《ネコと和解せよ〜ネコとカフェ店長の謎めく日常〜》32話 第二の事件

もうすっかり夕暮れだった。空は青黒くなりかけていた。

マユカは相當ミャーを気にったようだ。ずっと抱きしめたままだった。

店を閉めた後、杏奈と藤也はマユカを連れて送って行く事にした。

藤也一人で送ってもよかったが、見た目おじさんの藤也とぴちぴちJKマユカと並ぶのは、犯罪臭い。それにマユカもミャーを抱いたままだったので、しばらくそのままにさせても良いだろう。

カフェを出ると、杏奈はマユカに話しかけた。

「ところで、マユカ。あんたは學校ちゃんと行ってるの?」

『そうよ、學校は行かないとダメよ』

ミャーにまで注意されてマユカは明らかにドキッとした表を見せる。

「前に晝間、店に來たでしょ。だめよ、學校サボって何やってるの?」

「おいおい、杏奈。學校の先生モードになってるぜ。厳しい事言うなよ」

「藤也は黙っていてよ」

杏奈たちは商店街からゾロゾロと住宅街の方へ歩いていく。

杏奈が元學校の先生だと知ったマユカは明らかに萎していた。無理もないだろう。この年代で學校の先生が大好きという子高生は滅多にいないはずだ。もっとも杏奈は高校生のころガリ勉して英検一級をとったので、むしろ學校の先生には好かれていたが。

「學校好きじゃないんだもん。親が銃価だからってカルト娘って言うやつがいて」

「そんな事言うやついるの?」

マユカの話を聞いて杏奈は顔を顰める。いじめの原因は様々というが、親の屬が原因になる事も多いと聞く。こう言ったいじめの場合は、教師もいじめっ子の味方をするので顕在化しにくい。杏奈もこの手の話題は耳が痛い。杏奈の生徒の中には、不幸な事になってしまったものもいて、真澄がかなりを痛めていた事を思い出す。

「カルト娘かぁ。あ! うちで洗禮ければクリスチャン娘になれるぞ。そうだ、クリスチャンになればいい。いじめもなくなるかもしれんぞ」

『ちょっと、それは伝道というより勧じゃない、藤也?』

ミャーは呆れて突っ込んでいたが、マユカは真剣だった。

「もうカルト娘やめたいわー。クリスチャンの方が良さそう。獻金とか別にないんでしょ?」

「まあ、子高生からの獻金はないよ。獻金は収ある人の十分の一だけ。しかも強制じゃないし。でもうちの教會、働き盛りの人はいないからなー。おで俺は超貧乏さ。コンビニでバイトしようかねぇ。あはは」

現実的な事で杏奈にとっては笑えない冗談だったが、大笑いしている藤也の場がなごみ、マユカも笑っていた。

「學校行けないんだったら、私が英語教えてもいいわよ」

「えー、杏奈さんは怖そう」

『私は貓語なら教えられるわ』

「きゃー、なにそれ! めっちゃ教わりたい! エモい!」

マユカは手を叩いて子高生っぽく笑っていた。この様子だと杏奈はあまり心配しなくても良い気がした。ただ、勉強しないのは不味いから、し教えても良いかもしれない。

そんな事を考えながら藤也の教會のそばの道を通り抜け、坂口家に向かう。

相変わらず坂口家の壁や塀には銃価のポスターがってあったが、なぜか黒いマジックでイタズラ書きがされていた。教祖の顔に豚ハナが描かれたり、ハゲ、デブという悪口も書かれてる。

「なにこれ……」

マユカは言葉を失い、その隙にミャーは彼の腕から降りた。

ミャーは辺りを見渡し、クンクンと鼻を鳴らす。

「ミャー、どうしたの?」

杏奈はしゃがんでミャーの様子を見る。し異変をじているようだった。

『おかしい。嫌な的カンがするわ。マユカ、早くドアを開けて!』

マユカは急いで玄関のドアを開けようとしたが、すでに鍵が開いていていた。マユカはキティちゃんのキーホルダーがついた鍵をその場に落としてしまった。

「鍵が空いてるなんて」

「泥棒かもしれん。一応俺らも上がるがいいか?」

藤也の言う事にマユカも同意し、みんなで坂口家に上がった。

玄関や廊下も散らかっていてごちゃごちゃしていた。汚部屋と言うほどではないが、明らかに家事を手抜きしているのが杏奈でもわかった。微妙に汚い部屋を見ながら、杏奈も嫌な予しかしない。

「ここがリビング」

マユカに案されて、一番大きな部屋のリビングにると、信じられない景がひろがっていた。

坂口家の妻、梨子が倒れていた。

しかも頭からを流している。周りに砕けた花瓶と枯れかけたチューリップやかすみ草が散らばっていた。

「ママ! ママってば!」

マユカは泣きびながら梨子のをゆするが、顔は真っ青で返事はない。

「まさか、死んでる?」

杏奈は意外と冷靜に言うが、ミャーや藤也はすぐに坂口のを確認。

「大丈夫! まだ生きてる!」

『救急車!』

杏奈は素早く攜帯を取り出し、救急車を呼んだ。

これは事件?

花瓶で頭をかち割って自殺なんて出來ないはずだ。

殺人未遂?

「ママ!」

泣きぶマユカの聲を聞きながら、杏奈の頭はくるくると回転していた。

これ事件だ!

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