《【電子書籍化決定】人生ループ中の公爵令嬢は、自分を殺した婚約者と別れて契約結婚をすることにしました。》本當の最期

アロナはただ、ぼんやりとしていた。現実味のないふわふわとした覚の中で、ひとつの聲だけが耳に響く。

――大丈夫。

――きっと全てが、上手くいく。

「…っ」

頭をでられたような覚に、アロナははっと目を覚ます。それが夢だと理解するまでに、しばらくの間ぼうっとしていた。

(あれは、あの聲は…)

アルベールの後ろに乗り、早馬でアストフォビアを抜けた。道の整備されている王都付近からは、馬車でここまでやってきた。

道中、彼がアロナから離れることは一度もなく、ただなにも言わずなにも聞かず、彼の傍にいた。

さすがに疲労が限界に達し、馬車の中で何度かうたた寢をしたアロナだが、その時に必ずこの聲と溫かな手の溫もりが自を包み込んでいた。

(夢、なのかしら)

夢かもしれない出來事を、さらに夢に見たというのか。なんだかややこしくなったアロナは、小さく溜息を吐くとベッドから起き上がる。

アルベールは今、自の所有する王都の屋敷にいる。ルーファスが昏睡狀態である今、王宮とはいえさすがに別の男と寢屋をともにするわけにはいかない。

アロナは自宅には帰らず、王宮での寢泊まりを許可されている。今は両親や兄達になど、構っていられない。

薄い布でできたカーテンを、ゆっくりと引く。一面銀世界だったアストフォビアとは違い、ここからは王都の街を一することができた。

(雪が懐かしいなんて、おかしな話ね)

アロナは思わず笑みをらし、そのままカーテンを閉めた。

「アロナ様、こちらへ」

「…はい」

結局、ルーファスは快方へは向かわなかった。きっとこれは、最期の別れ。ルーファスのベッドは、彼の自室へと運ばれていた。

アロナが二人きりにしてほしいと頼むと、皆神妙な面持ちで部屋を出ていく。他に誰もいなくなったことを確認すると、彼はルーファスの枕元に膝を突いた。

「…ルーファス」

その手を、握る気にはなれない。ほとんどの気を失ったその顔に、普段のらかさなどしもなかった。

「あなたは、可哀想な人だったのね」

ことの顛末を聞いたアロナは、沸き起こるこのをどう表現したらいいのか分からない。

後悔、していないと言えば噓になる。

「私がもっとを伝えていれば、こうはならなかったのかしら」

答えのない問いを繰り返す意味など、どこにもない。

「私、あなたのことが大好きだった。していたの、心から」

それこそ、死んでも構わないと思うほどに。

「あなたもずっと、していたのね」

私達は、とてもよく似ていたのだ。

の奴隷として生き、そして死ぬ。

「…ロ……ナ…」

雪のように白いルーファスのが、微かに震える。同時に、指がぴくりと反応した。

「……めん、ね……」

アロナの意思に反し、目の前が潤む。

「ええ。許すわ」

は最後まで、ルーファスの手を握ることをしなかった。

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