《【電子書籍化決定】人生ループ中の公爵令嬢は、自分を殺した婚約者と別れて契約結婚をすることにしました。》そこは神の地

険しい雪山を進んだ先に、人一人やっと通れるほどの窟が現れる。アルベールに続き、アロナは皮が落ちないよう手で押さえながら、慎重にそこをくぐる。

「これは…」

先ほどとは、一瞬で景が変わった。

「僕が辺境伯の爵位を継いでから、ここに人を連れてくるのは初めてです」

「……」

とっさに言葉が出てこない。それほどに、眼前の景はしかった。

澄みきった湖は真青で、窟の僅かな隙間かられるを反しきらきらと輝いている。

地吹雪が吹き込み、白と青のコントラストを作り出す幻想的な様にアロナは我を忘れ見惚れた。

「どうですか?しいでしょう?」

「…はい、言い表せないほどに」

語彙力がなくなるとはこういうことかと、彼は目の前の真青を見つめながら思う。

(本當に、しいわ)

人の手がっていない、天然の地底湖。氷柱のように見えるのは、鍾石だろうか。

「こんなに寒いのに、この湖は凍らないのですね」

「地脈の影響でしょう。遙か昔このアストフォビアは火山地帯だったそうです。その名殘で、こういった不凍の湖がいくつか存在するのです。永久凍土であるこの地がかな理由のひとつです」

「水がなければ、人もも生きてはいけませんものね」

アロナはすっかり寒さを忘れ、アルベールの話に興味津々だった。

「では、この暗い窟の中でも湖が青くっているのはなぜですか?」

「湖底に沈んでいる石灰が、僅かな太にも反応しているからです。それにこの窟には、発も生息しています」

「まぁ、なんて素敵なのかしら」

こういった非日常のようなものにれたことのない彼は、眼前に広がる湖と同じようにきらきらと瞳を輝かせた。

頬を上気させ、彼が興気味に喋るたびに白い息がふわふわとれる。公爵令嬢が喜ぶような場所ではないはずなのに、アロナの態度は社辭令などじられない。

以前も思ったが、自の領地を純粋に褒められることに悪い気はしない。普段表現の乏しい彼が、小鼻を膨らませながら質問する様子は、まるで新しいおもちゃを見つけた子供のようだと、アルベールは心微笑んだ。

「このような貴重な場所に、なぜ私を?」

「それにはきちんとした理由があります」

アルベールはしゃがみ込み、湖の中にそっと指をれる。

「この窟は、歴代のロファンソン辺境伯となる者にしか知らされることはない」

(だから、従者も護衛も置いてきたのね)

「にも関わらず會って間もないあなたを招いたのは、藁にもすがりたい狀況に陥っているからに他ならない」

アルベールが言い終えるが早いか、青い湖に靜かにしずつ波紋が広がっていく。

そしてそれは二人のすぐ傍で渦巻く水流となり、天高く盛りあがる。

アロナが思わずを引くと、アルベールが支えるようにその肩に手を添えた。

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