《ネコと和解せよ〜ネコとカフェ店長の謎めく日常〜》33話 ガラスのハート

「また、あんたらかよ」

到著した警察の空谷は明らかに嫌な顔をしていた。

「うん、自殺未遂だろ、これは」

しかも勝手に結論づけていた。

杏奈と藤也は、教會の面談室で空谷と話していた。

現場が一応警察達が確認しているし、他に適當な場所はなかったからだ。

梨子は救急車で運ばれていった。マユカも付き添っている。家族以外の藤也や杏奈の同行は無理だった。まだ安否はわからず心配だ。

「いや、空谷。花瓶でどうやって自殺するんだ?首吊りとかだろ、フツー」

藤也のツッコミに空谷は無視を決め込んだ。

『なにこの男。信じられない』

足元にいるミャーは、小聲で杏奈に文句をつけるが、この狀況でミャーと會話するわけにはいかない。人と會話できる貓だなんて、空谷はなにをするかわからない。捕まえての研究している施設にでも連れて行くかもしれないし、殺しにくるかもしれない。それぐらい杏奈のとって空谷は信用出來ない人になっていた。

ミケ子もナァの件も全く調査しない。警察が銃価と関係あるというのは固い証拠があるわけではないが、空谷の態度は全く信用できない。

予想通り、梨子についても勝手に自殺と決めつけていた。

「そもそもおお前らは、何で子高生と一緒にいたんだ? あ? こんなサブカルで草食ってそうな顔してるが食か? パパ活か?」

空谷のゲスな勘ぐりに杏奈はため息しか出ない。よく見ると空谷の歯はすきっ歯で、喫煙者なのか黒っぽい。他は清潔あるように纏めているが、歯の汚さで臺無しだ。

子高生のあの子は私の店のお客様よ。変な風に言わないで。閉店間近に來たから、送ってあげただけ。何か問題ある? 藤也とはたまたま教會の近くで會っただけよ」

杏奈が冷たく言い放つと空谷も押し黙った。

「それよりちゃんと調査したら、お巡りさん。あれは自殺じゃないでしょ。事故でも無いでしょ」

「そうだぞ、空谷。お前、仕事しろ」

言われ放題だった空谷だったが、顎をツンと上げて反撃してきた。

「お前も仕事しろよ。聞いたぞ。日本でキリスト教徒は1%しかいないんだろ? 銃価よりないねぇ。それに信者も老人ばっかりで、クリスチャンも年々減ってるとか? こんな事してて良いのかね? お前らも仕事したら?」

さすがの藤也も口を閉ざしてしまった。パリンとハートが割れる音が聞こえそうだった。

「じゃあ、弱小宗教頑張って。俺は忙しいんだよ」

捨て臺詞を殘し、空谷は去っていったが、藤也はショックを隠しきれない。

取とりあえず杏奈と藤也は禮拝堂の奧でテーブルを出し、お茶でも飲む事のした。やっぱり人間の怪我した姿を見て、心はどっと疲れていた。

杏奈はキッチンにいき、國産無農薬の紅茶を淹れた。ふんわりとらかな紅茶の香りで、藤也達も落ち著いてきたようだ。ミャーは、テーブルの上で寢そべりリラックスしていた。

『それにしても坂口が被害に遭うなんて。一誰がやったのかしら』

「よし! 俺らで推理しようぜ!」

お茶を飲んで落ち著いてきた藤也は再びホワイトボードを持ってきて推理をし始めた。

「まず容疑者だ。一番怪しいのは坂口の夫だな」

藤也はホワイトボードに男らしきシルエットを描く。意外と絵が上手い。

機は?」

『そうよ、機は?』

「おそらくナァを逃した事で妻の坂口を責めてめたんだよ」

その可能は杏奈もあり得そうだと思った。

『銃価信者や幹部、教祖の可能もあるでしょう。ナァを逃したから、逆ギレしたのね』

藤也はミャーの推理をホワイトボードに書くが、そうなると容疑者は膨大な數だ。

「銃価信者の可能は大だと思うけど、どうやって犯人を絞り込むのよ。かなりの數よ」

「そうなんだよなー」

藤也は頭を抱える。

同時に杏奈は、攜帯にマユカから連絡が屆いている事に気づく。さっきのゴタゴタの中でも一応連絡先を換していた。

「マユカからLINEが屆いてるわ。えーと、ママは無事です。でもまだ意識は戻らないので、今日は病院に泊まりますだって」

「よかった。無事だったか」

『良かったわぁ』

この場に安堵の空気が広がる。

「あ、またマユカからLINE屆いたわ。うん?パパは今日は朝から長野に出張だったんだ〜って……」

「長野へ出張? 坂口の旦那が?」

安堵の空気は一瞬で消えた。藤也はホワイトボードの坂口のダンナのシルエットのバツをつける。

『一番怪しいヤツがアリバイあるって事ね……』

ミャーの言う通りだ。

「つまり容疑者は膨大」

杏奈はため息をついて紅茶を啜る。

結局、この事件については杏奈達の手に負えないという事になった。

藤也もミャーとしばらく伝道について話し、仕事に専念する事にまとまった。

「そうだな……。俺は仕事しよ……」

珍しく藤也は気弱になっていた。男が繊細なガラスのハートの持ち主というのは本當だろう。

そう思うと三郎を一方的に嫌う自分も間違っているような気がしていた。杏奈はそう思った。

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