《【電子書籍化決定】人生ループ中の公爵令嬢は、自分を殺した婚約者と別れて契約結婚をすることにしました。》予想だにしない事態

「アロナ」

「はい、ルタ様」

「ごめんね、無理をさせて」

その聲は、悲しげだった。

「君のはもう限界だ。そんなにぼろぼろになるまで頑張ってくれて、僕は本當に君には頭があがらないよ」

「そんな、やめてください」

アロナは恐れ多いと、の前で両手を振る。たまたま幸運が重なっただけで、自分はなにもしていない。

「毎日、泣いていたでしょう?」

「それは…」

「真実を伝えることで、君に辛い思いをさせてしまったね」

悲しげな聲とともに、太く立派になった肢が揺れる。するとそれに呼応するように、青い湖も微かに音を立てて揺らめいた。

「確かに、ルーファス様へのが私の力となっていたことは、とても複雑でした。気持ちに折り合いをつけるのに時間がかかりましたし、今もまだ言葉では言い表せないが心の中に渦巻いているのは事実です」

あの日捨てたはずのが、まだ自分の中に殘っている。そう思うと、自分をどうしようもなく慘めにじてしまう。

もうこれっぽっちも、ルーファスのことなどしていないというのに。四度目こそは自分の足で立ちたいと願っていたのに、結局は彼に生かされているだけなのかと。

「以前ルタ様は私に言葉をくださいました。これは私が創り出した、私だけのだと」

アロナは、自元にそっと手を置く。

心臓の鼓が、脈打つが、絶えずこのかしているのをじる。

(私は、今を生きてる)

「救われたのは私の方です。本當にありがとうございます、ルタ様」

アロナは涙を堪えながら、にこりと笑う。群青の瞳がまるでガラスに映ったように反し、キラキラとしく輝いていた。

「アロナ」

「なんでしょうか」

しだけ、れてもいい?」

「もちろんです」

その答えを聞いたルタは、ゆっくりと肢をもたげる。アロナがを屈めると、ルタの鼻先がほんのしだけ彼の額にれた。

「君と過ごした時間は、とても楽しかったよ。城に帰って、ゆっくり休んで」

「ありがとうございます、ルタ様」

「僕のこと忘れないでね」

「ふふっ、はい」

アロナの細い指先が、そっとルタの頬をでる。しい神龍は気持ち良さげに目を閉じ、されるがまま彼を委ねた。

「フルバート嬢」

別れの挨拶を済ませたアロナは、ルタの住まう窟から出る。するとそこには、セリカだけでなくアルベールの姿もあった。

(どうしたのかしら。いつもはこちらまでいらっしゃらないのに)

すでにほとんど全快しつつあるルタだが、アルベールは気を遣いあまり傍まで近寄らないようにしている。そんな彼が、アロナを見た瞬間焦った表で彼に駆け寄り何度も名前を呼んだ。

「フルバート嬢」

「ロファンソン様、どうかされましたか?」

「…落ち著いて聞いてください」

ただならぬ様子のアルベールを見て、アロナのにぐっと力が込もる。そんな顔をするほどの事態とは一なんなのか、彼には想像がつかなかった。

「ルーファス殿下が、刺されたそうです」

「……え?」

「殿下だけではなく、その従姉妹であるエルエベ様…そして、末のククル様も同様に重傷を負われていると」

ーー大好きよ、アロナ

無垢な笑顔が、脳裏に浮かぶ。

瞬間アロナは全から力が抜け、がくりと膝から崩れ落ちる。アルベールがそのを支えたが、そのあまりの軽さに一瞬表を強張らせた。

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