《ネコと和解せよ〜ネコとカフェ店長の謎めく日常〜》44話 犯人

イベント終了後、杏奈と藤也は片付けをしていた。プロジェクターを片付けたり、禮拝堂の掃除したり。

「藤也、意外と発表というかプレゼン良かったわ」

「おー、杏奈が素直に褒めてるとかって怖いんですけど」

藤也も疲れていたが、充実に満ちた顔を見せていた。

ミャーは普通の貓のフリをしながら、禮拝堂の隅に座っていた。

なぜか三郎はイベントが終わってもグズグズと會場に居座り、なぜかぼんやりと禮拝堂の中央に掲げられている十字架のオブジェを見ていた。

「三郎、もう帰っていいんだけど、何で殘ってるの?」

杏奈はちょっと様子がおかしい三郎に話しかける。

「いや、ちょっとさ……」

「三郎さん、何か俺に用があったりするのか?」

藤也も首を傾けながら、質問する。

「いや、貓も人間も神様が創ったって本當ですか?信じられないんですけど」

「本當なんだけど、無理矢理信じる必要は無いですよ」

「そっか、牧師さん……」

なぜか三郎は、藤也や杏奈を睨みつけてきた。

「いや、貓は完璧な神だ。そんな、神様に創られたわけは無い」

「そういう考えは危険ですよ。神様が創ったものを拝む事は偶像崇拝になるんですから。三郎さん、大丈夫ですか?」

「うるさい!」

三郎が明らかにキレていた。豹変したとしか思えない三郎の姿に、杏奈は戸いしかじない。

「ちょっと、どうしたのよ。三郎」

「そうですよ。し落ち著きましょうよ」

「うるさい! 貓が神様なんだよ!」

どうもいつもと様子がおかしい。貓好きな男だとは思っていたが、行き過ぎているようにじた。

比較的冷靜な格の杏奈は、的な三郎の様子を見ていると、冷めてきた。何を怒っているかは不明だが、どうせ下らない事だろうと予想する。

「もう、イベントは終わったわよね。帰ったら?」

杏奈が冷たく言い放つと、突然三郎に首を摑まれた。

背中から抑え込まれて全くけない。男格差もじる。

噛みついて逃げようかとも思ったが、三郎は折り畳みナイフを杏奈に突きつけていた。よく見ると100均で売っているような果ナイフみたいだが、包丁を突きつけられている狀態は、さすがの杏奈も冷や汗が流れた。

「ちょっと、三郎さん! 何やってんだ? とりあえず、包丁を置いて杏奈を解放しよう!」

「嫌だ! このは殺してやる!」

三郎は、興んだ。

藤也は戸っていたが、杏奈は冷靜だった。ミャーに目配せし、視線だけでメッセージを伝えた。

何かじとったミャーは、こっそりと禮拝堂から出て行き、杏奈はし安堵の息を吐く。

「もしかして、梨子さんを花瓶で毆ったのはあなた?」

三郎の様子から、そうとしか思えなかった。おそらく機が、貓を殺した梨子に腹をたてたかただろう。

「そうだよ。俺の大事な貓様を殺したなんて許せない!」

「いや、あんたの貓じゃないし。鳩子さんちのミケ子なんだけど」

「ちょ、杏奈。あんまり挑発する事言うなって」

「だって、この男馬鹿みたいなんだもの。おそらく、神様が貓を創ったって話に腹を立てているのよね? 貓の方が神様だと思っていたのにっていう事?」

三郎は杏奈の言う事を否定できず、押し黙っていた。

け無い男。

杏奈はなぜかこの狀況でもちっとも怖くなかった。

「本當に男ってガラスのハートねぇ。自分と意見が違う人にも否定されたって思って暴れてるの?」

「ちょ、杏奈。毒舌すぎるぜ」

藤也も気が抜けてきたのか、口の悪いダークな杏奈を見て大笑いしていた。

「うるさい! 殺す!」

「ま、いいけど、杏奈みたいな強そうなは殺せるかね?」

「強そうなってどういう事よ?」

「っていうか、に見えない。うん、男だよ」

「どういう事? 藤也?」

藤也と杏奈の間で口喧嘩が始まり、三郎は蚊帳の外狀態になってしまった。

「うるさい! お前ら、まとめて殺してやる?!」

「十字架の前でもできるか?」

藤也はを張り、三郎の前に立ちはだかった。

し不思議な話をしようか。昔、うちの獻金箱が盜まれたんだが、その不屆きものは通事故にあって半不隨になっている。あと、うちの教會に嫌がらせしてきた桜庭香澄っていう占い師は、顧客を全部失って貧乏狀態だ。他にもあるぜ? 俺に異端カルトって言ってめてきたヤツは、起業した會社が潰れてる」

「そ、そんな……」

三郎は明らかに戦意を喪失していた。

「俺が間違っていたら神様が裁くだろう。神様の目から見て俺が正しかったら、神様が報いてくれるだろう。それでも、殺すか?」

藤也は両手で三郎の肩を揺さぶった。さっきまで杏奈に軽口を叩いていた表とは全く違った。鬼気迫るものだった。

「こんな罪人の三郎でも、神様は死にほどお前をしてるぞ。さ、俺らには謝らなくていいから、神様にはまず謝ろう」

「そ、そんな…」

こんな視點から説得されるとは、三郎も考えていなかったのだろう。三郎のは力が抜けて、ナイフを落としていた。

すぐに三郎は、床に落ちたナイフを拾って刃を閉じた。

「だって、あのカルトを毆ったし……。許してくれるわけないだろう!」

「そんな事は神様に聞いて見なきゃわからないだろう。さ、一緒に俺も謝るから」

驚いた事に三郎が、藤也に従い、床に膝をついていた。涙までこぼしている。

同時に杏奈は解放された。

一目散に禮拝堂から逃げると、警察がいた。空谷では無い警でホッとした。

そばには、ミャーを抱き上げたマユカがいた。おそらく、ミャーにこの事態を伝えられたマユカが警察を呼んだのだろう。

「お巡りさん、早く! 禮拝堂に梨子さんを傷つけた犯人がいるの!」

杏奈は息を切らしながらんだ。

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