《【電子書籍化決定】人生ループ中の公爵令嬢は、自分を殺した婚約者と別れて契約結婚をすることにしました。》優先する命

いくら辺境伯といえど、突然やってきた者が差し出すものを國の王族に飲ませるわけにはいかない。

國王の側仕えである宰相が、厳しい表で一歩前へ出た。

「ロファンソン卿。お気持ちは大変ありがたいのだが…」

「どうぞ、いくらでもお調べください。本當にただの雪解け水ですから」

「しかし…」

その瞬間、ククルの手を握っていたアロナが靜かに立ち上がる。アルベールの手から小瓶を奪い取ると、躊躇なくくっと口に含んだ。

こくんと、彼元が控えめに上下する。

「毒見は済みました。これ以上手の施しようがない今、たとえ迷信であろうとも縋れるものには縋りましょう。殿下と、ククル様のお命のために」

鬼気迫る雰囲気のアロナに、誰もが圧倒される。宰相達も、それ以上の反論は出ないようだった。

「ね、念のためにこちらを…っ」

年老いた宮廷醫が、おずおずと銀の棒を瓶の中に挿しれる。なんの反応もないことを確認すると、遠慮がちにこくりと頷いた。

(…ここまでは手筈通りだわ)

小瓶の中は雪解け水には違いないが、ルタからもらった鱗が溶かし込まれている。銀に反応しないだろうと予想はしていたが、アロナはで下ろした。

宮廷醫が小瓶の中を皿に開け、スプーンで掬う。ルーファスとエルエベには従者が、ククルにはアロナ自らが口に運ぶ役目をかってでた。

アルベールが彼を隠すように、さりげなく背後に立つ。

「ククル…どうか死なないで……」

心からの言葉と共に、をなくした彼にスプーンを當てる。反応はなかったが、ククルの元が僅かにいたのをアロナは見逃さなかった。

神様、どうか彼をお救いください)

ルーファスへのに引き寄せられた神に、アロナは祈る。ククルが助かるのであればなんにでも縋ると、彼の心に迷いなどない。

「……」

立ち上がり、ゆっくりとルーファスの元へ歩み寄る。ククルと同じように、けて消えそうなほどに憔悴しきった、かつてのしい人。先ほど彼にも、そしてその橫のベッドに臥せているエルエベにも小瓶の中が與えられた。

(……)

どんな言葉も、かけられない。

けれど、死んでほしいなどという願いはアロナの中にかけらも浮かばなかった。

以前は立場が逆だったと、彼はぼんやり考える。自分がベッドで、ルーファス達がこちら側。

(彼は、どんな気持ちだったのかしら)

その答えはきっと、永遠にもらえることはない。

「…フルバート嬢」

アルベールが、気遣うように名を呼ぶ。アロナはただ、靜かに頷くだけだった。

彼からしてみれば、アロナも同じように今にも消えてしまいそうなほどにぼろぼろに見える。何週間も窟に泊まり込み、休む間もなく王都へと帰ってきた。

(君はどうして……)

あの契約も、ルタのことも、全て自分のためだとアロナは言った。

しかしアルベールには、とてもそんな風には思えない。まるで眠りにつく場所を探している穢れのない魂のように彼しく、そして儚げだった。

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