《ネコと和解せよ〜ネコとカフェ店長の謎めく日常〜》40話 三郎とデート

杏奈は三郎と待ち合わせしている人削町の駅に向かった。

地平町からはさほど離れていない町だが、駅ビルや映畫館もありそこそこ栄えている町だった。

し混みあっている駅前で三郎と落ち合った。三郎はラフなジャケット姿で、妙にリラックスした表を見せている。

「杏奈、ちょっと疲れてない?」

「いや、別にそんなことはないわよ」

出かける前、ミャーから聞いた話を思い出すと素直に喜べなくなってきたが、とりあえず笑顔を作り、三郎に合わせて貓グッズを置いてある雑貨屋に向かった。

雑貨屋は、客で賑わっていた。

化粧品や文房が主に商品として置いてあるが、全て貓がイラストがデザインされていて、杏奈も思わず「可い!」とらしてしまう。

一方、三郎は店の看板貓を見つけてデレデレち目を下げていた。看板貓はシャム貓で確かにシュッとしていて可らしかったが。

「あぁ、貓様。なんてこんなに可いんだ」

三郎は人目を気にせず、貓お拝むようなポーズをとって目を閉じていた。

「何、あの人」

「まるで貓が神様じゃん」

他の客に笑われていたが、三郎はお構いなしだった。

杏奈はだんだんと居た堪れなくなってきた。デート中なのに、明らかに貓>>>>>杏奈である。

メールやLINEのやり取りではそこそこ盛り上がりを見せたが、今の狀況は何とも微妙だった。デート中というじが全くしない。

「なんで今日ったわけ?」

思わず愚癡も溢れるが、三郎の耳には屆かず、ずっと看板貓を寫真におさめ、拝んでいた。

その後、二人で貓カフェに行ったが、三郎は相変わらずだった。

アメリカンショートヘアを追いかけ回し、店長に注意されるほどだった。

何か病的なものをじるほどの貓好きだった。

杏奈の気持ちは冷めていくばかりで「やっぱり三郎とはないわー」と繰り返しじていた。今朝ミャーは頑張って忠告していたわだが、こうなってしまってはあんまり意味がない狀況だった。

杏奈は貓カフェの隅のテーブル席につき、死んだ目でオレンジジュースを啜っていた。テーブルや床も細かいところが清掃が行き屆いていないのも同業者として、気分はよく無い。

「やぁ、杏奈。待たせたよ」

ようやくテーブル席に帰ってきた三郎を見ても、杏奈の目は死んでいた。これではモテテクニックどころではない。

藤也はメンヘラはモテないと言っていたが、この男はメンヘラ製造機の見えた。適度に距離を置き、を不愉快にさせるのが絶妙に上手かった。

もし、三郎に本気だったら、自分は気分が不安定なメンヘラになりそうだった。

そういえば藤也は聖書では男がリーダーシップを取れと言っていたものだが、この男はリーダーシップよりも自分の事の方が好きそうだった。

なるほど、が男っぽくなる現象は、の責任だけでは無いと杏奈はじていた。

「そういえば、杏奈さ。町でミケ貓が死んだ事件ってどうなったの?カルト信者は捕まったの?」

「いいえ。そんな事は全くないわ」

杏奈は梨子が襲われた事など、現在の事件の狀況を手短に説明した。

「しかし、許せないね!貓様を殺すなんて!殺すんだったら障害者やホームレスを殺せばよかったんだ」

「は?」

杏奈は目が點になっていた。そして、より死んだ目になる。

どうやらこの男は貓が一番で、人間の弱者はどうでも良いと考えているようだ。さらに「三郎はないわー」と思う。妊娠出産で強制的に弱者になるにこの男は思いやりが持てるのか疑問だ。

「いや、今のは間違いだって。貓様が好きすぎて失言しちゃったんだよ」

「あ、そう」

杏奈の気持ちは限りなく冷えていた。見かけは好青年だが、絶対に優しくない男だと本能見たいなものが警告を発していた。

「ところで明後日、藤也さんのところの教會でイベントやるんだろ?」

「ええ。その予定だけど」

「俺も行こうかね」

「は?なんで?」

「うーん、ちょっと気になるし。クッキーもしいし」

「ふーん」

杏奈のテンションは限りなく下がっていたので、適當に返事をした。

藤也からアドバイスされたモテテクニックは一つも守れていないが、これ以上三郎との縁は無いな……とじていた。

その気持ちを見かすように三郎は再び貓の寫真を撮り、アメリカンショートヘアを追いかけ回していた。

「きも……」

つい杏奈の本音がれた。

貓カフェにいる貓達は可かったが、早く家に帰ってミャーの背中をでたくなってしまった。

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