《【電子書籍化決定】人生ループ中の公爵令嬢は、自分を殺した婚約者と別れて契約結婚をすることにしました。》気になって仕方がない

♢♢♢

アルベールがこの地底湖へアロナを連れてきてから、もう五日が過ぎる。セリカに連れられ今日もルタの元へと行ってしまったアロナを、ただじっと待っていた。

彼はゆらゆらと揺らめく青の湖を見つめながら、つい數日前の出來事を思い出す。

初めてルタと対面したアロナが戻ってきた時、彼の真っ赤に腫れ上がった瞼を見てアルベールは心底驚いた。

神龍セリカが「フルバート様をくれぐれも丁重に」と殘し去っていってから、アロナにどう聲をかければいいのか戸った。

まさか彼が本當にルタと対面できたことにももちろん驚いたが、それよりもただならぬ雰囲気を醸し出すアロナのことが、気になって仕方ない。

「酷いことを言われたのですか?」

「まさか、そんなことはありえません」

一蹴されてしまえば、もうどうしようもない。とりあえず會えたのだからそれでいいじゃないかと自を納得させようとしても、彼の心の騒めきは一向に治らない。

「ロファンソン様」

「なんでしょう」

「頼みがあるのですが」

その容を聞いたアルベールは、さらに困した。

(だって、この窟にテントを張ってくれなんて正気の沙汰とは思えないじゃないか)

それはもはや頼みというよりも、アロナの中では決定事項に近かったようだ。もしも斷ったら「ではなにもいらないから一つで野宿する許可を」とでも言い出しかねない雰囲気だったのだ。

アルベールは従者に言いつけ必要なものを持って來させると、アロナの願い通り窟の中にテントを設営した。

「申し訳ありません、フルバート嬢。ここには私達以外れないので、このような小さく簡易的なものしか運べませんでした」

「とんでもありません。寢起きができれば充分です」

を変えることもなくそう言ってのける彼を見て、このは本當に公爵令嬢なのかと疑いたくなってしまった。

もちろん令嬢としての振る舞いも教養も完璧なのだが、そういうことではない。むしろ、平民でさえであればこんな場所での生活は例えたった數日だとしても耐えられるものではないだろう。

(どうしてここまで…)

ルタと彼の間でどのような會話がなされているのか、アルベールは知らない。アロナの様子を見ていると、詳細を問いただすことも憚られる。

どう見ても、ただ契約遂行のためにやっているだけには思えない。アロナは毎日せっせとルタの元へ通い、それ以外はを探索したり、テントでを休めたりしている。

さすがに彼一人殘して自分だけ屋敷に帰ることのできないアルベールは、自のテントは窟からし離れた場所に設営した。

いくら自領といえど、立場上一人で野宿というわけにもいかない。ここであれば、護衛や従者達をそばに置くことができる。

「アルベール様。フルバート公爵令嬢は、こんな場所で一なにをなさっておいでなのでしょう」

「彼は元々、このアストフォビアに興味を惹かれてやってきたんだ。フルバート嬢の好奇心を応援してあげようじゃないか」

う従者達に適當な方便を使い、アルベールはただひたすらアロナに付き合った。

「私のわがままであなた様にまでこのようなことを強いてしまい、申し訳ございません」

「とんでもない。無茶な頼みをしているのは、こちらの方だ」

「ありがとうございます」

テントから出てくるアロナの目元は、毎朝必ず腫れている。

(…寢不足、という表ではないな)

アルベールには、彼が今にも泣きだしたい衝に駆られるのを必死に堪えている子供にしか見えなかった。

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