娘は死にたがっていた。無気力に部屋に籠もっていただけだ。それを葉えてやろうというのに、なぜ俺を撃つ!)
アーサーの知る彼には、これほどの行力と覇気などないはずだが、いつもの朧気な表とは違い決意に満ちている。
まぐれ當たりか、弾は腹に見事に命中している。震える手で銃を握りながら、シャルロッテはんだ。
「生きるためには、戦わなくちゃいけないのよ! だって人生って戦爭だわ! そしてわたしは、今度こそ勝者になる!」
言っていることは、相変わらず訳の分からない言葉だが、今まで見せたこともないほど輝く瞳だ。
アーサーに宿ったのは、怒りだった。
「このくそが!」
こんなたわいもない存在に刃向かわれるなんてあっていいはずがない。小銃を彼に向けると數発撃った。
中に銃弾を浴びた彼は、をまき散らしながら雪上に倒れる。
小さな障害に、かまけている場合ではない。
「この俺が、負けるなんてことがあっていいわけがないんだ……! 俺こそ正義だ。この俺こそが、人類の理想だ!」
かつて、戦場があった。
そこで出會ったのは、どうあっても追いつくことができない強烈な年だった。
憧れた。
それが、通常、男がに抱くだと気がつくのに、そう時間はかからなかった。そして気がついた瞬間――果てしなく絶した。己は、永遠に、父の期待に応えることはできない。
「俺は無価値ではない! 他のくそどもとは本的に違うんだ!」
生まれ出た瞬間から呪われているのならば。ならば――。
ならば、何か、意味があるはずだ。
アーサー・ブルースという人間が、アーサー・ブルースとしてこの世に形作られた、確かな意味が。
「この俺の存在は、偉大なことをし遂げるためにあるのだ! それこそが、俺の命の意味だ!」
意味がないならば、この存在は一何のためにあるというのだ。
あの時、年のために部下を殺した意味は。人の道理に外れたの意味は。
差別なく平等な世を作るためだ。彼のような人間を、一人でも多く救うためだ。
――なのに彼は、知らぬ間に救われていた。
腹を押さえながら、アーサーはミシェルを追う。
「なぜ、邪魔をするんだ……! 俺の理想は、お前達をも救うというのに……!」
急斜面の上に、昇るミシェルの姿が見える。
彼も手負いだ。間違いなく止められる。
相容れないというのならば仕方が無い。
「お前も、俺の敵だったというだけの話だ!」
小銃を構えた時、ミシェルが再び振り返った。その瞳に、果てしのない同が浮かぶのを見て、アーサーは思いがけず手を止めた。剎那腹が痛み取り落とす。銃はそのまま斜面をり落ちていった。
腹ばいになるようにして、斜面に手をかけた。が雪を染めていく。
「さねばならない……! それこそが俺の使命だ……! 俺は価値のある人間だ。この世に必要とされているんだ!」
自分が何を呟いているのかさえもう分からない。をかすのは、神力だけだった。
ミシェルがまた、こちらに顔を向けるのが見えた。その目は、シャルロッテのそれのように、ある種の決意がめられていた。
ミシェルが握る銃が、向けられていた。
アーサーの心臓が、嫌な鼓をした。姉を殺した男が、本當は誰か気がついたのだろうか。だとしても、なぜ彼は、あれほど悲しげな顔をしているのだろうか。
答えを導き出す前に、顔面を撃ち抜かれ、アーサーは斜面を転げ落ちていった。
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