《【電子書籍化決定】人生ループ中の公爵令嬢は、自分を殺した婚約者と別れて契約結婚をすることにしました。》全てを肯定してくれる存在

アロナは、生まれて初めて誰かとこんな風に街を楽しんだ。何度も人生を繰り返してルーファスとも家族とも経験しなかったことを、たった一度の人生で出會った人と共有している。

(普通の人は、同じ時間を何度も繰り返さないのだけれど)

最近たまに、自分がとても狡いことをしているのではないかと思うことがある。たった一度きりの人生、選択肢を間違えればもう取り返しがつかない。

アロナはそれを、三度も繰り返している。

(本當に、ルーファスばかりは責められないわ)

彼は今、あちらの世界で幸せに過ごしているだろうか。彼ならばきっと自の過ちに、気づける時が來るとアロナは思う。

「…ルーファス殿下のことをお考えですか?」

不意にそう言われ、彼ははっとして視線を移す。アルベールのしい瞳が、寂しそうに揺らいでいた。

「あ、あの…私…」

「いや、申し訳ない。待つと言ったのは僕なのに、々しいことを言いました」

と同じように、笑い方も寂しそうだ。アロナのの奧が、きゅうっと絞られる。

「なんだか自分がズルをしているようだと、考えていました」

「ズル、ですか?」

「間違っていることに気がつけたのは、本當にただの偶然です。普通ならば許されないはずなのに、私だけが人生をやり直しているなんて狡いなと、そう思いました」

「…フルバート嬢」

「今のこの瞬間が楽しいから、余計に」

そう言って目を伏せるアロナに、かける言葉が見つからない。それでもどうにかして彼の心を軽くしたいと、アルベールはその細い腕を優しく摑んだ。

「あ、あの」

「いいじゃないですか、ズルもたまには」

「え…っ?」

「どうせならもっともっとズルをして、今を思いきり楽しみましょう!」

の手をくん、と引き再び街の賑わいの中へと繰り出す。

まるで小さな悪戯っ子のように笑うアルベールを見て、アロナは心にふわりと羽が生えたような不思議な心地をじていた。

「まだまだこれからです。夜にはダンスや花火もありますから」

「ふふっ、それは楽しみですね」

がプレゼントした髪飾りをつけたまま嬉しそうに頬を緩ませるアロナに、アルベールのしさでいっぱいになる。

ーーとにかく相手の心に寄り添うことが大切だ

叔父から言われた言葉を思い出し、今すぐに彼を引き寄せ思いきり抱きしめたい衝をぐっと堪えた。

たった數時間の出來事であったが、アロナは今日一日を本當に楽しく過ごすことができた。

途中から、罪悪すら星空の中へと消えてしまうほどに。

「ロファンソン様。本日はありがとうこざいました。本當に楽しくて、まだ心臓が跳ねています」

「僕も楽しかったです。それに、あなたの意外な一面も知ることができましたし」

「意外な一面ですか?」

「花火が打ち上がるたびに、その音にが反応していました。意外と怖がりなんだな、と」

くすくすと笑われると、なんだかとても恥ずかしい。アロナはほんのしだけ頬を膨らませながら、上目遣いにアルベールを見やった。

「そんな意地悪を言わないでください」

「とても可らしかったです」

「…もう」

白くらかな頬がふわりと桃に染まるのを見て、アルベールは無意識にぐっと拳を握る。

(だめだ、可すぎる)

外れたタガは、もう元には戻らない。一度そう思ってしまえば、彼が呼吸している姿すらおしくじてしまう。

自分のを押しつけたくないアルベールは必死に耐えるが、決して彼から目を逸らすことはしなかった。

アルベールの顔や耳や首筋まで赤いことに気づいたアロナはさらに頬を染め、それにより彼もより一層照れるという意味不明なループがしばらくの間続いたのだった。

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