「ん、熱っ」

キラは規定の茹で時間よりもし早くにパスタを一本とってさを確かめた。ふうふうと息を吹きかけてから口にれたもののまだ熱かった。パスタのさはしめといったところで、スープにつけたままいただくものなのでこれくらいで良しとすることにした。

「これくらいですね。よし、盛り付けましょう」

ニジノタビビトはその聲にハッとして、し深めの広い同(・)じ(・)皿(・)を(・)二(・)枚(・)取りだした。キラはトングを使って取り分けてから、し悩んだものの、面倒くさがらずにおたまを使ってスープを二つに分けた。これがキラの自宅であったのなら、フライパンから豪快に直で皿に移していただろうし、なんならフライパンでそのまま食べていた。

ニジノタビビトは盛り付けられていく様を青みがかったグレーのキラキラした目で見ていて、キラには無いはずの橫にくしっぽが見えた気がした。キラはそれを見て今日は簡単にしたけれど明日以降はもっと品數を増やして、デザートも作ろうと心に決めた。

「キラ、作ってくれてありがとう。すごく味しそうだ」

キラは食費を抑えるためにも自炊をしていて、料理自は嫌いではなくむしろ好きだったからこそ楽しく続けられたが、ふと寂しさのようなものをじることはあった。滅多に人に振舞うこともないため、自分のつくった料理がこんなに歓迎されたこともなかった。

キラにとっては自分が作った料理がこんなにも喜ばれることが、ニジノタビビトにとっては誰かが作ってくれた料理を二人で食べることがそれぞれ嬉しかったのだ。

「いえ、そんなに喜んでくれてよかったです。今日は簡単にでしたが、明日は品數増やしたりして作りますからね。それじゃあ、いただきます」

キラは両の手のひらを合わせて軽く目をつむってから「いただきます」と口にした。ニジノタビビトは左手にフォークを持ったままキラを見てポカンとした。

「キラ、イタダキマスってなんだい？」

「ああ、ごはんを食べる前にこれから自分のとなりとなってくれる食材たちと、食材に攜わった方たちに謝を込めて言う食前の挨拶ですよ。食後はごちそうさまって言います」

ニジノタビビトはし俯いてから左手に持ったフォークを置いて、キラの真似をしてぎこちなく両手を合わせてから目をぎゅっとつむってし片言でイタダキマスと言った。

キラは年端もいかぬ子供に教えているような気分になりながら微笑ましくなった。いただきますと言うときに目を軽くつむるのはキラのなんとなくの癖で別につむる必要はないのだが、ぎゅっと目をつむる姿がなんだか可らしかったので今度教えることにして今は黙っていることにした。

「さ！　パスタがびちゃわないうちに食べましょう」

キラとニジノタビビトは改めてフォークを持ち直してパスタを絡めて口に運んだ。

今日は、フウというよく脂ののったらかいことが特徴の鳥と、キラは初めて食べるキラの知るところのシメジに似たきのこのススリ、それからキャベツをれたコンソメのスープパスタである。

「んん、パスタは食べたことがあったけどスープパスタは初めて食べたよ。なんか、何て言うのかな、ちょっと特別があるというか、ちょっと楽しい。あっ、もちろんすごく味しいよ！」

ニジノタビビトは食べることについての想が多く味についての想を言うのが苦手であるらしかった。それでも必死にを伝えようとしてくれていることは十分伝わっていた。

キラはスープパスタは野菜もも魚介も一皿で摂れて溫まって味しい上に簡単に作れるので、よく作っていた。鍋もよく作ったけれど、スープパスタは炭水化も摂れるので結局こっちだった。

「このきのこ、初めて食べましたけど、シメジに似てますね。いや、宇宙船で作るのは張したんですけど、味しくできてよかったです」

二人は音がならないようにそうっとフォークとスプーンをお皿に置いて、ふうと息をついた。ひとくちふたくちの頃はスープパスタについて想を言っていたキラもニジノタビビトも、すぐに話すのをやめて黙々と食べてすぐに完食してしまった。

キラが両手を合わせてニジノタビビトの方をチラリと見ると、ニジノタビビトはし慌てた様子で同じように手を合わせた。キラがニコリと笑うとごちそうさまでした、と言うとそれに続いてニジノタビビトもゴチソウサマデシタ、と慣れない様子で口にした。

二人とも、特にキラは今日々なことがあったもので、空腹を特にじにくかったが隨分とお腹が空いていたらしかった。それと、キラは宇宙船での食事という環境が、ニジノタビビトは誰かの手料理を一緒に食べるという狀況がいいスパイスにもなっていた。食べ終わってからキラはやっぱり何かデザートでも用意すればよかったなと思って軽くお腹をでた。

しかしキラは忘れていた。ニジノタビビトが甘いものが好きで準星アイルニムの市場で焼きチョコを五袋も購していたということを。紅茶に五個も角砂糖をれる人がデザートになるものを常備していないわけがないということを。