《【電子書籍化決定】人生ループ中の公爵令嬢は、自分を殺した婚約者と別れて契約結婚をすることにしました。》甥に訪れた変化

♢♢♢

「ロファンソン様はお嬢様がお休みの間に、何度も部屋を訪ねてこられたのですよ。赤く腫れた頬を見ては、それはそれは心配そうにしていらっしゃいました」

ラーラからそんな話を聞いたアロナは、困ったように眉を下げる。

「初めてお會いした時はなんて人なのかしらと思いましたが、明らかにお嬢様に向けられる瞳が変わったと思いませんか?」

「さ、さぁ…どうかしら」

「お嬢様を抱きながら颯爽とお屋敷から助け出す姿は、さながら歌劇のワンシーンのようでした」

うっとりとした表で話していたラーラは、すぐにはっとしたように口元を手で抑える。

「申し訳ありません、お嬢様。ルーファス殿下が卒去されて間もないというのに…」

「…ええ。そうね」

(もうルーファスは、この世にいない)

エルエベも、そしてローラも。

アロナを悩ませてきた元兇ともいえる人間は、もう居ない。なのになぜ、こんなにも心が落ち著かないのだろう。

今の人生では、ルーファスのことをしてはいなかった。目の前で屈託なく笑う彼を見ていると、恨んでも仕方ないとすら思った。

も憎悪も、熱量を必要とするは全て燃え盡き、殘ったのは己の人生だけ。

今度くらいは、自分を生かしてやりたいと。

「いくらのない相手でも、誰かの死は辛いものね」

「お嬢様…」

今にも泣き出してしまいそうなラーラを見て、アロナは頬を緩める。

「今はもうしだけ、ロファンソン様に甘えさせてもらいましょう。その間にゆっくりと、の振り方を考えるわ」

未だ痣の消えない頬にそっと指を添わせながら、アロナはこの場にいないアルベールの姿を思い浮かべたのだった。

「そりゃあもう、強引にいくしかないだろう!」

「全く…叔父上は相変わらずですね」

「アーチーは顔つきが変わったな」

一方その頃、アルベールは母方の叔父でありこの王都の屋敷の管理人でもあるエツィオ・ロードマン侯爵にからかわれ、渋い顔をしていた。

「アルベールの名を継いでからもう七年も経つんですよ?いい加減、子供の頃の名前で呼ぶのはやめてください」

「つい癖でなぁ。お前はいつまで経っても、私の可い甥っ子だから」

そういって頭をでようとする叔父を躱しながら、アルベールはソファに腰掛けたまま何度も腳を組み替えた。

「よかったじゃないか。お前が大嫌いな王都に未だ滯在しているなんて、奇跡みたいなもんだ。よほどその令嬢にれ込んでいるんだな」

「…否定はしません」

普段と違いやけに素直な甥を見て、エツィオはにんまりと口角を上げる。この歳にしてようやく、見初めたが現れたかと。

「私は嬉しいよ。顔だけは一級品なのに、心はからからに乾ききったままのお前を殘しては、死んでも死にきれないじゃないか」

「大袈裟な。それにまだぴんぴんしているくせに」

「當たり前だろう?可い妻と我が子達との人生、まだまだこれからだ」

(この人と話していると疲れる)

とはいえ、両親が亡くなった後この叔父がどれだけ自の助けとなってくれたのか、それを考えるとあまり邪険にもできない。

というかそもそも、アルベールには気軽にごとの相談ができる人間がエツィオ以外にはいなかった。

「いいかアルベール。お前は今まで、趣味の変態辺境伯として散々名を轟かせてきたんだ」

「……」

(自分で広めた噂とはいえ、この人に言われると腹立たしいな)

「まずそのイメージを払拭することは大前提として、とにかく相手の心に寄り添うことが大切だ。貴族のプライドだ男の沽券だと馬鹿馬鹿しいことは言わず、相手の気持ちだけを考えろ」

「叔父上にしては真っ當な意見なので、驚きました」

「お前なぁ…」

エツィオは溜息を吐きながらも、ようやくを知ろうと一歩踏み出した可い甥っ子の初めてのを、どうにか就させてやりたいと思うのだった。

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