《【電子書籍化決定】人生ループ中の公爵令嬢は、自分を殺した婚約者と別れて契約結婚をすることにしました。》複雑なのうち

“神龍ルタ”

それが、長の名前。神龍を束ねる者が病に臥しているなど、ただごとではないだろう。

(神龍自、とても貴重な存在でしょうし)

イギルキア王國では、お伽話や伝説にすら神龍という存在は登場しない。代々アストフォビアの辺境伯が、命を賭して護り仕えてきたのだろう。

獨立國家に等しいと言われるほどに、ここは異質な土地だ。きっとこういった事から、わざと他地域の民達を遠ざけていたのかもしれない。

アストフォビアの歴代辺境伯達は揃って変わり者ばかりだったと、いつだったかリュート夫人が言っていた。そしてアロナの目の前にいるアルベールも、例にれず趣味の変人卿だと不名譽な稱號で呼ばれている。

「ロファンソンの屋敷に神龍の子達を住まわせているのは、ルタ様のお力が弱まっているからに他なりません。この窟、そして地底湖を維持するには莫大な神力が必要となります。あの子達はまだそれを上手く扱えず、かえってルタ様の害となる場合もある。それ故に、これまでにはなかったことをアルベールに頼んでいるのです」

「そういう事がおありだったのですね」

前辺境伯が趣味だと言われなかったのは、今回が異例であるから。本來、神龍はこの場にいるべきものなのだとアロナは理解する。

「そのせいで、アルベールには肩の狹い思いをさせてしまっているようですが」

「ご心配には及びません、神龍セリカ。僕が好んで流した噂ですから」

なるほど。確かに下手に隠し立てするよりも、趣味であるからと大々的に公表してしまった方が、有利にことを運べるのかもしれないとアロナは思う。

それに、アストフォビアの地を我がものにしたいがため自の娘を送り込むなどという、淺はかな貴族も一蹴できる良い口実だ。

(やっぱりロファンソン卿はへび…)

と言いかけ、アロナは口を噤む。例え脳であろうとも、神龍の前で蛇などと揶揄するのは憚られたからだ。

「ルタ様はとても繊細な方で、的な病というよりもお心を病んでおられるのです。私ですらほとんど近づくことを許されず、日に日に憔悴されるばかり。苦しまれているあの方になにもできない自が、本當にけない」

「セリカ様…」

「急にこんなことを言われて、戸うのは至極當然のこと。フルバート様への配慮が欠けることを、どうかお許しください」

(神龍の長が、命の危機に立たされているんだわ)

そう思うと、アロナはぞくりと背筋を震わせる。神龍という神にも等しい存在が消えてしまうということが、どれだけの兇事であるのか容易く想像がつく。

ともすれば、このアストフォビアの地の維持にも関わるのかもしれないと。

そこに自が関わるということの意味を、アロナは理解する。協力の結果どうにもならなかった場合も、きっと責められることはないだろう。

(そういう問題ではないわ)

アロナはそれに自分が耐えられるのか分からず、無意識のうちにに手を當てていた。

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