《ネコと和解せよ〜ネコとカフェ店長の謎めく日常〜》エピローグ

なんでこうなってしまったんだろう……。

杏奈は謀論マニアの巣窟になってしまった自分のカフェを見回しながら思った。

事件の後、藤也の書いた謀論の記事がその界隈でバズっていた。法的には問えないようだが藤也の記事を見て、カルト信者を辭めた人も増えているという。

ただ、藤也の教會の教會員は減っているようで、お金に困っているらしい。見かねた杏奈は、藤也を一時期バイトに雇う事にした。マユカは土日しか來れないが、藤也は晝間バイトしてくれる事になった。

藤也がここでバイトしている事が謀論マニア界隈で話題になり、連日ドシドシと変な客が來るようになった。SNSでは謀論カフェという不名譽な二つ名までつけられてしまっていた。

でカフェは絶賛繁盛中だが、店の雰囲気はワクチンや製薬業者が云々カンヌンと語っているものばかりになり、妙にディープなものになってしまった。客達の著ているシャツも獨自なメッセージが書かれていて、異様なサブカル臭も漂う。

「ちょっと、藤也。そんなワクチンと製薬會社の闇を語ってないで、テーブル拭いて、床掃除して!」

杏奈は、気づくとすぐに謀論で盛り上がる藤也に叱咤して仕事させるだけで、とても疲れた。店は繁盛しているが、プラスマイナスゼロといったじだった。

「わかったよ。杏奈」

「ヘラヘラ笑わないで、教えた通りに営業スマイル作りなさい。アクリル板とアルコール消毒置いて、染癥対策厳しくするわよ? マスクや黙食強制にするからね? 謀論者でマスクしていない人は出にするわよ」

「おー、杏奈こわっ!」

こんな杏奈と藤也のやりとりを見た謀論マニア達は、笑いを隠す事はできなかった。確かにカフェの雰囲気はディープなものになってしまったが、妙に明るく笑いの絶えない雰囲気でもある。この空間だけはコロナなんて噓みたいだった。海外では染対策なんてあんまりしていないし、謀論者達が言うコロナ茶番説もあながち噓では無い気もしてきた杏奈だった。

ちなみに三郎が逮捕されてから、コロナ脳達の嫌がらせも一回もなかった。藤也の謀論記事がネットで話題になっているうちは、迂闊な事も出來ないのかもしれない。

結局この事件については、銃価の犯行だと法的問うことはできなくなってしまったが、こうしてネットで話題になっているは、目立つ事もできそうになく、杏奈も安心するところだった。

「杏奈、來たわよ。今日も謀論マニアばっかり來てるわねぇ」

母がカフェに遊びに來た。謀論マニア達に溜まり場狀態になっているカフェに呆れ返っていたが、カウンター席に座って杏奈に愚癡をこぼし始めた。

「全く、三郎くんが犯人だったとはね」

母は、三郎が犯人だった事に今も納得いっていないようだった。これで杏奈の結婚が遠のいてしまった事もより不満らしい。

「全くいつになったら、杏奈は結婚出來るのかしらねぇ」

深いため息に、母の周辺だけ空気が重い。

「いや、お母さん。杏奈は中が男ですからね。あの犯人にも毒舌で言い返していましたから、難しいでしょう。気が強いったらないですよ」

何気なく母と杏奈の會話に藤也も混じってくる。

「何か、言った?」

「いえ、杏奈は強いという事ですよ」

杏奈に睨まれて萎した藤也は、ぷるっと震えて訂正した。

「そうだわ、杏奈。牧師さんと結婚すればいいじゃない」

「は?」

母のとんでもな提案に、思わず二人とも目が點になる。

「そうよ。お似合いじゃない」

「えー、冗談ではないですよ。こんな毒舌カフェ店長なんて」

「こちらこそ、貧乏の謀論マニアはいやね」

「あらー、こんな風に男に言い返す杏奈は初めてみたわ。やっぱり貴方達お似合いよ」

母は二人を無視して勝手に話を進め始めた。

「ちょっと、ママ。今は昭和じゃないのよ。親が決めた結婚なんてやめて」

「うん? 杏奈、聖書では親に従えって書いてあるぞ。むしろ昭和の方が正しい」

「だったら決まりね! 結婚よ」

「いえ、俺たち人間には自由意志もありますから。ノンクリとは結婚したくないっすねー」

「ちょっと藤也、どっちの味方よ?」

杏奈は軽く睨むが、なぜだが藤也と母は仲良くなってしまい、杏奈は深いため息をつく。

ただ、あの時犯人に立ち向かった藤也はし意外だった事は事実だ。

「ところで、あの時やけに勇敢に犯人に立ち向かっていたのは、何だったの? キャラ違くない?」

「いや、神様は男はを守る役目を與えているからな。それに従ったまでだ」

「なんだ、そういう事……」

なぜかしガッカリする杏奈だったが、その理由はよくわからなかった。

ただ、もう事件は起きそうにない日常が嬉しく思った。

今日の帰りは、ミャーに高級キャットフードでも買ってこよう。あと、オモチャもいくつか買っておこう。

本當は食べる必要はないミャーだけど、今回の事件解決の一番の功労者だ。きっと喜ぶに違いない。

ミャーとの楽しい時間を思い浮かべながら、杏奈の口元はゆるんでいた。

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