《【電子書籍化決定】人生ループ中の公爵令嬢は、自分を殺した婚約者と別れて契約結婚をすることにしました。》この出會いがもたらすもの

ーーこうしてアロナは、アルベールでさえ今は足を踏みれることを許されない、地底湖の奧へと歩みを進める。

落ちた皮をアルベールが拾い、アロナの肩にかけてやる。彼も、今度はそれを拒否しなかった。

(奧に行けばいくほど、が濃くなってる)

「ルタ様は現在、ご自の力では神力をコントロールできない狀態にあるのです」

僅かな水音を立てながら、神龍セリカはアロナを案する。彼の疑問を察したのか、口にする前に答えてくれた。

「ルタ様はどうしてそこまで?」

「詳しい原因は分かりませんが、あの方はとても繊細でが強く、さまざまなものに影響をけやすいのです」

「さまざまなもの、とは?」

「悪意、恐怖、妬み、強。そういった負のが、ルタ様に強く流れているのでしょう。優しい格もあって、必要以上に心を揺さぶられてしまうのです」

どうやらルタ様なる人は、長としては不向きな分なのかもしれないとアロナは思う。人間然り、上に立つ者には非さというものは必要不可欠だ。

なにかあるたびに心を砕いていては、自神がもたない。ルタは正にそんな狀況にあるのだろう。

「経験を積めばそれも飲み込めるようになるのでしょうが、このままでは…」

その前に、力盡きてしまう。

セリカの言葉の続きを、アロナは察する。いま一度気を引き締めなければと、彼を真一文字に結んだ。

“ここから先は、おひとりで”

(こんなのあんまりだわ)

さすがのアロナも心細く、肩にかけられた皮をぎゅっと握りしめる。

セリカは心苦しそうにそう言い、何度もアロナに「無理はしないように」と念を押した。

結局自分がなにをすればいいのか、アロナはよく分かっていない。とにかく第一の目標は、神龍ルタと対峙し話をすることにあるらしいが。

(セリカ様にも出來ないことが、私に出來るのかしら)

こうなったらもう、博打を打つつもりで臨むしかない。地底湖の奧、アルベールと共に通ってきた口よりもさらに狹いを、アロナはを屈めながら進む。

「…失禮いたします」

そこは、不思議な形狀をしていた。ごつごつとした鍾石に囲まれ、円形に獨立した浴槽のようになっている。そこは淺いのか、セリカとは違いトグロを巻いて橫たわっている一の神龍の姿がすぐに彼の目に飛び込んだ。

(…あの方がルタ様だわ)

一度立ち止まり、ゆっくりと観察する。

セリカと同じく白金の肢だが、彼のような艶々とした輝きがない。鱗は逆立ちがさがさとしているように見えるし、ところどころ剝げて赤みがかった皮がむき出しになっている。

痩せ細っているせいなのか皮が弛み、丸まった背骨が浮き出ている。

ここから見ただけでも、聞いていた通りの酷い狀態であると一目で分かった。

「…ルタ様」

く閉じられた両の瞼が、開くことはない。張にを固くしながら、アロナはしずつ足を前に進めた。

「突然の訪問をどうかお許しください。私はアロナ・フルバートと申します」

公爵令嬢云々という自己紹介は、きっと必要ない。アロナは簡潔に、名前だけを告げる。

「あなたは」

ルタはぴくりとすらかない。それでもアロナの頭の中には、はっきりと聲が響いている。

「あなたには、神(トゥラリアナ)の加護がある」

その臺詞に、彼の歩みがぴたりと止まった。

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