《【電子書籍化決定】人生ループ中の公爵令嬢は、自分を殺した婚約者と別れて契約結婚をすることにしました。》離れたくないと、互いに
ククルの屋敷から馬車を飛ばし、アロナはロファンソン邸へと急いだ。
アルベールがアストフォビアの城へ帰城後も、この屋敷も馬車も従者も好きに使ってくれて構わないと、彼はアロナに告げた。
到底そんなわけにはいかないと思うアロナだが、ククルに背中を押されるまではずっと悩んでいた。
アルベールにとって自分は足枷にしかならないのに、と。
フルバート公爵家とは、縁を切るつもりでいる。四度目の人生ではのちのち市場価値の上がる寶飾品を積極的に集めていたので、しばらく金銭的に困ることはないだろう。
子修道院にるか、フルバートの名を捨てどこか長閑な場所で平民に紛れひっそりと生活しようと、將來を見據えていた。
公爵令嬢である自分に本當にそんなことができるのか、やってみなければ分からない。考えの甘さは十二分に理解しつつ、殘りの人生は天に任せようと思っていた。
もう、アルベールを利用しようなどという考えはとうの昔に消え去っている。
代わりに殘ったのは、甘い痛み。今まで知ることのなかった、切ないの騒めき。
ーー幸せになることを怖がっちゃダメ
(いつまで経っても、私は臆病者ね)
先ほどのククルの言葉を思い出しながら、アロナはその群青の瞳に決意の炎を燈したのだった。
アルベールは馬車に乗り込む直前、大して思いれもなかった屋敷を振り返る。
昔から、王都は嫌いだった。と嫉妬にまみれた汚い貴族達が、裏では酷い口を叩くくせに必死に自分にり寄ってくる。
リュート夫人のようにそうではない貴族ももちろん存在するが、ビジネス以上の付き合いをする気にはなれなかった。
(彼と出會ってから、まだほんのしの時間しか経っていないのに)
まさか自分が、誰かに対し“おしい”などという非生産的なを抱く日がくるなど、夢にも思っていなかった。アストフォビアのため、期からひたすらに刷り込まれてきたのは、辺境伯を継ぐ者としての使命のみ。
両親が天國へと旅立った時すら、その翌日にはひたすらに執務をこなしていたというのに。
(諦める気はない。必ずまた會いにくる)
寂しくて堪らず、元を掻きむしってしまいそうになる。なんなら出立はもうしばらく先でも良いのではと、屋敷に戻ってしまいたい気持ちを必死に耐えた。
これがなのだと、まだを張っては言えない。ただ一つ確かなのは、まっさらだった彼の心の中に芽吹いたものは、アロナと一緒に育んでいきたいということだ。
「アルベール様…」
主人の様子に、従者が思わず聲をらす。昨日あんなに幸せそうだった姿は、今や見る影もない。
「…いや、いい。出してくれ」
ふいっと視線を逸らし、アルベールは馬車に片足を掛ける。
「ロファンソン様…っ!」
その瞬間彼は自分でも驚くほど、心臓の鼓が音を立てたことに気づいた。
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