《【電子書籍化決定】人生ループ中の公爵令嬢は、自分を殺した婚約者と別れて契約結婚をすることにしました。》毒蛇と仮面

♢♢♢

翌朝、アロナは部屋で朝食を摂る。煌々と燃える暖爐の火を見つめながら、昨晩アルベールから言われたことを思い出していた。

ーールーファス殿下との婚約破棄については、さほど難しくないかもしれません

(一、どういう意味かしら)

まさか、自のためにアルベールが盡力するなどとはほども思わない。であればあれに含まれている意味は、ルーファス側の事。なんらかの事柄を彼は知っていて、それを隠している。

(やっぱり、蛇みたい)

それも、毒蛇。自らを鮮やかなで飾り立て“私は毒を持っています”と周囲に認知させる。自を存分に警戒させた上で、一寸の隙をついて元に刃を突き立てるのだ。

大きな獲を喰らい、胃袋でゆっくりと溶かしていく。その間なにもしなくとも、飢えることは決してない。

狡猾で、危険で、頭の回る策士。

そんな男に契約を持ちかけた自分の愚かさに、今さらながら震いがする。彼が自分を頭から丸呑みにしなかったのは、利用価値があるからだ。

それも、自には分からない。よってりようがなく、行き當たりばったりの運任せ。

(こんな分ではなかったはずなのに)

四度目の人生では、自のために他者を利用することも厭わないと、そう決めたのに。

いや、今正にアルベールを利用しようとしているわけだが、どうにもいいように転がされているとしか思えない。

(まぁいいわ。やるだけやりましょう)

彼が自分に求めているのは、の世話係といったところか。彼達に飽きられてしまえば終わりというのが、なんともけない話だとアロナは思う。

ーーしてる

(いいえルーファス。あなたは決して、私をさない)

例え何度、生と死を繰り返そうとも。

「さぁフルバート嬢。參りましょうか」

てっきり今日も放っておかれるとばかり思っていたアロナは、アルベールの出現に目を瞬かせる。

「失禮ですが話が見えません」

「おや。僕は昨日説明しませんでしたか?」

「ええ、全く」

明らかに確信犯というにこやかな笑みが、絶妙に腹立たしい。アロナの心中が丸分かりのアルベールは、噴き出すのを堪えるように口元に手を添えた。

「揶揄うのはやめていただけませんか?」

「失禮。あなたがあまりにも完璧なもので、つい仮面を剝がしたくなってしまうのです」

(悪趣味野郎)

そんな言葉が浮かんでくる自分を律しつつ、アロナはこの場にいないククルを恨む。

でありながら隨分砕けた言いをする彼の影響で、つい悪態をついてしまった。こと學園に通い出してからは、特に酷いのだ。

(今度會ったら文句を言ってやるわ)

それにしても、趣味に加え人を弄ぶ加嗜好まで持ち合わせているとは、なんとも気の毒な人だと彼は思った。

でる思考には特になんともじないが、萬が一的なことを彼らに強いているのであれば、さすがに気持ちが悪い。

(嫌だわ、あまり考えないようにしましょう)

「フルバート嬢?」

「いえ、なんでも」

「…ふふっ」

(笑わないでよ、この変態)

いつも冷靜なアロナであるのに、アルベールに対してはなぜか苛々としたが全面に顔を出してしまうのだった。

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