《【電子書籍化決定】人生ループ中の公爵令嬢は、自分を殺した婚約者と別れて契約結婚をすることにしました。》まるでお伽話の

「恐れることはありません」

そう言われても、湖が急に水流を巻き始めたのだから、驚くに決まっている。アロナは悲鳴を上げなかった自分を褒めてやりたいと思いながら、盛り上がったその先をじっと見つめた。

「これは……」

人ではないと、すぐに理解する。からはぽたぽたと水が滴り、白金の鋭い雙眼がこちらを見據えている。

神々しいその霊気に、アロナは金縛りにあったようにぴくりともかせなかった。

瞳と同じ白金のらかな肢。大蛇と表すにはあまりに神的で、かつ恐ろしい。

人間で言う額にあたる部分に、金の角が二本生えている。純金で作られた延べ棒でさえ、こんなにもしく輝かないだろうと思う。

「アルベール」

き通るような聲が、靜まり返った湖に響く。

「この方は」

「アロナ・フルバート嬢です。神龍セリカ」

(神龍…?今、神龍と言ったの…?)

「アロナ・フルバート様」

「あ、あの…」

到底理解が追いつかないが、アロナは咄嗟にを屈め、失禮のないよう視線を合わせる。

「アルベール。あなた、この方への説明を怠りましたね?」

「その方がサプライズになるかと」

「まったく…」

神龍セリカと呼ばれた白金の龍は、まるで人間がそうするように溜息を吐く。

「フルバート様。あなたは素晴らしい方です。私を見て恐れ逃げもせず、禮を施してくれるとは」

「と、とんでもございません。頭が混してしまって…」

「無理もありません」

セリカはじろりとアルベールを睨めつけると、再びアロナへ視線を戻した。

「フルバート嬢。信じがたいでしょうが、この未開拓の地アストフォビアには、神龍が宿っているのです」

「そ、そのようですね」

「これは、アルベール・ジャック・ロファンソンの名をけ継ぐ者のみが知る事実」

(そうだわ。この方は確か、亡くなった前辺境伯の名を丸ごと継いだのだったわよね)

「のみ、というのは々語弊がありますか。辺境伯當主は一度の例外もなく男しかいませんが、稀に神龍達に認められるもいたのです。その方達は“加護の神”と呼ばれました」

「加護の、神…」

「しかし、選定の條件が全く分からない上にアストフォビア出者に限らない。嫁いできた別國のがたまたま、ということが過去は多かったようですが。実際、生前父から聞いた話ではここ百年ほど“加護の神”は現れていない」

分からないながら、アロナはなんとか理解しようと必死に食らいつく。

普通であればこんなお伽話、信じられるはずもない。けれど実際、目の前には神龍と呼ばれる存在がいる。

そしてなにより、自分はこの人生が四度目なのだ。

(きっと全部本當の話なんだわ)

とうとう彼の肩から、皮がぱさりと落ちた。

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